77話 「山田脂マシマシスペシャル」
山田さんとルカさんのトークショーから、しばらくの日時が流れました。新人さん達とルカさんは練習に励み、山田さんは泥パックの熟練者になっています。もうプロレスラーからエステティシャンに転向してもいいんじゃないでしょうか。
そんな、ある日の午後……山田さんは団体員の練習には合流せずに、イクセントラさんの家に向かいました。どうやら……何か相談事があるようですね。
相変わらず小汚い応接に通される山田さん。ソファーに座ると……対面のイクセントラさんに相談を持ちかけます。
「実は魔法について相談があるんだ」
「魔法…………何?」
「まず最初に……魔法って俺でも使えるのか?」
「おそらく…………無理」
魔法使用の可能性をあっさり否定される山田さん。ちょっぴり悲しそうです。
「魔法を扱うには…………生まれながらに持つ属性を…………幼少時に発現させてないといけない…………私が見るに…………山田からは…………魔力の発現を感じない」
イクセントラさんは魔法を使う前提を教えてくれました。この条件だと、山田さんには不可能ですね。おそらく山田さんの幼少時なんて……あっちの世界でプロレスごっこに興じていたくらいでしょう。でも、逆に言えば……プロレスという魔法を使っていたなんて解釈もできるかもしれませんね。
「ふーん、俺の頭ではよくわからんな。それで……属性ってのをもう少し教えてくれないか?」
「ルカが…………炎の属性を持っている…………それと団体員で言えば…………カルラが風属性…………残りの三人は…………魔法が使えない」
属性について説明するイクセントラさん。どうやらルカさんとカルラさんが炎と風の属性持ちらしいですね。
「カルラは風属性か……だったら今度、カミカゼでも教えてやるか」
「ちなみに私は…………無」
「え? イクセントラって魔法使えないの?」
「違う…………私の無とは…………無属性という意味…………前に見せたと思うが…………私が縄を扱ったように…………物理的な作用を…………与えることが出来る」
あ、イクセントラさんの言う無とは無属性の意味だったんですね。納得です。以前にルカさんを縛る時に使ってましたよね。
「ところで…………なぜ…………魔法についての…………質問を?」
イクセントラさんは、山田さんが魔法についての質問を持ってきた理由について問いました。
「それはだな……プロレスに魔法要素を取り入れられないかと思ったんだ。ほら、魔法って見た目が派手だろ? あれを上手く活用すれば……プロレスの表現の可能性を大きく広げることが出来そうだからな」
「可能性は…………十分にある」
少しの考慮の末、小さく頷くイクセントラさん。
しかし、それを聞いても……山田さんの顔からは問題解決が解決されたようには見えません。まだ……何か悩んでいるようですね。
「すると、問題は属性だな……少し確認させてくれ。今のスカイハイだと炎と風しか使えないって事で……間違ってないよな?」
「そう…………ちなみに…………何の属性が必要?」
「雷だ。ほら、試合で俺がレッグラリアットをするとして……それが当たるタイミングで雷魔法が入れば、ド派手な稲妻レッグラリアットが完成するだろ? そしたら、お客さんも喜んでくれると思うんだよな」
いつの間にか、面白そうな事を考えていた山田さん。確かにビジュアル的には映えるでしょうね。
でも、それなら……私も思いつきましたよ。山田スペシャルにバラムツの脂属性を与えて……ヌメヌメしたベア・ハッグにするんです。名付けて……山田脂マシマシスペシャルってのはどうでしょうか。
「理論的には…………可能だと思う…………ただし…………プロレスで使うには…………ルール整備が…………必要」
私が変な属性技を考えてる間にも……真面目な話は続いていました。
「結局、そうなるか。やっぱり魔法プロレスの問題点って……魔法を使えるか否かで平等性が損なわれちまうんだよな。イクセントラ……魔具で何とか出来ない?」
「考えておくが…………多分…………使える人を…………セコンド配置したほうが…………早い」
適切なアドバイスをしてくれるイクセントラさん。この方、真面目な時だけは頼りになりますね。
「そうか、なら仕方ない。一旦、魔法プロレスの件は棚上げだ」
「それがいい…………魔法プロレスを実施するなら…………ルール整備が必須…………使用回数や…………試合形式など」
こうして魔法プロレスは先送りにされるのでした。結構、面白そうな試みだと思うので……実現するといいですね。




