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1+1は200の奇跡!異世界レスラー山田、プロレス愛で団体設立。10倍だぞ、10倍!  作者: マスクドぷるこぎ
王都外征編

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98話 「夏草や……兵どもが……蜘蛛の糸」


「小生、プロレスというものを聞きしけるクモ」


 おお、まさか人間だけでなく……プロレスが魔物にまで広がっているとは驚きですね。誰から聞いたんでしょう。


「聞いたことがあるなら早い。それなら……俺とやってみようじゃないか!」


 山田さんはクモ男を誘うようにファイティングポーズを取りました。




「魔物もすなるプロレスといふものを……クモもしてみむとてするなり。いいクモ……小生も挑戦するクモ!」


 クモ男は……何やら文学めいた解答をすると、山田さんとのプロレス対決を受諾するのでした。




***




「しばらくここに待ち給へ……小生が糸を出すことでリングとやらを再現するなり」


 そう言うとクモ男は己の手から糸を放出しました。その糸は木々の間に張られると……まるでロープのようです。そして、気付けば……四方にはロープ代わりのクモ糸が張られました。




「少し細いが……耐久性は問題ないようだな。しかし弾性が少し弱いか」


 山田さんはクモ糸に体を預け、その頑強さや跳ね返りの強さを確かめています。


「とは言え……十分に及第点だ。ありがとうな、クモ男」


「恐縮クモ」


 お互いに頭を下げ合う山田さんとクモ男。なんだ、怖いのは見た目だけで……中身はマトモな魔物みたいですね。そう思うと、怖そうだった見た目も……ちょっと可愛く見えてきました。不思議な現象ですよね。




「え……何これ!? ひょっとして……リング!?」


「あ! クモ男がいるのです! 討伐するのです、狩るのです!」


 どうやらルカさんとカルラさんが戻ってきたようですね。彼女達はクモ糸ロープを飛び越えると、リングインするのでした。そしてクモ男さんに殺気を放っています。




「来るな、来るな。帰れ、帰れ」


 山田さん、手で払うような動作をして……二人を追い出そうとしていますね。


「今から、俺が……クモ男とプロレスで勝負するところだ。お前達は外でセコンドでもしてろ」


 抵抗するカルラさんとルカさん。しかし、山田さんは二人をクモ糸ロープ外へ放り投げるのでした。


「やだー! アタシがやりたーい!!」


「ボクがやるのです! ルカは黙って見てればいいのです!」


 しかし、いくら放り投げても……二人はすぐに戻ってきます。





「別に三対一でも構わないクモ」


 ワガママを言う二人の娘に手を焼くパパ。きっとクモ男さんからは……そう見えたのでしょう。山田さんに同情すると、そんな事を言ってくれました。


「本当にスマン……お詫びにこちらはタッグマッチ形式で、一人ずつ出るようにさせてもらおうか」


「おお、それが音に聞くタッグマッチ……小生、初めて聞くなり」


 どうやらクモ男さん。前の興行で行われたタッグマッチの事までは知らなかったみたいですね。


 新しいプロレス用語を聞いてか……なんだか単眼が輝いてる気がします。きっと興味津々なのでしょう。




 そして……山田・ルカ・カルラ組 VS クモ男の一戦が開始されます。


 さて……人間側はカルラさんが出るみたいですね。山田さんとルカさんはクモ糸ロープの外側へ控えました。


 対角線上に陣取るカルラさんとクモ男さん。お互いに目配せを交わしています。きっと……試合開始の意思疎通なのでしょう。




 さあ、試合が開始されました。まず……カルラさんが動きます。得意の飛び技で仕掛けるつもりでしょう。クモ糸ロープに体を預けると、速度を増し……クモ男さんに向けて駆け込んで来ました。


「ボクのドロップキック……喰らうのです!」


 カルラさんの速度・高度……どちらも申し分ないドロップキックがクモ男に向けて放たれました。しかし、その瞬間……なんとクモ男さんは手のひらから糸を放出して、カルラさんを迎撃したのです。クモ糸はカルラさんに絡みついていきます。そして、気付けば……先程までカルラさんであった存在は糸に包まれて繭のようになってしまったのです。




「まず一人、夏草や……兵どもが……蜘蛛の糸クモ」




 地面の上にぽつんと……カルラさんが閉じ込められた繭が落ちています。これでは戦闘不能ですね。人間側……次はルカさんが出るみたいです。ルカさんはクモ糸ロープを潜るとリングインするのでした。




「その繭……邪魔ね。ゴメン、ちょっと待って! ファイアボールで焼いちゃうわ!!」


 ルカさん、クモ男に待ってもらうと……両手に炎の玉を創出しました。そして、それを繭に向かって投げつけます。すると、ファイアボールの炎は繭へと燃え移り……内部に閉じ込められたカルラさんにも……なんと、燃え移ってしまいました。




「熱っ! 熱いのです!」


 炎の中から飛び出してくるカルラさん。彼女の全身はまだ燻っていますね。そして燻ると言えば……この二人には因縁も燻っています。


「ルカ! ボクを焼き殺そうとしましたですね!?」



 ドカッ!


 カルラさん、先程は不発だったドロップキックをルカさんに見舞いました。しかしルカさんも負けていません。スクっと起き上がると……対照的に低空のドロップキックをカルラさんに叩き込みます。





 ボカッ!



 

「小生……如何すべきだろうクモ?」


 クモ男さん、目前で勃発したルカ・カルラ乱闘に困惑していますね。オロオロしながら……山田さんにどうするべきかを問うています。


「正直スマンかった。ウチの団体員、本当にバカなんだよ」


「それは……小生、気の毒に思い申し上げる」


「ちょっといいか? 申し訳ないが……あの二人、さっきの糸で包んでもらってもいい?」


「小生、心得たり」




 こうして、クモ男さんはルカさんとカルラさんを……まとめて糸に包むのでした。そうして出来上がる巨大な繭。内部ではケンカの声が聞こえています。繭の中でもケンカできるとか……あの二人、どうなっているんでしょう。




「これで、邪魔者もいなくなったな。よし……これで一対一だな! プロレスしようぜ、クモ男!」


「御意に候クモ」


 リング中央、ファイティングポーズを取る山田さん。クモ男さんも同じ構えを取りました。




 こうして試合は……山田 VS クモ男のシングルマッチとして仕切り直すのでした。


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