65話 「四人のデビュー戦も決定だ!」
まだ懇親会は続いています。こちらではカルラさんとルカさんが対話していますね。
「ボクは旗揚げ戦のルカさんを見て……それでボクもプロレスラーになろうと思ったのです」
そう言えば……いましたね。あの試合後に無言だった人がカルラさんだったと思います。それを聞いて上機嫌のルカさん。
「それで……あれくらいの動きなら、ボクの方が強いなって確信したのです!」
ルカさんは天然なんでしょうか。それともわかってやっているんでしょうか。いくら無礼講とはいえ……発言がガッツリ喧嘩を売っていますね。ルカさんは途端に不機嫌そうな表情に変わりましたが…………
「だから、お客さんの称賛を浴びるのは……より強くて、より可愛いボクの方が相応しいって思ったのです!」
そのタイミングで、カルラさんの追撃が入りました。あまりの怒りに血管が浮かび上がっているルカさん。しかし、ルカさんは大人の対応をします。自ら席を離れることで……大乱闘になるのを回避しました。そのまま山田さんとヴィクトリアさんの会話に合流します。
「それで……抱きつき魔さんが勧めてくれた、貝のお味噌汁のおかげで悪酔いが減ったんですよね」
どうやら、ヴィクトリアさんの悪癖、絡み酒への対処に成功しつつあるという会話みたいですね。ルカさんは、このタイミングで合流すると……口を開きます。
「減っただけで……ゼロになったわけじゃないわ」
「ゼロにするには断酒しかないだろ」
ルカさん、山田さんは禁酒を勧めるのですが…………
「嫌です」
断固拒否のヴィクトリアさん。話し合いの余地すら与えません。まあ、下手に説得に失敗してキレられたら……たまったものじゃないですから、仕方ないですね。
「それでも抱きつき魔さんには感謝してるんですよ。だから、感謝の印として……今度、味噌汁でも作りに行ってあげましょうか?」
悪戯っぽく笑いながら、そう提案したヴィクトリアさん。その発言に……ルカさんは面食らった顔をしています。
「いや、俺の宿には……キッチンがないからな。遠慮させてもらう」
山田さんは冷静に断りました。あの宿……ほんと寝る以外の機能性が皆無ですからね。そして山田さんの拒否発言に安堵の表情を浮かべるルカさんは、口を開くと…………
「私の作ったお味噌汁の方がいいってこと? それなら、毎日…………作ってあげても…………いいわよ」
赤面しながら、ツンデレのデレ 100 % の発言をするのでした。山田さんは、いつも通り無視を決め込んでいます。そんなやり取りに……ヴィクトリアさんは愉悦の笑顔を見せています。
***
さて、まもなく貸し切り終了の時間が迫ってきました。懇親会も締めの時間を迎えたようです。
山田さんは立ち上がると……皆に向けて語り始めました。
「よし、みんな注目してくれ。今日は皆が打ち解けることが出来た、いい懇親会だった。だが、そろそろ締めるとするか」
パラパラと拍手が起こりました。
「ただ、普通に締めても面白くないよな。そこでだ……重大発表をしようと思う」
拍手が鳴り止むと……静寂が訪れました。選手達に緊張感が増しています。
「二週間後……第二回興行を実施する。これは決定事項だ。しかも…………四人のデビュー戦も決定だ!」
新人さん達からは大歓声が上がりました。途端にやる気に満ちあふれて見えますね。
「じゃあ……カードも発表するぞ。第一試合……ターリア VS ヴィクトリア!」
ターリアさんとヴィクトリアさんは互いに視線を合わせました。いいデビュー戦にしよう、そんな意思を感じる眼差しですね。
「第二試合……俺 VS サルヴァトーレ!」
サルヴァトーレさんは、自身のデビュー戦を……まさかの山田さんと行うことになりました。サルヴァトーレさんの表情は、彼的に言えば……ヒリついています。まさに大勝負のヒリつきを感じているのでしょう。
「第三試合……ルカ VS カルラ!」
メインイベントに抜擢されたカルラさん。大喜びです。そんなカルラさんに……ルカさんは不穏な視線を向けていました。
「ちなみに第二回興行からは、一人当たり銅貨十枚の入場料を頂く有料興行として開催するからな。気合入れてくれよ」
***
懇親会が終わり、解散となった後……新人さん達は墓場へと向かいました。今日は休みにしたはずなのですが、デビュー戦の決定とあっては……体を動かさずにはいられないのでしょう。
彼らの後ろ姿を見送る山田さんの視線には……優しさが溢れていました。
***
その後、新人さん達は目前に迫ったデビュー戦に向けて……各自、技の習得に拍車をかけています。
ターリアさんは垂直落下式の技やパワーボムに磨きをかけていますね。サルヴァトーレさんは脇固めや、にわとりマンさん直伝のチキンウィング系の技を研鑽しています。それと対照的にヴィクトリアさんは、プロレスの基本技を反復して練習していました。
残るカルラさんは、何やら新技の練習に取り組むと…………どうやら完成させたようです。
「出来たのです! この技なら……旗揚げ戦のルカを越えたのです!」
いったい、どんな技を完成させたのでしょう。それはデビュー戦までの楽しみとして……取っておきますか。




