99話 「閑さや 岩にしみ入る 蜘蛛絡み」
さあ、始まりました。山田さんとクモ男のプロレス対決です。まずはお互いに様子見から入っていますね。そして山田さんが先に動き出しました。
「そちらが来ないなら……こちらから行くぞ! 喰らえっ……蜘蛛の巣を切り裂くと定評の山田チョップだ!」
山田さん、蜘蛛の巣を切り裂くという……部屋の掃除に役立つくらいの山田チョップを繰り出しました。クモ男さん、それを胸で受けます。
ペチーン
「ぐふっ……小生、幼きより病がちにて…………山田チョップに堪えるのは厳しいクモ」
まさか、あの山田チョップが……初めて、その威力を評価されました。これには私もビックリです。まさか、こんな日が来ようとは……。
「そうだろう、そうだろう。なにせ俺の山田チョップは……雲すら切り裂くからな!」
蜘蛛と雲をかけ、上手いこと言ってやった顔の山田さん。チョップを連打しようとしますが……クモ男さんは堪らず逃げてしまうのでした。
「おいおい、そんなんで大丈夫か?」
クモ男さん相手に余裕の表情を浮かべる山田さん。一方、クモ男さんは……未だに胸部の痛みに苦しんでいます。胸をさすって、痛みを和らげようとしているのかな。
「小生、打撃技相手にはそりが合はぬクモ」
えっと、クモ男さんは……打撃技と相性が悪いって言ってますね。まあ、あの山田チョップから逃げるくらいですから、余程に嫌なんでしょう。
「ふふっ……いい事を聞いた。ならば、蜘蛛の子を散らすと評判の……山田キックを喰らえ!」
いくら蜘蛛とは言え……子供への虐待は止めましょうよ。さて、山田さんはクモ男さんに向け足を振り上げました。しかし…………
「そのような蹴りを貰わば、小生の命が儚くなるクモ!」
そう言うとクモ男さん。手のひらから糸を放出し……山田さんの軸足に絡めました。
ドシーン!
山田キックの軸足を糸に絡め取られ、バランスを失った山田さんは……地面にうつ伏せに倒れ込んでしまいました。
「この時を……今か今かと待ちけりクモ!」
その発言と共に……クモ男さん、山田さんの上にのしかかります。そして山田さんの首と片腕を自身の両脚で挟み込むと……その脚をロックしてしまいました。
いったい何なんでしょうか、この技。クモ男さんの両脚と山田さんの首、そして腕が複雑に絡み合っています。
「閑さや 岩にしみ入る 蜘蛛絡み……クモ」
なるほど。これは蜘蛛絡みという技みたいですね。山田さん、首と腕を極められ……とても苦しそうです。それでも、山田さんの下半身はロックされることなく自由です。なんとか、下半身の力を使うことによって……クモ糸ロープへと這い寄っていきました。
そして……山田さんの左足がロープに触れます。ロープブレイクですね。クモ男さんは複雑に極まった蜘蛛絡みを……一つ一つ外していくのでした。
「まさか……こんな技を持っているとはな。お前、やるじゃねえか!」
山田さん、起き上がると……クモ男さんを称賛していますね。拍手も送っています。
「しかし、どうやら……お前は関節技が十八番のようだな。ならば話は早い。今後、俺はお前に……関節技を行う隙を与えなければいいだけだ! 今度こそ喰らえっ……雲を掴むと評判の山田キックだ!」
訳のわからない形容が施された山田キックを放つ山田さん。それよりも……隙を与えなければいいとか言っておきながら、さっきと同じ山田キックなんかすると…………
ドシーン!
再び、軸足を絡め取られて倒れる山田さん。やはり学習能力がありません。記憶力もにわとりマンさん以下でしょう。
さあ、クモ男さんが近づいてきました。今度はどんな技を見せてくれるのでしょう。
クモ男さん、うつ伏せ状態の山田さんの右腕を取ると……山田さんの背中を前転しました。これによって、山田さんの右腕が極められています。そして……更にクモ男さんは空いた腕を山田さんの首に回して締めるのです。この複合された関節技に山田さんは悶えていますね。
「夏草や 兵どもが タランチュラ。この技は……グラウンド・タランチュラと言うクモ」
今度の技はグラウンド・タランチュラと言うみたいですね。
腕を極められたまま、首を締められ……山田さんは息絶え絶えです。しかし、今回の技も山田さんの下半身は……極められること無く自由です。再び、下半身の力を利用してクモ糸ロープに近づくと……右足を触れさせるのでした。
「小生の技を持ってして降伏せぬとは……恐ろしき男なりけりクモ」
山田さん、ようやく起き上がりました。そしてクモ男さんと対峙します。今度は無謀に山田キックで突撃はしないようですね。じりじりと距離を詰める作戦に変えたみたいです。
さあ、クモ男の糸を警戒しながらも……徐々に距離を詰めていく山田さん。これほど警戒されてはクモ男さん、手のひらから糸を放出しても無駄でしょう。回避されてしまうに決まってます。
そして山田さんは……組み合える距離にまで接近を果たしました。そしてグラップルを仕掛けようと、一気に近づくと…………
プシャー!
なんとクモ男さん。口から……勢いよく緑色の液体を吹き出しました。
「安心するクモ、小生の消化液は……人間は溶かすこと能わずクモ」
顔面に緑色の消化液を浴びてしまった山田さん。顔面が緑色ですね。そして両手で顔の消化液を擦りながら…………
「ちくしょう……毒霧とは…………やるじゃねえか!」
そんな事を叫ぶのでした。




