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12/28

【ファンシーピンク】■16日目(6月08日) ファンシーパンク 〔12/28〕

◆あらすじ◆

 毎日の学校生活を無為に過ごす、やさぐれ少年の楢崎くん。

 ふとした事からブログで一人ファッションショーを公開する、いちご大好き少女・仲原さんの隠された秘密を知ってしまいました。

 お互いの秘密を握り合う間柄になってしまったクラスメイト二人は、ひょんな経緯から渋々ながらブログの写真撮影をすることに。

 日ごと移り変わる仲原さんの華やかな衣装(いちご柄)。

 日陰者である二人が撮影を重ねる果てに、たどり着く終着点とは?


 まるで定点カメラでいちご柄の部屋を観測するかのように贈る、やさぐれ少年&いちご大好き少女、水と油の二人が織り成すポップ&キュートかつストレンジ&キッチュ、あとプチアダルトな放課後の……そして青春の日々。


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■ファンシーピンク■

作品概要


・ここは私、岩男ヨシノリが執筆した小説「ファンシーピンク」を掲載するスペースになります(注:pixivからの転載となります)。


・手慰みのように執筆していたものを、この場を借りて発表することにあいなりました。眠れない夜の暇つぶしにでもしていただければ幸いです。


・基本一日イコール一話というペースで、さながら主人公の日記のように展開していきます。

 そのため時系列的に、日付がたびたび飛びまくることになるのですが(例:03日目→06日目)、エピソードの順序が把握できない場合はこのもくじを参照くださいませ(もしくは各エピソードのキャプションに[*/28]との表記を設けておりますので、全体の進捗状況をそちらで確認いただけるようお願いします)。


・ご意見&ご感想、ファンアート、はたまたコラボ企画の提案などはお気軽にどうぞ~

 どこかしらのコミュニティや評価スレッドへの推薦なども、ご自由に。

 できるのであれば事後報告を後に頂ければ幸いです(なくても構いません)。


注)劇中の登場人物の極端な行動は、真似しないほうが賢明です。

  違いのわかる方のみお楽しみください。

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挿絵(By みてみん)

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■16日目(6月08日) ファンシーパンク■


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「……アングルが駄目、ボツ」

「なんでだよ」

「いやらしい悪意と下心が見える、なんか」

 俺の撮ったかぼちゃぱんつは、そんな鶴の一声でお蔵入りになった。

「ふぐぁ!」

 それに対して食って掛かるも、返り討ちに遭わされた俺は、右頬にビンタの跡をつくりながらも彼女の着替えを待っていた。

 虫歯に追い討ちされないだけまだマシか。

 なんて思いつつも、新製品飲料・なごみ茶のペットボトルに口をつける。

 ……夏も間近、そろそろ暑くなってきた。

 この家は廊下まで涼しくていいけど、うちの部屋のクーラーはいまいち効きが悪いしなあ。

 毎年だましだまし使ってるけど。

 できたらそこの、使ってなさそうな客間を宛てがってくれんだろうか、俺のためだけに。

 結構な頻度で撮影しに来てんだし……って俺ここの家に、あのいちごルームに馴染んでるようなこと考えてなかったか?

 いかん、血迷ってんじゃねえ俺!

 はっとした心変わりも束の間、いきなりいちご部屋の扉が開いて、仲原が参上する。

「いえーい!」

 その姿を見て俺は、思わずペットの中身を噴いた。

 前回の可憐なロリータ衣装とはうって変わって、エレキギターを抱えた黒のパンキッシュなスタイル。

 黒地にいくつもの安全ピンと、いちごの缶バッジがつけられたカスタムジャケット。

 ゴシックパンクなスカルがプリントされたTシャツ。

 ルーズに巻きつけられた、ゴツいピラミッドスタッズが打たれているレザーベルト。

 一際目を引く、赤いタータンチェックのミニスカート。

 その下のニーソックスは左右でそれぞれ異なっていて、黒とピンクのボーダーが右、ピンク地に黒いいちごのシルエットが踊る左……というのが主な内約である。

 安全ピンや骸骨といったパンク系のキーワードの他に、ところどころ控えめであるがいちごとピンク色が混じる仲原スタイル。

 そして黒い衣装とは対照的に、白地にいちご柄のストラトキャスター……っつーかどこで売ってるんだよ、そんなもん。

「ゲホッ、ゲヘッ……!」

 なんて、いちごパンク仲原のその姿をじっくり確かめるのは、咳込みに苦しむ時間が過ぎ去ってからであった。

「だいじょぶ?」

「驚かすなよ、気管支に入ったぞ」

 この間のロリータファッションのような、普段から可憐な服装ばかり好む傾向があっただけに、虚を突かれたのもまた事実だった。

 前回とまるで正反対なその衣装は、より意外性が際立ってみえる。

 ……そういうコンセプトだったか。

「ねえねえ、かっこいいかな?」

 第一声に俺に求める言葉は、結局変わらんのか。

 いくら着飾っても、やっぱりこいつは仲原だという事実に、思わず苦笑してしまう。

「一秒間に十回『いちご』って連呼できたら、もっとかっこいいぞ」

「なにそれ?」

 あと額に「苺」とかフェイスペイント描いてやろうかなんて提案してみるが、流石に却下された。

 っていうかメタルじゃなくてパンクか、これ。


「にしても、仲原ってギター持ってたのな」

 ボディの光沢に見入りつつも俺は、パンク仲原にたずねてみる。

「高校入学祝いにね、可愛かったからつい」

 どうやら店頭購入らしいな、こんなキッチュなもん置いてる店って一体どこだよ。

「んじゃ弾けるのかよ仲原、一曲ちょっと演ってみてくんない?」

「え、えっ?」

 なぜにそこでうろたえるのかね仲原さん。

「シールドとアンプ、エフェクターは? オーバードライヴとかディストーションとか」

 次々と追求するたび、彼女の困惑した顔が広がっていく。

「いやあの……ピックとストラップしか」

 悪い意味で期待を裏切るその返答に、思わずコケそうになった。

 ああそうかい、なんとなくわかったよ。

 ……よくいるんだよな、こういう奴。

「なんだよ、買ったのに満足して結局インテリア化したとかいうタチか? ロックの神様がお怒りだぞ?」

 っていうか、今回の格好パンクだったよな。

 そもそもこの部屋に流れてるBGMって、いつもラウンジとかディスコとか、フューチャーポップやら、たまにチップチューンやら。

 どこからパンク出てくんだよ?

「……まあいいや、とにかく撮ってやるからギター構えろ。トーシロ臭くならんように指づかいの指導までしてやるから、心配すんな」

 仲原がばつの悪そうな顔ばかりするから、話題を強引に変えてやる。

 いつもどおりに笑えよな、憑依芸人。

 それに今回だけは、あんま茶化すと「警官殺し!」とかギターで殺害されそうだ。

 っていうかそれ、シャレにならんぞマジで。


「BGM変えていいか?」

 気分を出すために、普段の仲原セレクトからそれらしい物に変えてみる。

 こいつ暗示にかかりやすそうだからなあ、さぞ乗り気になってくれるじゃろ。

「楢崎くんって普段どんなジャンル聴くの?」

「シューゲイザー」

「……は?」

 なにそれ? とか云いたげな彼女を後目に、CDラックからストックを漁ってみる。

 俺のような奴が持ってたらドン引きされそうな野郎アイドルグループから、ここ最近ヘビロテしまくっているラウンジポップまで。

 実に節操のないラインナップが、いかにも仲原らしい。

 ……なんて思ってたが、数ある中で見なれた物を見つけ、ふと指を止めた。

「なんだよ、いいモン持ってんじゃねえか!」

 思わず声をあげてしまう。

 俺のフェイバリッド盤、中学時代に入れこんでいたバンドのベストアルバム。

 解散しても今なお、その楽曲群は変わらずに俺の心を震わせてくれる。

「かけようぜ仲原、いやかけさせてくれ!」

 乗り気でCDをステレオに突っ込む。

 何度聴いたかわからない、おなじみの一曲目のイントロが、いちごルームに流れ出す。

 しかし思いもよらないサプライズがそうさせるのか、普段よりも違った響きに聞こえた。

 当時は既出の楽曲ばかりで新味がないと思ってたが、まるで聴き始めの頃みたいに心が踊る。

 決してそれは、リマスタリングのせいだけじゃないだろう。

「さあ撮ろう撮ろう、仲原!」

 そう云って撮影の続きを催促してやる。

 こんなにも積極的に撮影に臨むなんて、初めてのことなんじゃないか?

 彼女はというと、これまで見たことのないテンションの俺に、驚きを隠せないようだ。

 だからいつも通りに笑えよ憑依芸人、なんて思いながらあのメモを眺める。

 ロリータと向かい合う棒人間は、今日のパンク仲原にすべて置き換わっていた。

 こないだ俺が実演して足つったえび反りは、ギターをかき鳴らすワンシーンを撮りたかったらしい。

 オーバーアクションを取った方がわかりやすいという意向だったが、実際のポーズは控えめに落ち着いたようだ。

 こう具体的な説明がつくと、よくわからなかった意図が一気に見えてくるな。

 仲原の弁によると、パンクはアイテムのセレクトに難航してたから、先にロリータの方を優先したとのこと。

 もしかしたらパンクですらない、別物を撮る可能性もあったんだとか。

 俺としてはやはり、フィ-リングの合う方が気合が入るんで大歓迎だ。


 今日はいちごル-ムとあの使ってなさそうな客間を頻繁に移動しては、全身鏡でチェックしたり撮影したりを繰り返している。

 先のロリータと合わせるにあたり、壁の白い客間のほうがPC上で合成しやすいからなんだとか。

 しかしこの部屋、客間のわりに広いよな。

 ここまでこの家にお世話になってんだから、是非とも俺に宛ててもらいたいもんだ。

 その客間で、場に不釣り合いなパンク仲原がギターを構えている。

 メモのパフォーマンス通りに従って。

 可憐に微笑むこの間とは対照的に、笑いのないシリアスな表情を崩さなかったり、かと思えば押えきれない笑いを浮かべてみたり。

 つくづく憑依芸人だよな、こいつ。


 着実に撮影を重ね、やがて予定していた枚数をすべて消化しきってから、俺は交渉を持ちかける。

「……今日も撮らせてもらっても、いいか?」

 今回だけはマジだった、下心抜きで。

 俺だってプレイヤーに憧れを抱かなかった訳じゃない、最近の出費の多さがなかったらギターとか購入したいなんて考えてたさ。

 目の前のギターを抱える仲原は、撮影のイマジネーションを掻き立てる。

 このときの俺は、そんな理想的な自分の姿を、仲原に投影していたのかもしれない。

 聴きなれた愛聴盤が、そんな気分をさらに盛り上げてくれる。

「……またえっちなの撮らない?」

「今回のネタにそんな余地があるかよ」

 お前いまだに、俺がそっち方面だけの野郎としか思ってねえだろ。

 これは一丁、再確認させてやらにゃならんようだな。

「とびきりイカす奴を撮ってやらあ」

 今回のネタは、お前のメモだけで終わらせるんじゃ、もったいないんだよ。

 たしか、あのベスト盤は初回限定特典として、プロモーションビデオとかライブ映像が収録されたDVDが同梱されてたよな?

 通常よりも分厚いCDケースには案の定、通常CDとは違って色の薄いレーベル面のDVDがあった。

 迷わず俺はPCのトレイに挿入、好みのチャプターを選択する。

 振り付けを覚えるくらいに何度も見直した、ライヴ映像。

 そのベストパフォーマンスを一時停止して留め置く。

「こんな感じで。うん、そのままで動くなよ?」

 画面内と同じポーズをさせて、俺は次々シャッターを切っていく。

 堂に入った仲原の、その立ち居振るまい。

 それはまさに、目に見えない俺の理想なんかを体現しているかのように見えた。

 しかし。

「このギタリストってメンバーにいたっけ?」

 画面と同じポーズを真似ながらも、奴がそんなことを聞いてきて、コケそうになる。

「お前CD持ってるくせに知らないのか? セカンドアルバム後に脱退した、最盛期を支えた中核メンバーだぞ?」

 なにモグリ発言してんだよ。

 聞いたところ、仲原はタイアップされた一曲しか興味がなかったとか云ってきやがった。

 このにわかファンめ、けしからんな。

 後日布教用にオリジナルアルバム全枚貸してやる、その見識改めやがれってんだ。

 こき下ろされて不機嫌ながらも、それでも仲原は、立てたギターのネックを両手で抱きしめるポーズを取って、スマイルをくれる。

 枚数を重ねるその度に俺は、自己ベストを更新してんじゃないか? なんて手応えを確かに感じていた。

 カメラのプレビュー画面に活写された、仲原の姿がそれを証明している。


 ……といった感じで、仲原じゃ思いつかないアイデアをその都度発案しては、実践と撮影を繰り返していった。

 基本的にロリータとパンク二人を向き合わせることしか頭にないからな、こいつ。

 これが自分の現時点での、瞬間最大風速を記録した瞬間であり。

 その後のお別れまでもが最速でやって来るとか、この時はおよそ想像もしていなかった。





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【→】 19日目(6月11日) 勝手にしやがれ[2013/6/28 更新予定]

    16日目(6月08日) ファンシーパンク

【←】 14日目(6月06日) ファニーピンク

ファンシーピンク

次回予告

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「……お邪魔しました」

「あらお早いお帰りね、楢崎くん?」

 いきさつを知ってか知らずか、扉を開ける俺にそんな言葉をよこしてくれる。

「また、遊びに来てね」

 その言葉はなぜか、今までになく優しい響きに聞こえたけれど。

 次が果たしていつになるのか、残念ながら俺だってわからない。

 シャッターを開け、相変わらずゴロゴロしてるドミンゴス(仮)に挨拶しながらも、自転車をガレージから引っ張り出す。

 ――ふう、シャバの空気は美味いぜ。

 なんて思いつつ煙草を取り出そうとするも、中身のない空の箱があるだけだった。

 そういや、金なくて買えないんだったよな。

 手の内の軽さにイラついて、そのままぐしゃりと握り潰す。


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■19日目(6月11日) 勝手にしやがれ

[2013/6/28 更新予定]






◆もくじ◆ [全28回予定]



●00日目(5月23日) 始まりは唐突に 〔水〕


●01日目(5月24日) 知りすぎた人 〔木〕


●02日目(5月25日) 君んちへ行こう 〔金〕


 ○03日目(5月26日) ※欠番 〔土〕


 ○04日目(5月27日) ※欠番 〔日〕


●05日目(5月28日) なにげないきっかけ、その後 〔月〕


●06日目(5月29日) ガーリィステップ 〔火〕


 ○07日目(5月30日) ※欠番 〔水〕


 ○08日目(5月31日) ※欠番 〔木〕


●09日目(6月01日) ストレンジストロベリー 〔金〕


●10日目(6月02日) ストレンジストロベリーモア 〔土〕


●11日目(6月03日) インタールード 〔日〕


●12日目(6月04日) 君をおかわりしたい 〔月〕


●13日目(6月05日) インタールード その2 〔火〕


●14日目(6月06日) ファニーピンク 〔水〕


 ○15日目(6月07日) ※欠番 〔木〕


●16日目(6月08日) ファンシーパンク 〔金〕


 ○17日目(6月09日) ※欠番 〔土〕


 ○18日目(6月10日) ※欠番 〔日〕


●19日目(6月11日) 勝手にしやがれ 〔月〕


 ○20日目(6月12日) ※欠番 〔火〕


●21日目(6月13日) ままならぬふたり 〔水〕


●22日目(6月14日) 俺なりの意思を持って 〔木〕


 ○23日目(6月15日) ※欠番 〔金〕


●24日目(6月16日) 艶姿の映える土曜の宵 〔土〕


 ○25日目(6月17日) ※欠番 〔日〕


●26日目(6月18日) ??? 〔月〕


●27日目(6月19日) ??? 〔火〕


●28日目(6月20日) ??? 〔水〕


●29日目(6月21日) ??? 〔木〕


●30日目(6月22日) ??? 〔金〕


●31日目(6月23日) ??? 〔土〕


●33日目(6月25日) ??? 〔月〕


●??? 〔土〕


●??? 〔土〕


●??? 〔月〕


●??? 〔火〕


●???

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