87話 「おっぱいが……三つあるみたいだ」
「お客さんの声援に応えるのが……スライムであり、プロレスラーの証明スラ!」
お客さんのアンコールによって、再び体当たりを狙うスライムさん。ターリアさんの上半身目掛けて……飛び跳ねます!
〈いいぞー! スライムさーん〉
〈ありがとう! スライムさん!〉
ぷよーん
〈うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! おっぱい最強!〉
体当たりに揺れる二つの巨山と一匹のスライム。お客さんは大いに沸いていますね。もはや魔物への嫌悪感は何処にいってしまったのでしょうか。言いえて妙ですが……人類の魔物への忌避感は、おっぱい最強の声の下で消滅してしまいました。
「間違いないスラ! あのおっぱい……わしと同じ感触だスラ!」
「私もそう思いまーーーす」
いつの間にか、スライムさんとターリアさんの間に……揺れによる友情が生まれています。私的には……身震いするような気持ちになりますね。
「そろそろ……決めちゃいますよーーー」
互いに揺れが収まると、ターリアさんがスライムさんに仕掛けました。
「行きますよーーー。ターリアスペシャルで……ギブアップしちゃってくださーーーい」
そう言うと、ターリアさんはスライムさんを掴み……己のおっぱいに挟むようにして締め始めました。締められ、変形するスライムさんとおっぱい。
〈うおおおおおおおおおお!〉
〈その場所、変わってくれ……金貨出してもいいぞ!〉
〈おっぱいが……三つあるみたいだ〉
そうしてターリアスペシャルで締められ続けたスライムさん…………
「ギブアップ……スラ」
ギブアップを宣告しました。イクセントラさんは技を解除すると、スライムさんを救出しています。
〈おおおおおおおおおおお!〉
〈スライムさん、ありがとー!〉
〈いいもの見せてもらったぞー!〉
会場からはスライムさんを称える声援が大きく響いています。
「勝者…………ターリア」
ターリアさんの右腕を掲げるイクセントラさん。それに合わせ、会場には拍手が巻き起こるのですが……ターリアさんを賞賛する拍手と混じり、この試合そのものに対しての絶賛も感じますね。
そして、第一試合が終了すると……選手は花道から退場します。ターリアさんは勝ち名乗りを受けると、すぐに控室へと戻っていきました。
遅れてスライムさん。花道を這いずります。
そして、気づきました。花道の周囲をお客さん達が層になって群がっていますね。
〈スライムさーん!〉
観客は手を差し出しています。どうやらタッチを望んでいるみたいですね。スライムさんは……それに快く応じました。
〈うおおおお、柔らけえ! これがターリアさんのおっぱいの感触か!〉
〈なんだと、俺も俺も!〉
〈スライムさん、揉ませてくれ!〉
こうして、スライムさんは花道で……お客さん達に揉みくちゃにされるのです。もう……魔物を恐れている人はいません。私的には……観客の男どもの方が恐ろしいです。
そして、揉みくちゃにされるスライムさんを……花道奥で見つめる人影が見えました。あれは……山田さんですね。
【良かったですね。スライムさん、すっかり受け入れられていますよ】
「そうだろ? 俺には実践練習の時から……こうなる可能性を感じていたんだ」
【あ……そういえば、そんな事言ってましたね。あの時は山田さんの性癖開眼の話だとばかり思ってました】
「誰がそんな特殊性癖に目覚めるかよ」
そんな事を言いながらも、満面の笑みで花道の先……スライムさんを見つめる山田さん。これで……死刑からは逃れられそうですね。
「私も……スライムを揉みに……いや、称えに行ってこようかな」
ヴィクトリアさんのパパは席を立とうとしています。しかし、隣席のヴィクトリアさん……それを殴り止めました。パパは頭を垂れながら……着席します。
「しかし、こう見ると……魔物を受け入れることで、新しい何かが生まれるのかもしれんな」
パパはスライムさんが大勢の観客に揉みしだかれているのを見て……そう言うのでした。新しい何かというのは何なんでしょうね? 特殊性癖でしょうか? まあ、きっと……人類と魔物との共存を意味してるんだと思います。お願いします、そうであってください。
「そういえば、先程の話なのだが……」
パパはヴィクトリアさんに話しかけました。
「王女様がプロレスを見てみたいって話ですか?」
「そうだ。王都に呼んでみたいと仰っておられる。しかし、今のセパラドスにとってスカイハイは……重要な観光資源になっているのだ。観光客を沢山集めることができる、言わば名物と言っても過言ではない。しかし、王女に呼ばれ……そのまま王都に引き抜かれてしまっては…………わしは次の選挙で勝てんだろう。困ったな……」
「まだ、正式に王女様に呼ばれたわけでもありませんし……何もそこまで考えなくても」
さあ、こうして大盛況のまま第一試合は終了しました。
セパラドス住民が危惧していた、魔物への不安は一掃されたように思えます。
ですが……私には危惧が生まれてしまいました。それは…………
孤児院の子供達が……変な性癖に芽生えてしまうかもしれない。そんな危惧です。




