70話 「まな板か?」
二試合を終えて、軽い休憩時間を設けてからのメインイベントになります。
「それでは本日のメインイベント……カルラ VS ルカ、六十分一本勝負を行います」
休憩を終えて……イクセントラさんはヌーブラ一枚分、胸を大きくして帰ってきました。彼女はリングインすると、メインイベントの開始を告げるのでした。
「青コーナーより…………カルラの入場」
イクセントラさんが言い終わると……荘厳なクラシック音楽が流れ始めました。そしてカルラさんが花道に現れます。緊張している様子はありません。それどころか、場馴れしているかのように堂々としていました。
カルラさんは優雅に胸を張って入場してきます。その姿に歓声が上がりますが…………
〈まな板か?〉
そんな声も上がりました。しかし彼女はそんな観客席に目をやることもなく、ただリングのみを目指して歩き続けます。そして彼女はリングインすると、周囲には聞こえないよう……小さな声で呟くのでした。
「あの客に……目にもの見せてやるのです……ひれ伏させてやるのです」
「赤コーナーより…………ルカの入場」
明るく、リズミカルな音楽が流れ始めました。観客の皆さんは手拍子でルカさんを迎えます。花道に現れたルカさん。歓声に手を挙げて応えていますね。そのまま花道を進むルカさん。お客さん達のハイタッチに応えつつリングに向かうと、勢いよくリングインするのでした。
「青コーナー…………体重は綿飴くらい…………カルーーーーーラーーーーー」
カルラさんの選手紹介がされました。ちなみに体重は自己申告です。
「赤コーナー…………体重は秘密…………ルーーーーーカーーーーーー」
ルカさんは歓声に大きく手を振って応えていますね。今回も体重の自己申告はしていません。
カーーーーーン!
イクセントラさんのゴングの要請に……受付二号さんがゴングを鳴らしました。試合の始まりです。
リング外は大歓声……リング内は様子見、そんなところです。ルカさんとカルラさんはお互いの視線をぶつけながら……その間合いをはかっていました。
まずは、じわじわと距離を詰め……組み合う二人。体格的に小柄なカルラさんですが、ルカさん相手に負けていません。組み合いを優勢にすすめると……ルカさんにヘッドロックを仕掛けました。ルカさんの頭部を脇に挟んで締めるカルラさん。
しかし、ルカさんはヘッドロックされたまま……カルラさんをロープに振って対抗します。カルラさんがロープに跳ね返ってくるところを……腕を絡めるようにして投げ飛ばしました。アームホイップですね。
アームホイップで投げ飛ばされたカルラさんは、その勢いを利用して……スッと立ち上がり、ファイティングポーズを取りました。ルカさんも……同様のポーズで構えています。
〈うおおおお!〉
ここまでの流れるような展開に……序盤にも関わらず、お客さんはテンションが上がっていますね。まあ、ここまでの試合の熱狂が残っていることもあるんでしょう。
次はリング中央の組み合い……ルカさんがヘッドロックを仕掛けました。そして、先程と同様の流れを……立場を変えてやってのけたのです。
〈うおおおおおおおおお!〉
これには、お客さんも大喜びですね。エプロンサイドでセコンドに着いている山田さんも満足気です。
さあ、腕試し的なやりとりの後は……カルラさんがルカさんをロープに振りました。そして戻って来るルカさんを待ち構え……ドロップキックをお見舞いします。そのドロップキックの跳躍はとても高く……しかもルカさんに直撃した後には、その反動で……自身も後方に一回転して着地したのです。
〈すげぇ! ジャンプ力、ヤバいな!〉
その華麗な空中技に沸く場内。そしてカルラさんは、仰向けにダウンしているルカさんの側方に背面を向けると…………
「喰らうのです! スタンディング・ムーンサルトプレスなのです!」
その場で高く跳び上がりながら……後方に一回転。そのまま全身でルカさんをプレスしました。
「ワン…………ツ…………」
フォール状態を確認したイクセントラさん。カウントを開始しますが……ルカさんは二を数える前に跳ね返しました。
ここまでの展開に……カルラさんは当然とも言わんばかり、自信満々の表情を浮かべていますね。対して、ルカさんは起き上がる途中です。序盤の展開は……完全にカルラさんのペースで進んでいると言っていいでしょう。
これから……ルカさんの反撃が期待されますね。それとも……カルラさんが完封勝利してしまうのでしょうか。
私もドキドキしながら見守ることにします。




