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『燃えるゴミ』

作者: 麻々ソーマ

朝倉空碁と申します。

現在高校二年生です。


この長さだと、分類的には掌編ですね。

しかし、いくら尺が短いからと言ってプロットを書かないと

何が言いたいのか分からない作品が出来上がってしまいます。

それを今回、初めて掌編でプロットを組み立てて書いて、痛感しました。


Oh……、基本中の基本ですね。


まあ、前書きはこの程度にして、

どうぞお楽しみください。

 ホーホーとフクロウが鳴き、ヒィヨヒィヨとトラツグミが鳴く。木々は擦れ合い、ザワザワと山全体を震わせる。

 奇々怪々とした雰囲気を漂わせる森の中からは、妖怪が出てきても不思議ではないと思う。

 もし周囲から物音がしたら、飛び退ける体があれば飛び退いているはずだ。

 そんな深山の中に僕はいる。いや、捨てられたというべきか。

 不法投棄――巷では問題になっているらしい。まったくその通りだ。

 邪魔だったから、といって捨ててよいのか? 当然のことを当然のようにできない大人が増えている。

 まったく人間というのは恥ずかしい。一部の低俗な輩が全体の評価を貶めるのだ。

「……」

 環境汚染だ何だと、とやかく言うつもりは無い。捨てられる方の気持ちになって欲しい、と訴えたい。

 僕はいつもの様に空を眺めながら、不満の思いを馳せてみた。

「ねぇレンジ。また空を見てるの?」

 僕の名前はレンジ――電子レンジのレンジだ。安直な名前だがとても気に入っている。

 話しかけてきたのは冷蔵庫のリザだ。

「なんで空を見てるの?」

 リザは不思議そうに問いかけてきた。何と答えたらよいものか……。

 僅かばかり逡巡した後、僕は答えた。

「それは説明されるよりも見た方がいいと思うよ」

 僕の答えを受けて、リザは空を眺める。

 空には満天の星が浮かんでいる。

 存外近くに感じられる輝きだが、届くはずはない。理由は、距離が離れていることと、既に存在していないかもしれないからだ。

 その星たちの寿命が終わっているか、僕たちには定かでない。輝きは幾星霜を超えて地球に届く。

「綺麗ね……」

 リザは星を眺めて恍惚とした声を上げた。だが、その声はすぐに冷淡なものへと変わっていく。

「私たちとは正反対」

 嘲笑とも言える声でリザは呟く。

 星から目を反らし、こちらを見つめるリザの目は冷めている。

「そうでもないさ」

 僕は冷めた思考回路のリザがそう言うだろうと思って、ある程度は予測をつけていた。

 あとは……タイミングが合えばいいのだが。

「どうして?」

「それは空を見ていれば分かるよ」

「……ふぅん、さっきからそればっかり。壊れたラジオみたい」

 少しつまらなそうに言いながら、リザはもう一度空へ目を向けた。


 一時間後。


「…………」

「…………」

「……ねぇ、まだ?」

 少し僕の中で焦りが生じ始めた。まだ来ないのか、と焦燥に駆られてはいるが、平静を保ちリザをなだめる。

「いいから、見ていてよ」

「……分かったわよ」

 早く来てくれ。間に合わなくなる。一つの不安因子により、僕はそわそわしていた。

 その不安因子とは、西の空から闇黒の雲が流れてきている事だ。それは次第に空全体を覆ってゆき、一欠けらの灯火も残さないだろう。

 雲の流れは速く、空全体を覆い尽くすのも時間の問題だろう。

 まだ来ないのか。

 祈ることしかできない自分に内心で舌打ちしながら、空を睨みつける。

 不安に苛まれる中、空に一筋の光が架った。その一閃が鏑矢となり、次々に閃光が頭上高くを通り過ぎていく。

 ……やっと来た。安堵の息を吐き、胸をなでおろす。

 力強く光が尾を引きながら、夜空を彩っていく。

「あ、これって……」

「そう、流星群だよ」

 一瞬だけリザは笑った。その顔を見て、少しだけ誇らしげな気持ちになった。

「綺麗だろ?」

「そうね。でも、それを眺める私たちはとても滑稽ね」

 クスッと楽しげにリザは白い歯をこぼす。

 冷たい言葉を吐き続けるリザだが、彼女なりに楽しんでいたようだ。

「あれもゴミなんだよ」

 宇宙に捨てられた衛星などが、地球に引かれて落ちてくる。その時に、最後の命を散らさんとばかりに輝きを放つ。

 それが流星だ。

「ふぅん……。けれど私たちに届かないことに変わりないわ」

 相変わらずの冷めた台詞。

「荒んでいるなぁ」

 つい、口を突いて出てきてしまった。

「余計なお世話」

 リザの声音はむっとしていた。

 だが、ちらりとリザの顔色を窺って見ると、怒っている様子も無く一安心する。

「あなたも現実を見なさい」

 諭すように、リザは述懐する。

 そんな現実ならクーリングオフしてやる。もう一度、家電として動きたい。夢を捨てるのは愚者の逃げ道だと、僕は思っている。

 隣でリザのため息が聞こえる。

「いい? 私たちは役目を終えたの。あとは退廃してゆくのみ……。二度と輝きを放つことは無いわよ」

「本当にそれでいいのか?」

 僕の一言に、リザは顔に影を落とす。

「仕方がないのよ。諦めなさい」

 二の句を継ごうとしたが、出来なかった。リザもどうやら好きで冷めた考えをしている訳ではないようだ。

 ふっ、と僕に影が作られた。いつの間にか僕の頭上まで雲が覆っていた。

 そこからは刹那の間だった。

 黒雲が空全体を覆い隠す。

 そしてその雲により、星もリザも自らの体も闇に落ちた。

 見えるものが皆無の本当の暗闇。

 その中でも、いつもの癖で僕は空へと目を向けてしまう。

 相変わらず、何も見えないけれど。

「ねぇ」

 右隣から、リザの声が聞こえる。

「なに?」

「もしかして、まだ空を見てる?」

 言い当てられて、驚きに声が詰まった。

「そうだけど、なんで分かった?」

「ん? 何となくよ」

 リザの第六感はものすごく発達しているのだろう。

 それとも僕の行動が読みやすかっただけなのか。

「何も、見えないわね……」

 どうやらリザも空を見ているらしい。

「そうだね」

 僕のその一言に、リザが落胆したように感じた。……何も見えないので、これは僕の感なのだが。

 思わず僕の口から言葉が飛び出る。

「でも、僕は晴れると信じているよ」

 相変わらず空は何も見えないが、黒雲が僅かに薄らいでゆく気がした。

この作品のテーマは「夢と諦め」です。

どうしようもない現実を突きつけられ、

それでも諦めないで頑張ることができますか?

頑張りたいですが、おそらく無理でしょう。


どこかで必ず歪みが生まれると思うので。


でも、諦めたくはないですよね?

自分の中にレンジとリザのような

相反する性質を抱えているんじゃないんですか?

おそらく抱えていない人はいないはずです。


そんなどうしようもない定めみたいなのを描いてみました。

最後「~~気がした。」で締めていますよね?

あれは結局、雲が去っていないことを示しています。

何も好転していないんです。


テーマを意識した他に、キャラを意識しました。

擬人化は書きやすいです。

もともとのイメージがあるので沿って書くだけ。

イメージだけなら3分で浮かぶと思います。


さて、長々と書きましたが、拝読ありがとうございました。

いつになるか分かりませんが、また投稿しに来ます。


拝読ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いいですねー。環境大好きなので楽しめました。 [気になる点] 燃えるゴミではなく、粗大ごみじゃん!と突っ込みたくなるタイトル(笑) [一言] ゴミの気持ちになってみろ!というのはいいなぁー…
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