75話 「サイン会・トークショーを開催しまーす」
第二回興行が終了してから一週間ほど過ぎました。再び練習と泥パックの日々が続いています。しかし、今日の山田さんは墓地へと向かいません。起床後、身だしなみを整えると……抱きつき魔と書かれた愛用のスウェットを着用して出かけました。
今日は世間では休日です。人通りも多い町並みを歩く山田さん。色々な人々から声をかけられていますね。
「おばちゃんになら、抱きついてもいいんやで」
中年女性にハグされる山田さん。
「握手してくれー」
中年男性に握手を求められると、それに応じる山田さん。
こうして街を歩くだけで……山田さんの周りには人が集まってきます。もう、すっかり有名人ですね。
そんな山田さんは人々に話かけられながらも、目的地に向かいます。そして……中央広場へと辿り着きました。すると、中央広場にも人集りが出来ています。
「山田ー、こっちよー」
人集りの中央から聞き慣れた声がしました。どうやら、ルカさんも大勢の人に囲まれているみたいですね。山田さんは人混みを分け入ると……ルカさんと合流しました。
「すいません。これから仕事があるもので……これからもスカイハイをよろしくお願いします」
山田さんは周囲のファンの皆様に頭を下げると、ルカさんを連れて中央広場から離れるのでした。
「今日は……サイン会だっけ?」
目的地へと歩みながら、ルカさんが山田さんに問いかけました。それに山田さんは答えます。
「それとトークショーもあるぞ」
本日のお仕事の確認をしながら並んで歩く二人。そろそろ目的地が見えてきましたね。
今日のサイン会とトークショーの舞台、冒険者ギルドです。
***
「それでは、冒険者ギルドの主催によるサイン会・トークショーを開催しまーす。本日のゲストはスカイハイより……抱きつき魔さんとルカ選手です! 皆様、拍手でお迎えください」
受付二号さんの開会宣言に、冒険者ギルドいっぱいに集まったお客さん達は拍手を盛大に鳴らしています。その拍手をかき分けるように入場する、抱きつき魔こと山田さんとルカさん。しかしルカさんには選手と付けてもらっているのに、抱きつき魔の方はさん付けなんですね。もう、冒険者ギルド内では定着してしまったのでしょう。
山田さんとルカさんは仮設のステージ上に登ります。するとステージの右から左へとお客さんが流れていきますね。サイン会の始まりです。
右から来たお客さんは、まずはルカさんに握手をしてもらうと……サインを貰っています。ルカさんは……どうやらサインを練習したばかりなのでしょうか、時々サインを書き損じていますね。初々しいです。
そしてルカさんのサインを頂いた後は山田さんです。山田さんは右手でファンの握手に応えると……左手で色紙に手形を押しました。これ、お相撲さんのサイン色紙みたいですね。でも、それを貰ったお客さんは嬉しそうです。手形に自分の手を合わせて……山田さんの手のひらの大きさを実感していました。
そんな流れが一時間くらい続いたでしょうか。延々と並んでいたお客さんの列に、ようやく終わりが見えました。二人は最後の一人にまで丁寧に対応すると、サイン会は終了です。
次はトークショーが始まりました。二号さんは二人に並ぶと……司会を務めてくれるようですね。
「それでは、トークショーの方に参りましょう。まずはお二方に自己紹介をお願いします」
まずは軽い自己紹介を済ます二人。その後の進行は受付二号さんに任せます。
「本日のトークショーは冒険者ギルドでの開催となったわけですけど……お二人とも冒険者だったんですよね?」
まずは開催場所との関連性からトークを開始する受付二号さん。いい判断ですよね。
「そうですね。アタシはスライムをメインに狩る魔法戦士だったわ」
「俺は……まあ、色々と倒してきたが……登録はプロレスラーだったな。あの時のヴィクトリアの塩対応は……今でも覚えている」
冒険者登録の際、職業プロレスラーの逸話ですね。懐かしいなぁ。
「その話は私も伺っています。その時は別部署だったんですけど……本当に受付じゃなくて良かったなって思うんですよね」
受付二号さんは、そう言うと微笑みました。そして、話題を深堀りしていきます。
「それで……お二人の出会いは冒険者として、狩りの時だったとお聞きしたのですが……詳しくお聞かせしてもらってもいいでしょうか?」
受付二号さんは山田さんとルカさんの出会いについて、話題を切り出しました。
さあ……いったいどう答えるんでしょう。




