60話 「オマエはそれでいいや」
慣れた様子で墓地へと辿り着いた一行。なにせ普段から練習している場所ですからね、特に緊張も見えません。
「では、次の実践練習……対戦相手はコイツだ」
山田さんは墓地を指差すと……地面から一体のスケルトンが這い上がってきます。
「待ってたスケー。にわとりマンはどうだったスケー?」
「師匠には……ヒリついたチキンウィング・アームロックを教えていただきました!」
それに答えるサルヴァトーレさん。スケルトンさんには皆が練習を監督してもらってますからね。会話するのも慣れているんでしょう。他の三名もスケルトンさんが相手ならと……安心した表情を浮かべています。
「じゃあ、スケさんと戦うのは……ヴィクトリア…………君に決めた!」
名指しをされて一歩前へ出るヴィクトリアさん……さあ、実践練習の開始です。
「骨のどこかに当たってー!」
スカッ
「前のデュラハン様と山田の試合を見て覚えたスケ。喰らえ、延髄斬りスケ!」
パキッ
ヴィクトリアさんのドロップキックは目測を誤り、スケルトンさんの遥か手前に着弾しました。つまりは……空振りです。対してスケルトンさん。その起き上がりを狙って延髄斬りを放ちます。その足はヴィクトリアさんの延髄を捕らえましたが……足の方にヒビが入りました。カルシウムが足りてないんでしょうね。
「スケルトンさんくらいの重さなら……私だって投げられます!」
ポトッ
「これも前のデュラハン様と山田の試合を見て覚えたスケ。喰らえ、アックス・ボンバーならぬスケルトン・ボンバー!」
ポキッ
ヴィクトリアさんはスケルトンの股と肩を掴むと、地面に投げつけました。ボディスラムです。しかし……投げる側の勢いも足りなけれれば、受ける側の自重も足りていません。何と言いますか……この試合には迫力が完全に足りていません。ここまで軽い音を発するボディスラムは……私も初めて見ました。
対してダメージを負っていないスケルトンさん。すぐに起き上がると……右腕を振り上げ、ヴィクトリアさんに向かって駆け出しました。そして、そのまま右腕を叩き込むのです。その技はスケルトン・ボンバーと名付けられましたが……その貧弱な威力ですら、スケルトンさんの肘関節が耐えられません。上腕骨と尺骨の折れる音がしました。
「この試合……あまりにも低レベルスケ……」
いつの間にか地面から這い出てきていた他のスケルトンさん達。ヴィクトリアさんとスケルトンさんの一戦を観戦すると、あまりに低次元な試合内容に……開いた口が塞がりません。ついでに眼窩も開いたままで塞がりません。
更なる技を繰り出す対戦者達。そして響く……軽い音。いつの間にか口を開けたまま、目が点になっている観客スケルトン達。しかし骸骨の眼窩が点になってしまうと……思った以上に怖く見えますね。
「どっちも雑魚スケ」
「目糞鼻糞スケ」
「五十歩百歩スケ」
遂に、観客スケルトン達からヤジが飛び始めました。気持ちはわかります。
「この試合……まったくヒリつかねえ」
サルヴァトーレさんもヤジに乗り始めました。骸骨達からは骨が投げ込まれ、試合への不満を表明しています。
ヤジと共に投げ込まれる骨。それは対戦者にも当たるのですが、直撃を受けてしまったヴィクトリアさん。下を向いたまま……プルプルしています。この動き……喜怒哀楽で言えば、何を意味するのでしょうか。
「………………………………チッ!」
ヴィクトリアさんは何処からか……酒瓶を取り出しました。そして叫びます。
「なんやコラ! もーいっぺん言ってみいやタコ! 海沈めたろか! その骨、ぶち折るぞゴラァ!」
彼女の感情が意味したもの……その解答は怒でした。いや……ブチ切れの方が適切ですね。
バコォ! ボコォ! メキィ! ボカーン!
「ひぃ! 助けてスケ! 殺され……」
ドゴォ!
観客スケルトンは最後まで言葉を継ぐことなく……ヴィクトリアさんの酒瓶によって撲殺されました。あまりの惨状にサルヴァトーレさんが静止に入ります。しかし、ヴィクトリアさんは……その頭部にも酒瓶を勢いよく振り下ろすのでした。
周囲にはスケルトンさん達の骨片が散らばっています。その付近に、サルヴァトーレさんはうつ伏せに倒れていました。
暴れ回ったヴィクトリアさん、今はルカさんに静止され……落ち着きを取り戻していますね。しかし……これ、いったいどうなるんでしょう。おそらくは反則負けってところでしょうか。
山田さんはヴィクトリアさんに近づくと……口を開きます。
「…………オマエはそれでいいや」
こうして、実践練習の二戦目は幕を下ろすのでした。




