49話 「セクハラ、金的、場外乱闘……何を理解したのやら」
まだ午前中だというのに仄暗く感じます。周囲には墓石や墓標が群立しており、手入れされていない草木は鬱蒼と生い茂っていました。ここは……墓地です。墓地スタートです。
旗揚げ戦が大成功に終わると、山田さんは皆さんに数日間の休暇を与えました。
その休暇中。山田さんは興行の成功を受け、冒険者ギルドや食事処……他、様々な場所に感謝を伝えに行きました。その道中、ギルド等……様々な場所で声をかけられるのですが、その話は……また後ほど。
ルカさんはプロレスラーになってから、まとまった休みもなく練習を続けてきたので……久しぶりの休暇に羽を伸ばしていたみたいです。ついでに、にわとりマンの羽も伸ばして稼いでもいました。
イクセントラさんは……以前と変わらず、自宅に籠もって魔具研究を行っていました。いったい何を作っているんでしょう。わからないですが、どうせロクでもないものに決まってますよね。
休暇を経て、三人が集合したのが……墓地でした。集合場所が墓地であることに訝しんでいる二人の前で、山田さんが口を開きます。
「この前の旗揚げ戦はお疲れ様だった。二人の活躍のおかげで……我がスカイハイは、街の人達に超好意的に受け入れてもらう事が出来た。それに……プロレスもバッチリと理解して貰えたみたいだ」
【セクハラ、金的、場外乱闘……何を理解したのやら】
山田さんの発言に何度も頷くルカさんとイクセントラさん。二人にも思い当たることがあるみたいですね。まずは……ルカさんが口を開きます。
「ホント、その通りね! あの試合以降……街を歩いてたら『いい試合だった』とか『ファンになった』とか、いっぱい声をかけて貰えたわ!!」
「我は…………道行く人に…………『おっぱい縮んでね?』…………とか囁かれる。おかげで、また…………引きこもり生活」
【自業自得です】
「普段からパッド詰めとけばいいだろ」
「それは…………億劫」
イクセントラさんは山田さんの提案を拒絶します。しかし山田さんは……まだ諦めません。
「なら……『興行の日は…………皆の期待が…………詰まっているから…………大きくなる』とか言えばいいじゃないか」
【だとすると……普段は、誰にも期待されていない人になっちゃいますよ】
「まあまあ、そんなに気にしなくても平気だ。ちなみに俺は……『セクハラ野郎』とか言われてるぞ。ほら、スウェットにも書いてあるだろ?」
山田さんは……慰めにもなっていない慰めをイクセントラさんに与えていました。
それから、しばらくは興行後の街の反応について語っていました。その話を聞くに……街の人々の反応は概ね好評です。
「まあ……もう終わったことに時間をかける必要はないだろう。今日は……今後の話をするぞ」
突然、山田さんが話題を切り替えました。これが今日の本題でしょうか。二人は山田さんに視線を向けると、今後の話とやらを待ちます。
「さっきも言ったが……旗揚げ戦は大成功だったよな。それで、その成果というか……我が団体への入団希望者が少なくない数、俺の所に来たんだ!」
【この街には……少なくない数の変人がいるんですねぇ】
「と、いうことで……その中から可能性を感じた四名を、練習生として採用します!」
山田さんは団体人数の増加……すなわち団体の成長を宣言しました。
突然の事に唖然とし、すぐに歓喜に浸るルカさん。拳を握り……ガッツポーズを見せています。それと対照的に……無表情のイクセントラさん。
ルカさんの大喜びは止まりません。なにせルカさんは、スライム師匠さんの後輩でしたからね。彼女にとっては初の後輩になるんです。これでスライムさんに買い出しに行かされなくて済むのでしょう。
「それで、今日は……その練習生達との初顔合わせも兼ねて、初の大規模合同練習をしようと思う!」
おお、新人さん達……もう来てるんですね。どんな人が来るんでしょうか。ドキドキしますね。
「ねえ……ちょっといい?」
話をどんどんと展開させていく山田さんに、ルカさんがストップをかけました。少し不満げな表情で話に割り込んできます。
「なんで……顔合わせが墓地なのよ! 新人を墓地で迎えるとか……可哀想じゃない!!」
当然至極の意見を山田さんにぶつけたルカさん。ルカさんって……なんだかんだ後輩思いの良い先輩になりそうですね。さて、先程から感情変化の激しいルカさんは山田さんを責め立てました。それに首をすくめながら……山田さんは答えます。
「いや……可哀想とは言うが、集合場所が墓地でなくてはならない……それには必然的な理由があるんだ!」
いったい山田さんが言う必然的な理由とは何なのでしょうね。どうせ、大した事ではないでしょうが……。




