69話 「待って無理つらい」
カーーーーーン!
ゴングの音が会場中に鳴り渡りました。試合開始です。
山田さんとサルヴァトーレは……ゴングと同時にリング中央へ走り出しました。
ドゴォ!
そして両者は、リングのど真ん中で……互いの顔面にエルボーを見舞ったのです。山田さんのエルボーに怯まないサルヴァトーレさん。山田さんは、そんなサルヴァトーレさんを見ると…………
「来い……」
山田さんは己の顔面を突き出すと指差し……殴ってこいとばかりにエルボーを誘うのでした。サルヴァトーレさんは、その誘いに乗ると……全力のエルボーを山田さんの顔面に叩き込みます。
バコッ!
サルヴァトーレさんの全力のエルボーを受けても……山田さんはビクともしていません。まるで蚊が止まったとでも言わんばかりのリアクションを返しています。
「ちくしょうが……次はアンタの番だぜ!」
今度は……サルヴァトーレさんが顔面を突き出しました。山田さんにエルボーをして来いと、そう挑発しています。
山田さんは、その挑発に乗り……エルボーを食らわせました。サルヴァトーレさん、歯を食いしばって踏みとどまっていますね。
それからは意地の張り合いです。
ドカッ ドスッ バコッ ボコッ ドン ゴン
〈うおおおお!〉
お互いに一発エルボーを入れては、自分も受ける。そんなエルボーの交換が何往復も続いていきました。
しかし、サルヴァトーレさんの方が少し分が悪そうですね。足元がグラついてきています。
十往復ほどしてからでしょうか……エルボーを打ち合う展開が終わると、そのまま睨みあいに移行する二人。
リング中央で激しく額をぶつけ合いながら……お互い、譲ることなく睨みあいを繰り広げています。
〈いいぞー新人!〉
〈ビビんじゃねえぞー!〉
〈え……あれって男同士でキスしてない?〉
会場は打撃戦から睨み合いという、原始的な戦闘に盛り上がりを見せ始めました。
しかも、極一部の女性陣も……盛り上がる気配を見せています。
ゴンッ ゴツッ ガン ゴーン
睨み合いは頭突き勝負へと発展しました。もはや根気比べですね。歓声は……より大きくなっていきます。
〈新人、負けんなよー!〉
〈キスが……激しすぎて……マジ無理〉
〈待って無理つらい〉
一部の声が……先程よりも増してきています。
***
さて、試合は中盤に入りました。原始的な闘争を繰り広げた後は……プロレスらしい展開になっています。基本的な技を繰り出すサルヴァトーレさんと、それを受ける山田さん。そんな感じですね。
今はサルヴァトーレさんが山田さんの腕を取って……脇固めに入った所です。技の入りが絶妙で、お客さんも感心していました。
〈これって……やっぱリバじゃない?〉
〈山サル推しだけど……サル山もあり?〉
別の関心を示すお客さんもいますね。
さて、山田さんは脇固めに捕らえられてしまいましたが……もう片方の腕で容易くロープへと逃れます。ロープブレイクですね。そしてサルヴァトーレさんは脇固めを解くのでした。
しかし……先程から、サルヴァトーレさんは結構な数の技を出しているんですが、山田さんに確と受けられちゃっていますね。これが山田さんの言う……受けの美学なんでしょう。
サルヴァトーレさんは、その後も……にわとりマンさん直伝のチキンウィング・アームロックを繰り出します。しかし、それを極めようにも……山田さんは腕力だけで抗いました。そのままロープブレイクです。
「受けてばっかじゃねーで……攻めてこいよ。そんなんじゃヒリつかねーぜ!」
一向に攻める様子を見せず、受け一辺倒の山田さんに……サルヴァトーレさんが叫びました。
〈少しは攻めろよ、山田ー!〉
〈リバ! リバ! 今度こそリバよ!〉
〈断固リバ拒否でござる〉
再び盛り上がる会場。山田さんはその発言を受けてか、サルヴァトーレさんに組み付こうと近寄りました。その瞬間です。サルヴァトーレさんは飛びつき腕ひしぎ逆十字固めを狙って……跳び上がりました。
その技は……山田さんの腕を掴みながら、垂直に飛ぶと胴に脚を回し……相手を地面に回転させるようにして腕ひしぎ逆十字固めを極めるという、曲芸的かつ……決定的な大技です。
しかし、山田さんは地面に回転することはありませんでした。それどころか……仁王立ちしています。
よく見れば……サルヴァトーレさんは山田さんの胴に足を引っ掛けたまま……ぶら下がっているではありませんか。
山田さんは……そんなサルヴァトーレさんを抱えあげます。そして…………
ドーーーン!
勢い良くマットに叩きつけました。投げ捨てパワーボムですね。山田さんは投げ終わると、フォールはせずに……一度距離を開きます。
〈うおおおお、すげえじゃねえか! やるな、抱きつき魔!〉
〈山田のパワーボムは迫力があるな!〉
〈リバ、リバ! 山サル、エモい〉
規格外の山田さんのパワーに、飛びつき腕ひしぎ逆十字固めを返されるどころか……パワーボムで返されてしまったサルヴァトーレさん。甚大なダメージを負って見えますね。
さんなサルヴァトーレさんですが、ゆっくりと片膝を立て……そして起き上がろうとすると…………
山田さんが突進してきました!
「これが、俺の必殺……ウエスタン・ラリアットならぬ…………山田ラリアットだ!」
バゴーーーーーーーーーーン!
〈ウオオオオオオオオオオオオ!〉
起き上がりのサルヴァトーレさんに……山田ラリアットが見舞われました。大きく吹っ飛ばされるサルヴァトーレさん。今度は山田さん、フォールに入ります。
「ワン…………ツー……………………スリー! 勝者…………山田!」
そのままスリーカウントを奪われてしまうのでした。
「九分二九秒…………体固めにより…………山田の勝ち」
試合後……山田さんはダウン中のサルヴァトーレさんに手を差し出すと、立たせてあげています。健闘を称え、抱き合う二人。そんな二人の姿に…………
〈尊い……〉
〈生まれてきてくれてありがとう〉
〈語彙力が……死んだ〉
こうして、序盤の打撃戦や山田さんの圧倒的パワーなど……お客さんが大盛りあがりを見せてくれた第二試合でしたね。
それに、新たな需要と供給を生み出したことで……女性ファン層も広がるんじゃないでしょうか。
さあ、次は……メインイベントです。




