メリーさん人形
子供ってさ、何にでも興味持っちゃうよね。
特に小学生の頃なんて、新しい友達がどんどんできて、毎年学年が変わる度に友達も変わってさ。
私が小五の時の友達は、陽キャっていうの?そっち系のグループでさ、不良気取りで、あんまり好きじゃなかったんだよねぇ〜。
でも孤立するのも嫌でさ。
私新学期早々熱出ちゃって、出遅れちゃったんだよね。
だからもうグループが出来てる状態。
そんなの、偽善者ぶって寄って来た人のグループに入るしかないじゃん?
そういうグループって、大体外面だけはいいんだよねぇ〜。
そのグループでどうにか一年頑張った私、マジで偉いと思ったよ。
ああ、話ズレてるね。
そうそう、その年の夏休みにね、皆で作ろうってなったんだよね。
メリーさん人形。
夏休みの自由課題でさ。
夏だしいいんじゃない?って。
断れる訳ないじゃん。
だって各自で作って見せ合うんだよ?
やんなきゃハブられるし…。
だからお母さんに頼んで色々揃えてもらって、まぁ定番だよね。
殆どお母さんが作ってくれて。
そんで最後の仕上げにって、みほちゃん家、まぁこのグループでの一番下っ端的な子でさ。
大体みほちゃん家が溜まり場になってたんだよね。
そこで仕上げをすることになったんだ。
仕上げはね、皆が作ったメリーさん人形に、こっくりさんで降霊術をして完璧なメリーさん人形にすることだった。
ああ、こっくりさんが降霊術って知ってたのかって?
そりゃあ、今じゃ常識でしょ?何でもスマホで検索できるんだからさ。
勿論、皆知ってたよ。
けど、そういうの面白がる人達のグループだったからさ。
あはは、ほんとバカだよねー!
それで今こんなことになってるんだから、グループだ何だなんて気にして、こんなことになってるんだもん…。
ああ、そうだね、続きね。
うん、皆それぞれ色んな人形だったよ。
基本はやっぱりフェルトで作ったやつね。
毛糸で作ったのもあったけど、皆お母さんが頑張ったのが丸分かりのやつ。
全員そうだから下手に突っ込まなかったよね。
で、さりなちゃん、グループのリーダー的な子でね、メリーさん人形の言い出しっぺ。
その子が作ってきたコックリさんの紙で、はじめちゃったんだよね。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
グループはね、5人いたよ。
さりなちゃん、みいなちゃん、みほちゃん、れなちゃん、私。
人形も5つあったから、紙の前に番号ふって全部並べた。
こうすれば、幽霊が選びやすいでしょ?って、みいなちゃんが。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください」
もう一度唱えたらさ、本当に10円玉が動いたんだよね。
“はい”に10円玉が進んでさ。
きっとさりなちゃんが動かしてるんだと思った。
え?そりゃあ、言い出しっぺだから。動かすと思うでしょ?
…まぁ、とにかく、私達は決めてた質問というか、お願いをした。
「こっくりさん、こっくりさん、お好きな人形にお入りください。入る時は、お好きな人形の番号を選んでください」
そしたらね、1の数字に移動して、1の周りをぐるぐる回ったの。
そして1の上で止まって、そのまま動かなかった。
「い、1、さりなちゃんのが最初に選ばれたんだ!一番可愛いもんね!」
いつもさりなちゃんの機嫌をとってるれなちゃんが、場を和ませるつもりでそう言ったんだと思う。
けど、さりなちゃんはれなちゃんを睨んでさ、“次”って、言って続きをはじめちゃったんだよね。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
10円玉が鳥居の上じゃなくて、1の上にいるまま。
10円玉がまた動いて、鳥居に戻って、それからまた“はい”のところに動いたの。
「こっくりさん、こっくりさん、お好きな人形にお入りください。入る時は、お好きな人形の番号を選んでください」
次は4番に動いた。
うん、れなちゃんの人形の番号。
これはもう、絶対さりなちゃんが動かしてるってその時確信したよね。
なんだ、やっぱりこっくりさんなんて嘘だったんだ、って安心した。
そう思ったら怖くなかったから、そのまま全部選んでもらった。
3番目に選ばれたのは、私の人形で、次に選ばれたのがみいなちゃんの。
その次がみほちゃんのだった。
うん、たぶん、これが順番だったんだと思う。
全員の人形が選ばれたから、普通に同時に、皆10円玉から指を離したの。
え?そりゃ降霊ができたなら、帰ってもらう必要ないでしょ?
…ああ、そう思う時点で、もうおかしかったのか…。
勿論人形は普通に提出したよ。
学校から返してもらってからも、とくに何も思わないで部屋に飾ってた。
学年が上がって、また違うグループに入ったから、皆とは普通に遊ばなくなったなぁ…。
元々合わないグループだったし。
中学校、高校って、結局疎遠のまま。
中学校までは、たぶん一緒の学校だったと思う。
高校は、私は市外に出たから、知らないかな。
それでこの大学に受かって、一人暮らしになるからさ、その時ついでに人形は捨てたんだよね。
それまで?クローゼットの段ボールに入れてたよ。
ついでにいらないものは片付けなさいって、お母さんに言われて。
…大学にもだいぶ慣れた頃、そう、ちょうど夏休みだった。
実家でさ、スマホが鳴って。
ポロポロポロロン♪
見たことない番号だったけど、友達の誰かがスマホ壊したのかな?って普通に電話に出たんだ。そしたらさ…
『わたし、メリーさん。いま、◯◯小学校にいるの』
って…
最初は勿論悪戯だと思ったよ。だから
「何?誰?すっごいくだらないんだけど?………何も言わないなら切るからね?」
答えないから、普通に電話切ってさ。
それからは何もなくて、普通に一週間くらい実家で過ごして、自分のマンションに帰ろうとしたの。
そしたら、また知らない番号から電話が来た。
ポロポロポロロン♪
『わたし、メリーさん。いま、みほちゃんの家の前にいるの』
今度は直ぐに電話を切ったわ。
だって、みほちゃんは、私が知ってるのはあのみほちゃんだけだったから…。
気味悪いじゃない?その時、あの夏休みに作った人形を、やっと思い出したの…。
私は急いで実家から出て、一人暮らしのマンションに帰った。
それからまた、ずっと電話はなかったから、レポートもあったりで忘れてたの…。
それでまた電話が鳴って、今度は無視したの。
そしたらメッセージアプリで連絡が来たの。
れなちゃんからだった。
小学校以来だったからびっくりしたんだけど、友達の友達からどうにか私の連絡先を聞いたらしくて。
“突然ごめんね!ちょっと確認したいことがあるんだけど…”
って連絡だったの。
うん、れなちゃんにも、あの電話が来てるんだって…。
私は怖くなって、けど教えるのも何となく嫌で、そんなの来てないって返事をしたの。
そしたら、数日後に、さりなちゃんが死んだって、連絡が来た。
死因は、心臓発作だって。
れなちゃんはお葬式にも行ったらしいんだけど、さりなちゃんの棺桶の中に、あの時の人形が入れられてたって…。
偶然だよって、れなちゃんには言ったんだけど、けど、私もさりなちゃんのメリーさんが、さりなちゃんを連れてったんだって思った…。
その間も、私のスマホには何度か、知らない番号から電話が来てた。
ポロポロポロロン♪
ポロポロポロロン♪
この音が鳴るたびに、毎回怖くて…。
最近はずっとマナーモードにしてるけど…。
ずっと出てなかったんだけど、ある日れなちゃんから電話が来たの。
一応、連絡先はちゃんと登録したから…。
『どうしよう、まりえちゃん…。次は私だよ…。2番目だもん…。で、電話の回数も、ふ、増えてきてて…』
泣きながら電話してきてて、一日に何度も電話が鳴るんだ、と、どうしよう、って。
私はとりあえず宥めすかして、今度は私がみいなちゃんとみほちゃんに連絡を取ってみたの。
そしたら、二人のところにも、何度か電話が来てるって聞いて…。
私、3番目だから。
れなちゃんの次は、私だと思った。
また、知らない番号から電話が掛かってきて、私一度、電話に出てみたの…。
『わたし、メリーさん。いま、◯◯県◯◯市の◯◯駅にいるの』
それは、実家から電車を乗り継いでくる駅の一つだった。
確実に追いかけてきてるんだって、わかった。
だから、色んな友達に聞いて回って、こういう話に強い人を探し回ったの。
「お願い!死にたくないの!」
そう言って、目の前の花苗 真理恵さんが縋るようにこちらを見る。
「って言われても、俺もお祓いとかは出来ないんですけど…」
友達に呼び出されて来たカフェで、紹介された彼女には、確かに良くない縁が視えた。
けど、だからって俺は多少視える程度で、何の力もないのに…。
ジロリ、と呼び出した友人を睨むと、良い奴だがお調子者の友人がサッと視線を逸らした。
こいつ、花苗さんがまぁまぁ美人だからって…。
俺は目に涙を溜めて縋るようにこちらを見る視線に、大きく溜め息を吐いて見せた。
「…かなり遠いですけど…」
俺は前置きしながら、リュックから紙とペンを取り出して、あるお寺の住所と電話番号、あと駅からの簡単な地図を書いて渡す。
「祓えるかは分からないですけど、ここなら匿ってはくれるんで」
紙を受け取った花苗さんは、不満そうな表情を浮かべる。
「…祓えないの?」
「ものによります。信じないならご自由に」
身勝手な物言いに、つい表情も言葉も冷たくなる俺に、花苗さんは慌てて表情を取り繕う。
「ありがとう。助かるわ。何かアドバイスとか、ないかしら?無事にそこに到着できなきゃ、意味がないでしょう?」
にこにこと、張り付けたような笑顔が気持ち悪い。
「そこに電話して指示通りにすることですね。俺から言えるのはそれだけです」
それじゃあ。と、俺は自分の分のコーヒー代をテーブルに置いて、さっさとカフェを出た。
「おーい、瑛人、待って待って〜」
後ろから呼び止める声と走る音を無視して足を進めていると、タタタ、と駆けてきたお調子者が隣に並ぶ。
「いや〜悪かった!あんな性格悪い人とは思わなくってさぁ」
「お前ほんっと見る目ねぇんだから、変な奴連れてくんなよな…」
悪い悪い、と悪びれもなく笑って謝るコイツは、駿河 雄大。
高校からの、一応友人。
俺が視えるというのを知る、数少ない人物だ。
「あの人、助かるかなぁ?」
お人好しな雄大の言葉に、鼻で笑う。
「無理だろうな。あの性格だし、本人が人任せだと、祓えるもんも祓えない」
「あー…そんな感じだよなぁ」
うんうん頷く雄大に、気付くのが遅い、と溜め息を吐いた。
ブー、ブー、ブー
机に置いた携帯が震える。
『わたし、メリーさん、いま、◯◯大学にいるの』
ブー、ブー、ブー
机に置いた携帯が震える。
「まりえちゃん!どうしようどうしようどうしよう!もうそこまできてるよ!!いやいやいやいやたすけておねがい!!ああああああぁぁあああぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
メリーさんからの電話の後、れなちゃんから来た電話。
聞こえる断末魔の叫びに、震える手で急いで教えてもらったところに電話をする。
あの後来 瑛人という男性に教えてもらったそこは、それなりに有名なお寺だったのもあり、今は藁にも縋る思いで電話を掛けた。
電話口に出た男性の声は、寝起きを思わせる声に舌打ちしそうになるのを押さえ込む。
「も、もしもし、夜分にすみません!急ぎで助けて下さい!わ、わたし、死にたくないっ!!」
『んー…ああ、なるほど?…とりあえず今から酒と水、あと塩用意しな。ほんで頭からそれぶっ掛けろ。あと急いでそっから離れることだなぁ。助かりてぇなら今すぐこっちに向かいな。あと服は何でもいいから全身白にしとけ』
「ええ、あ、あの、それだけですか?」
男の言葉に慌てて返すと、ああ゛?とドスの効いた声を返される。
『他にどうしろってんだ?電話越しに何かできると思ってんのか?お前さん死にたくねぇんだろが。ならやることはさっさとしろや。こっちも慈善事業じゃねぇんだよ。寝てるとこ起こしやがって。とにかく酒と水と塩だ。頭からぶっ掛けて全身白にしてここに走れ。それ以上こっちにはやれることなんてねぇんだよ』
「わ、わかりました。酒と水と塩ですね。白い服…えっと、どんな…」
『だから服装は白なら何でもいいんだよ!』
ったく、と言って勝手に電話を切られて、あまりの対応に腹が立ったが、今はそれどころじゃない、と慌てて言われたものを用意する。
酒などあったか?と棚を漁れば、期限の既に切れた料理酒が出てきた。
とりあえずコップにそれと水と塩を用意して、裸になると風呂場で頭から被ってそのまま洗い流して風呂から出ると白い服を探す。
白いTシャツと、白いズボンを取り出して着ると、あまりのダサさに戦慄した。
他のシャツを上から羽織ったり、ワンポイントにベルトで差し色を入れてどうにか見れるものにして、急いで荷物を旅行バッグに詰めると家を出た。
友達に電話をして車を借りると、急いで件の場所に向かうために車を走らせた。
その時、カーナビ代わりに取り付けたスマホが、着信を知らせて震える。
ブー、ブー、ブー
震える手で操作して、電話に出た。
『わたし、メリーさん、いま、◯◯駅にいるの』
それはマンションから最寄りの駅だった。
間一髪だった、と息を吐きながら車を走らせる。
また電話が震えた。
画面に表示された名前は、みほちゃんだ。
こんな時にっ!とイライラと舌打ちするが、でも何か情報があるかもしれない、と通話マークをスライドした。
『もしもし、まりなちゃん?今いいかな?』
「うん、何?」
『急いでるから手短に言うね。私とみいなちゃん、今◯◯県の◯◯寺に向かってるの』
「……え?」
聞こえたそこは、まさに今自分が向かっている寺の名前だった。
『そこならお祓いしてもらえるから、まりなちゃんもどうかなと思って』
『まりえちゃん、今すぐ酒と水と塩を頭から被って。それで全身白い服を着て。気持ち悪いかもしれないけど、そうするとメリーさんが近付けないみたいだから』
みほちゃんの後ろから、みいなちゃんの声がした。
それはさっき、電話した寺の人が言ってたことだ。
え、洗い流しちゃったんだけど。
何であいつ、私にはそのこと教えなかったのよ!?
『理由がわからなかったから調べたら、誰でもできる簡単な魔除けみたいなやつだった。とにかく急いで!』
『私達も今向かって
ブツッ
突然、通話が無理矢理切れた。
え、と携帯の画面を見る。
ポロポロポロロン♪
ポロポロポロロン♪
マナーモードのはずの携帯から、響く木琴の音。
画面には、知らない番号が表示されていた。
前を見たり画面を見たりしながら、震える左手を伸ばし、通話に切り替えた。
『わたし、メリーさん。いま、◯◯通りの信号にいるの』
急いで携帯の電源を落とした。
◯◯通りの信号は、直ぐ目の前だった。
急いでハンドルを切って、道を曲がる。
ポロポロポロロン♪
ポロポロポロロン♪
電源を落とした筈の、携帯が鳴る。
出たくない。けど、何処にいるかわからない。
怖い!!
携帯の画面を、震える指先でスライドした。
『わたし、メリーさん。いま、車の後ろにいるの』
思わず、ブレーキを踏み込んだ。
パッパーーっ!
クラクションを鳴らした車が通り過ぎていくが、そんなのどうでもいい。
夜の街中はそれなりの喧騒がある筈なのに、耳に入るのは自分の激しい息遣いだけが、嫌に耳に響く。
一度目を閉じて、ゆっくり息を整える。
ポロポロポロロン♪
ポロポロポロロン♪
また着信を告げる音に、心臓の音がドクドクと脈を打つ。
グッとハンドルを握り締めて、勢い付けて後ろを振り向いた。
後ろには、光りを照らす車のライトが通り過ぎる。
それ以外、何の変哲もない後部座席があるだけで、異常はない。
ふぅ、と小さく息を吐いて、体の向きを元に戻した。
「わたし、メリーさん。いま、あなたの前にいるの」
ハンドルに飾られたように座る、薄汚れた人形に、息が止まる。
人は、本当に恐怖を感じた時は、声すらも出なくなるのだと、初めて知った。
一拍遅れて、息を吸うために開かれた口が音を発しようとした瞬間。
「私はその目がいつも気に入らなかった」
「見下してる目」
「ちょっと美人だから何?」
「自分が正しいと思ってる」
「自意識過剰」
「性格ブス」
「色目使って気持ち悪い」
「自分が優遇されて当たり前だなんて」
「顔に出てるのよ」
人形から聞こえる声に、言葉に、叫ぶよりも腹立ちや怒りが、恐怖を上回る。
「っ黙って聞いてれば!!」
声を出した、瞬間、視界が赤くなった。
ついで広がる熱に、徐々に痛みが乗る。
「この顔を八つ裂きにしてやりたかった」
「私の彼氏を奪っておいて」
「何も知らない顔して」
「憎い憎い憎い憎い憎い」
「あははははははは」
聞こえる声に、見えない視界に、口を開いて何かを叫ぶ自分がいた。
「ああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ポロポロポロロン♪
ポロポロポロロン♪
『わたし、メリーさん。いま、あなたと一緒にいるの』
「…ああ、やっぱりダメだったか」
食堂のテレビに映されるニュースを観ながら呟く俺に、目の前に座る雄大が牛丼のどんぶりを持ちながら振り返ってテレビを観る。
『昨夜、◯◯通りで起こった事故で、運転手である女性一人の死亡が確認されました。運転手である女性の単独事故と思われ…』
テレビから流れるニュースに、雄大が首を傾げる。
「何であの人だってわかるんだ?」
ニュースには、名前は出ていない。
映されているのは、事故の惨状だけだが、俺の目にはそれ以外も見えていた。
黒い暗い、細かな恨みや妬みの縁。
あのカフェで会った、花苗 真理恵が自分で作った縁だ。
「…あの女、恨み妬みを買って楽しんでたんだよ。降霊術は序の口だ。人形に入った霊が、その恨み妬みを吸収してデカくなった縁は、残滓として残り漂う」
「ああ、それが視えてるからわかったんだ。なるほど〜」
納得、というように頷きながら、また牛丼を掻き込む。
ブー、ブー、ブー
ポケットに入れていたスマホが着信を告げて震えるのを取り出す。
「もしもし」
『お前の紹介で来た奴ら、祓い終わったぞ。もう一人のやつは来なかったが、ニュースのやつだろ?』
端的に要件だけさっさと告げる電話口の相手に、うん、と頷く。
「ちゃんとアドバイスしたんだけどな。まぁ、予想通りだけど」
『ありゃ自業自得なタイプだな。コイツらはわりかしまともだった。ちゃんと言われた通りにして、無事辿り着いたが…。ほんっと、餓鬼ってのは碌なことしやがらねぇ』
俺もそう思うわ、とうんうん頷く。
『とにかく、こんな変なもんばっかじゃなくて、もっとまともな仕事送れって話だ。瑛人、お前もさっさと大学なんざ卒業して早く家手伝え』
「あー…そろそろ講義の時間だわ。じゃあな、叔父さん。また何かあったら頼む」
『あっ!お前また
ブツッ
容赦なく通話を切って、スマホをポケットに仕舞う。
「何?また叔父さんにどやされた?」
ニヤニヤ笑う雄大を軽く睨んでから、立ち上がり昼食のトレイを持って返却カウンターに向かった。
前から来る集団を端によって避ける。
「ああ、ちょうど良かった。三隅、次の講義また隣いいか?」
集団の中から、よく最近絡んでくるやつが集団から出て声を掛けてくる。
「…まぁ、…うん」
俺は嫌そうな顔を隠しもせずに、嫌々頷くのを、そいつは気にした風もなく笑うと、じゃあ後でな!と手を振ってまた集団に戻る。
その背中には、そいつに似合わない、黒い暗い靄が絡みつくように纏わりつくのを見て、目を逸らす。
カウンターにトレイを返却すると、食堂を出た。
ポロポロポロロン♪
ポロポロポロロン♪
隣を通り過ぎた女性から、よく聞く着信音が聞こえた。




