50話 「一人目……出てこいや!」
「それじゃあ、新人を紹介していくか。一人目…………出てこいや!」
山田さんは片腕を高く上げ……親指だけを立てるサムズアップのポーズで、新人さんを呼び出します。すると……霧の向こうから、誰かが歩いてきました。小柄な影が近づいてきます。段々と真紅に色付くシルエット。遂にお目見えです。
「まず……一人目だ。彼女の名前はカルラ」
山田さんの横に並ぶ真紅の服を来た女性。なんだか見覚えがある顔ですね。うーん……あ、思い出した。この人……試合後の歓声の時に無言だった人です。真紅のヒラヒラの服が印象に残っていたので、なんとか思い出せました。
さて……それではカルラさんをじっくりと観察してみましょう。えっと……顔立ちは整っていて、可愛いよりは美人さんって感じですね。髪は……黄金のロングヘアー。その黄金色は、墓地の薄暗さをものともせず輝いています。
次は……彼女の体格です。うーん、かなり小柄ですね……これでプロレスが出来るんでしょうか。平均的な成人女性の身長と比べ、十センチ以上は低く見えます。胸部は絶壁ですね。なんと言いますか……体に凹凸がほとんどありません。
「思ったより小さくて、ビックリしたか? しかし、俺の見立てによれば……カルラはプロレスラーとして十分にやっていけるだけの素質があるはずだ」
山田さんは隣のカルラさんを紹介すると……彼女の才能を詳細に説明し始めます。
「一番の素質は根性だな。その鋭い眼光が素晴らしい。他にも……スピードには目を見張るものがあるし、プロレス的センスも感じられる。まあ、簡単に言うなら……正統派ルチャドーラだ」
手放しにカルラさんを褒める山田さん。カルラさんは畏まって聞いています。その絶賛に嫉妬しているんでしょうか、ルカさんの瞳からは……わずかな敵対心を感じることが出来ました。
「じゃあ、次だ。新人さん……いらっしゃ~い」
その呼出しに応えて、霧の向こうから……二人目の新人さんがやってきます。もう、この時点で……カルラさんよりは体格が大きいのがわかりますね。そのシルエットは次第に近づいてきました。影は黄色に色づいていきます。
「次は……ターリアだ。ご覧の通り…………おっぱいだ」
気持ちはわかりますが、その紹介はいかがなものかと……。
彼女はターリアさん。カルラさんとは逆で、平均的成人女性より十センチほど大きい体格をしています。そして山田さんが言った通りの圧倒的な胸部は、高峰二つを想像させますね。なお……ルカさん、イクセントラさん、カルラさんが憎しみを込めた視線を向けています。
顔は一言で言えば……おっとりした顔をしていますね。大人しそうに感じます。髪は栗色のゆるふわミドル。服装は黄色で伸縮性の高そうな運動着ですね。まあ……胸部だけは布が伸び切っていますが。
「彼女のプロレスラーとしての特性を一言で表すなら…………おっぱいだ」
彼女がどんな特徴の選手なのかを説明するべき時に、悪ふざけする山田さん。先程の憎しみを込めた視線は、殺意が込められた視線となって山田さんに向けられます。特にカルラさんの視線は……最も強烈な殺気を放っていました。
「あ、えーっと……正直スマンかった。とにかくだな……彼女はパワーが凄いんだ。見た目を遥かに凌ぐ怪力だぞ。旗揚げ戦を見て、俺のチョークスラムとかパワーボムを練習したらしい。少し見せてもらったんだが……ガチでエグいぞ。何ていうか……手加減を知らないタイプだ」
ようやく、ターリアさんの選手としての特徴が語られました。ふーん……見た目は優しそうなんですが、どうやら危険性を併せ持つタイプのようです。
「はいはい、それじゃ次行くぞー。新人さん……どうぞー」
霧の向こうから三人目の新人さんがやって来ました。今度は……どうやら男性のようですね。背が高く、肩幅が拾いシルエットは茶色に色づきながら近づいてきます。
「次は……サルヴァトーレだ。コイツは俺が興行への協力を感謝しに、衛兵詰所に挨拶に行った時……プロレスラーになりたいって言ってきたんだ」
あ……この人、知ってますよ! 初日に山田さんを逮捕した衛兵さんだ! 二日目にも牢屋で一晩を過ごさせてくれた恩人でもありますね。
当然ですが、衛兵をしていただけあって筋肉質です。茶色の運動着越しでも、それはわかります。ただ、山田さんを筋肉ゴリラと表現するなら……サルヴァトーレさんは筋肉人間。要は普通に筋肉がついてるって感じでしょうか。まあ……細マッチョというのが適切な気がします。
顔は……普通って感じです。髪型も……普通ですね。何と言いますか、全体的に見た目は……普通です。
「サルヴァトーレはだな……技術に優れているんだ。衛兵をやっていた経験もあって、捕縛術に似た寝技が得意らしい。そして顔面は……華がない。多分、試合にも……華がないだろう。だが、そういうキャラこそが団体には必要なんだ。ちなみに……趣味はギャンブルらしいぞ」
ほとんど褒められていないサルヴァトーレさん。みるみる内に……普通の顔が普通に曇っていきました。
「さて……次が最後だな。はーい、出てきていいよー」
最後の新人さんがやって来ました。シルエットからは……特徴らしきものはありません。
「最後の新人は、受付のお姉さんこと……ヴィクトリアだ!」
え? なんと最後の新人は……冒険者ギルド受付のお姉さんですか。
「ヴィクトリアもサルヴァトーレと同じで……俺が冒険者ギルドにお礼参りに行った時に、団体に入りたいって言われたんだ」
まずは……お礼参りと称して、冒険者ギルドで暴れたりしていない事を祈りましょう。しかし、驚きましたね。まさか……この人が加入するとは思ってもみませんでした。
まあ、見慣れた顔ですが……一応、見てみましょう。顔は……人当たりのよい優しい感じです。まあ、無表情になった時はアレなんですが……。髪は黒のおさげ髪。体格は……普通でしょうか。胸部も……並ですね。服装は緑色の運動着です。
「知っているヤツもいるだろうが……冒険者ギルドの受付をしていたお姉さんだ」
ルカさんが頷きます。サルヴァトーレさんも知っているみたいですね。
「レスラーとしては……多分、そんなに強くない。いや、練習次第では化けるかもしれないけどな。それに、俺はお姉さんが真面目なしっかり者だって事は知ってるから……きっと練習も真面目にこなしてくれるだろう。それと…………事務が出来る」
何となく……採用の理由がわかりましたね。今後、増えるであろう事務仕事。それをお姉さんに投げる意図が透けて見えます。
こうして四名がスカイハイに加わりました。果たして前途は明るいのでしょうか。それは私にもわかりません。




