第二話【佐倉の日常】
午後5時。その時間になると決まって俺は、臼杵屋に向かう。
そして食券を買うタッチパネルで、覚えている指の動きが指し示すのは。
並の牛丼、トッピングはネギ、天かす、紅生姜多め。
これで500円。ワンコイン。
決まって俺の晩メシはワンコインだ。
そうして一分にも満たずそれは到着する。
味噌汁もつき、温かい肉と、タレでふっくらと艶めく米粒。
それらをかき込んだあとの、冷水の喉越し。
たまらない。そうだ、俺はこれを。
最早儀式とも言えるこの感動を、かれこれ三年以上は繰り返している。
だから初めは気づかなかった。
臼杵屋と対面にある商業ビル。そこの三階から注がれる、釘付けられた視線。
それに気づいたのは、ある日。
空を見上げたくなった。
たまにビルに入ってる店が変わることがあるので、たまたま、確認するように。
――そこにいたのは、まっすぐ俺を見つめる女子学生の姿だった。
結わえられた髪はサラサラとしていて、栗色に近いライトブラウンと、クリーム色のだぼだぼとしたカーディガン。
そして菫色の、キラキラとしたネイルが白い肌とよく似合っている。
まさに、現代っ子だ。
普段暮らしていると、学生と関わる機会はそう多くない。
ましてや俺は公務員。大体は役所を訪れる大人ばかりを相手にしている。
だからこそ一瞬、目を。意識を、奪われてしまった。
“イレギュラーな予感”に。
「………………あ」
時間だ、仕事に戻ろう。
風にあおられた社員証を胸ポケットにしまう。
いつも通りの日常と安定のなかで暮らすことこそ、俺の幸せだ。




