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1+1は200の奇跡!異世界レスラー山田、プロレス愛で団体設立。10倍だぞ、10倍!  作者: マスクドぷるこぎ
団体創成編

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48/109

48話 「ありがとねっ!」


 お互いに消耗しきった二人はリング中央、一進一退の攻防を見せています。


 山田さんが自身の体重やパワーを活かす技を用いれば、ルカさんはスピードを重視して反撃していきました。


「喰らえっ……スパインバスターだ!」




 ドシーン!


〈ワーワー!〉




「喰らいなさい……低空ドロップキックよ!」




 バコッ!


〈ワーワーワーワー!〉




 互いに一歩も譲りません。そんな極限の闘いを……会場は息を飲みこんで見守っています。お客さん達も、そろそろ決着の予感を覚えているんでしょうね。私も……そう感じています。


 その後も攻防を繰り広げた山田さんとルカさん。ですが、次第にルカさんが優勢になってきました。どうやら、山田さんにとって……ルカさんのスピードに乗った飛び技が苦手のようですね。


 しばらくすると、先程の低空ドロップキックのせいか……膝を痛めてしまったのでしょう。山田さん、遂には片膝をついたまま……立てなくなってしまいました。




「これで……終わりよっ!」


 ルカさんはロープに向かって駆け出します。




 しかし、その瞬間……山田さんがスクッと立ち上がりました。ひょっとして……足を痛めたのは作為的だったんでしょうか。すると……これを狙っていたんですね。


 山田さんはルカさんに遅れて走り出しました。そして、右腕を肩の高さまで上げると……ロープの反動で戻ってきたルカさんの首元めがけ…………振り抜きます!




「これが、俺の必殺……ウエスタン・ラリアットならぬ…………山田ラリアットだ!」




 バゴーーーーーーーーーーン!


〈うおおおおおおおおおおおおおおおお!〉




 今までの技を遥かに越えた凄まじい衝撃音……観客からも凄まじい歓声が上がりました。


 ルカさんは哀れにもカウンターの形でラリアットを受けてしまい……宙を一回転すると、頭から落下しました。そして、うつ伏せのまま……微塵も動く気配がありません。山田さんはルカさんの体を仰向けにすると、自身の体を被せました。フォールですね。




 しかし……レフェリーはイクセントラさんです。


「ワン…………………………ツー……………………………………」


 こんな間の伸びたカウントでは……当然、スリーカウントは入りません。ルカさんは無意識に肩を上げると、フォールから逃れました。




「お前さあ……さっきからカウントが遅すぎんだろ!」


 頭に血が登った山田さん。イクセントラさんに詰め寄ります。


「もう反則負けでも構わねえよ。お前だけは許せねえ……そのヌーブラ剥がしちまうぞ! この野郎!!」


 さらに詰め寄る山田さん。イクセントラさんは、その迫力に怯えています。


「違う…………これは…………ヌーブラではない…………自前」


「誰が見てもわかる嘘つくんじゃねえ、バカヤロー!」


 山田さんとイクセントラさんが言い合いになっていた……そんな時。ルカさんの意識が戻りました。彼女は当然、周囲の状況を確認します。すると……対戦相手がレフェリーに食って掛かっているのが見えました。彼女は急いで起き上がります。


「相手は私よ! 山田!! こっち向きなさい!!!」


 ルカさんは、そう叫びました。そして山田さんは振り返ります。


 その時でした!


 ルカさんは振り返りざまの山田さんの股間に右腕を差し込むと、それを………………全力でカチあげました。




 キーーーーーン!




 そんな擬音が聞こえた……気がします。女性の観客は歓声をあげていました。しかし、男性の観客は無言です。きっと……痛みに同情しているんでしょうね。


 急所の激痛に……前屈する山田さん。そんな山田さんに、ルカさんは正面から近づくと……山田さんの両腕を背中側に引っ張り上げました。すると山田さんの腕は『く』の字のようにされ、ちょうど折り目の所でルカさんにロックされています。




「みんなーーーーー! 行くよーーーーー!!」




 ルカさんは観客にそう宣言すると……『く』の字に通した腕に力を込め、山田さんを持ち上げました。ロックした腕を中心に九〇度回転させられる山田さん、頭頂部が下側になっていますね。




 そしてルカさんは……山田さんを脳天から…………垂直にマットに叩きつけました。




 ドスーーーーーーーーーーン!


〈ウオオオオオオオオオオオオ!〉


〈ドドドドドドドドドドドドド!〉


 ルカさんは山田さんの両腕を抑え……フォールに入ります。イクセントラさんは素早くカウントの準備を整えました。そしてカウントを進めます。




「ワンッ!……………………」


〈ワンッ!〉


「ツー!………………………」


〈ツー!〉


 観客の皆さんも……カウントを大声で叫んでいます! そして………




「スリー!!」


〈スリー!! うおおおおおおおおおおおお!!〉


 



 カン! カン! カン!


 

 

「三十二分四十一秒。エビ固めにより…………ルカ選手の勝利…………」


 スリーカウントから少し遅れて、試合終了のゴングが鳴らされました。

 

 しかし観客の大歓声は、それよりも大きな音を轟かせています。お客さん達は皆、とても満足した顔をしていました。


 ルカさんはイクセントラさんに手首を掴まれると、腕を高々と上げさせられていますね。勝者である事を……会場中に誇っています。




〈プロレスって面白いな!〉


〈ああ、こんなに楽しいものを見たのは初めてだぜ!〉


〈俺は……金的に一番興奮したぜ!〉


 こちらからは……男性の観客の会話が聞こえてきますね。どうやらドMの人がいるみたいです。


〈やっぱり女の方が強いのよ!〉


〈男を倒すとか、スッキリしちゃうわ!〉


〈……………………〉


 あちらからは女性の観客の会話です。最後の真紅の服の女性は……感動のあまりに無言なんでしょうか? よくわかりませんね。


 あ……あっちには魔物の方々もいますよ! なんて言ってるんでしょう?




「山田……よくやったスラ。プロレスラーであるわしには……全てわかっているスラ」


「コケー! チキンウィング・アームロックを使えば勝ててたコケー!」


「あの、最後の技……角度がエグかったスケ!」


「…………面白い」


 魔物の皆さんも大興奮のようですね。あ……デュラハンさん、首が取れちゃってますよ! 早く拾わないと、魔物だってバレちゃいますって。




***




「どうだった……ルカ。プロレスやって……歓声を浴びる気分は?」


 俺はリング上、痛む首を抑えながらルカに話しかけた。観客達はまだルカに歓声を送っている。俺に声援を送ってくれているのは……あっちのスケルトン達か。ちょっと寂しいな。


「最高に決まってるじゃない!」


 興奮覚めやらぬ顔で応えたルカ。まだ激闘の余韻が残っているのか……呼吸も荒く、顔も赤い。それでもデビュー戦でここまで出来たんだ。胸を張っていいと思う。あ……張るほどないか。


「ねえ……ちょっと聞きたいんだけど」


 そんなルカが……小声で話しかけてきた。いったい何の用だろう。


「試合前のアドバイスで、試合は全部……山田が作るって言ってたじゃない」


「ああ、言ったな」


「あの時から、自分を悪役にして……私が勝つ試合にしようって考えてたの?」


 ルカの疑うような視線が刺さる。確かに……そう考えていたのは真実だ。その方が試合が盛り上がる確信もあった。


「いや……それは場内の反応を見ながら…………状況に応じて変えるつもりだった」


 俺は本音を隠した。しかし、俺の発言は完全な嘘というわけでもない。俺だってベテランのレスラーだからな。状況によっては……俺が圧倒的なパワーで勝つ。そんな展開だってあっただろう。


「勝ちを譲られたのは釈然としないけど……まあ、いいわ」


 納得したのかはわからないが、ルカはそれ以上を聞かなかった。


「そんな事よりも……ねえ…………山田」


 ルカの顔が赤く染まっていく。きっと、これは……いつものヤツだ。




「ありがとねっ!」




 そう言うとルカは、これまでに一度も見せたことのない…………はにかんだ、可愛らしい笑顔を浮かべた。







「遂に出たか……ツンデレムーブだ! 30話で出たツンデレの伏線が……やっと回収されたぞ!」


【長い事、引っ張ってきましたもんね】


 俺はルカのありきたりなツンデレムーブをおちょくる。


「ツンデレじゃないわよ!」


 それに怒るルカ。今の赤面は怒りの赤だ。俺も慣れたもので、わずかな赤みの違いが理解できるようになってきた。


「それは……あれか! 古文の反語だろ? 私はツンデレではない。いや、ある……みたいな!」


 俺はルカを全力でおちょくる。リング上でいったい何をやっているんだろうな。


「違う……違うもん…………」


 ルカの瞳に涙が浮かび上がってきた。やべぇ……やりすぎたか。


【女の涙はわかりませんよ。ツンだろうがデレだろうが、どっちでも使える最終兵器です】


「それは……最終兵器、嘘泣きってヤツだろ?」


 俺は……すーさんに答えるべき発言を口に出してしまった。おかげで、その言葉は……目の前で赤鬼みたいになってる人に届いてしまう。




 赤鬼ことルカ、ルカこと赤鬼は……俺の股間に右腕をぶち込んできた。そして……急上昇、カチあげてくる!







 観客の声が聞こえる……大歓声だ。俺は今……垂直にマットに叩きつけられるところだ。ほら、マットが近づいてくる。




 ドスーーーーーーーーーーン!


〈ウオオオオオオオオオオオオ! ドドドドドドドドドドドドドド!〉




【本日、二度目の必殺技に……お客さんも大喜びですね】


 俺は……瞳が閉じゆく前に…………口を開いた。


「ちなみに、この技……タイガードライバー91って言うんだぜ…………」


 そして、俺の瞳は……………………閉じるのであった。




【よかったですね、山田さん。不安だらけだった興行も大成功でしたよ】


 私は笑顔満面で……リング上で寝ている人に語りかけます。


【私の名前から名付けた団体……大事に育ててくださいね】




 一部 団体創成編  完


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