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1+1は200の奇跡!異世界レスラー山田、プロレス愛で団体設立。10倍だぞ、10倍!  作者: マスクドぷるこぎ
新人育成編

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58話 「すけるとんに監督されてらんらかららぇ」


「これが本当の……顔を売るってやつだな」


 山田さんはフライング・ヘッドの魔石を眺めながら……そう発しました。その魔石は輝きが強く、大きさもなかなかの物です。この魔石が銀貨一枚になると思うと、足取りも軽そうですね。そして山田さんは冒険者ギルドへと向かいました。


 ちなみにルカさんは墓地に残って、練習に合流しています。




***




「受付二号さーん。魔石持ってきたぞー」


 冒険者ギルドに入ると、受付に座り……二号さんに呼びかける山田さん。二号さんは小走りで向かってくると、山田さんに対応してくれます。


「ああ……抱きつき魔さん。良かったです……」


 涙を浮かべながら口を開いた二号さん。どうやら山田さんを心配してくれていたのかな? 山田さんも少し照れくさそうにしていますね。


「話を聞くに……抱きつき魔さんは粘液まみれで来たり、獣臭かったり、死臭がしたりとか……そんなんだったらどうしようって思ってたんですよ」


 スンッと照れが消えていく山田さん。平然を装いながら魔石を提出しました。


「はーい、確かに受け取りましたー」


 魔石を受け取ると、換金に向かう二号さん。私はその隙に山田さんと会話をします。


【山田さんの心配というよりは……山田さんの来訪を心配してましたね。これは泥まみれで来るべきでしたか】


「俺の体だけじゃなく、俺の顔にまで泥を塗るな」


 そんな感じで、お互いに泥仕合の会話をするのでした。




「結局のところ……泥酔したヴィクトリアが一番悪い」


 私達の会話がそんな結論を迎えた時、二号さんが報酬を持ってきてくれました。二号さんは銀貨を山田さんの前に呈します。


「どうぞ……銀貨二十六枚になりますので、お収めください」


 目の前に積まれた銀貨の山に安堵する山田さん。良かったですね。これでヴィクトリアさんを養うことが出来ますよ。まあ、その前に二人ほど養ってもらいたがってる人がいますけど。


「ありがとう。じゃあ……受付二号、これからも世話になるが……よろしく頼む」


 そう言い残して、山田さんは冒険者ギルドを去りました。はたして、二号さんは……山田さんの異様な姿での報酬受領に立ち会わなくて済むのでしょうか。私は……無理だと思います。




***




「これで……食費やらの問題は解決できそうだな」


 セパラドスで、練習終わりの選手達を待つ山田さん。独り言を呟きました。まだ選手達が帰って来る気配もありませんし……私は山田さんの独り言に乗ります。


【これからはフライング・ヘッドでお金を稼ぐんです?】


「ああ、そうなるだろうな」


【フライング・ヘッドを倒すのなら……墓地も近いですし、練習にも参加できそうですね】


「そうだな。しかも……倒す必要すらないしな」


【どう言うことです?】


「いや……友好的に泥パックすれば魔石を貰えるんだろ? なら、話が早い」


【あ……そういえばそうでしたね】


「午前中は泥パックして、午後は練習に参加する……それくらいで資金的にも安定するだろう」


 そんな会話をしていたら、道の向こう……選手の皆さんの姿が小さく見えてきました。


「迎えに……行くか」


 山田さんは夕陽の沈む方……皆がいる方へと走り出しました。何だか……青春の一ページみたいですね。




***




「抱きつき魔がぁ……いなかったせいでぇ……あらしたちは、すけるとんに監督されてらんらかららぇ……」


 本日も……ヴィクトリアさんの狂宴は絶賛開催中。大量のにわとりマンステーキとエールを摂取し、満足げに山田さんに絡むヴィクトリアさん。同期は……既にダウンしています。ルカさんは……他人のフリの真っ最中ですね。


 この狂宴を止めることができるのは、山田さんただ一人です。しかし、山田さんはメニュー表に没頭しています。きっと……ひたすらにメニューを眺め、その世界観に没頭することで……この時間が過ぎ去るのを待っているんでしょう。




***




 キングフロッグステーキ、梅肉ソース添え……なるほど、悪くない。キングフロッグと言うのは……言わば食用蛙のことだろう。ならば、鶏肉のような食感に間違いない。だが……鶏肉は熱が入るとパサパサしてしまうのが弱点だ。しかし……それを梅肉ソースが補っている。パサパサの肉だけを口に運べば……口の中の水分を奪われてしまうだろう。しかし梅肉ソースを共にすれば、その酸っぱさに……口内には唾液が溢れてくる。それに、梅肉ソース自体の粘度が水分を補填までしてくれるのだ。素晴らしい。至高の組み合わせだ。俺は……店長の才能を素直に称賛したいと思う。




 次はお化け貝の味噌汁か……俺がいた世界だったら、しじみの味噌汁のような物なのだろうな。貝の風味と味噌の風味のどちらもが……いとも容易く、互いの風味を壊すことなく両立できているのは奇跡のようだ。プロレスで言えばベストタッグだろう。それにしても……思う。しじみの味噌汁って……残りわずかになった時にこそ貝の風味が活きるんだよな。あれって……どういう理屈なのだろう。よくわからない。だが、だからこそ……美味いのだ。



 俺はこの二つの料理を注文した。そして、これを……ヴィクトリアに喰わせてみようと思う。なぜなら、梅肉や貝の味噌汁は悪酔いに効くとか聞いたことあるからな。



 こうして俺の……ヴィクトリアの悪癖を矯正する試みが開始されるのであった。


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