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冴えないプロレスラーの俺がツッコミの女神に転移させられたのは娯楽のない世界だったので、プロレス団体を設立して人々に娯楽と笑いを届けよう  作者: マスクドぷるこぎ
団体創成編

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39話 「その工夫こそがプロレスであり、全てがプロレスなのだ」


 練習とスライム潰しの日々が続きましたが、今日はお休みです。


 何故かというと、ルカさんが巨大バラムツを釣りに行くからですね。それに合わせて山田さんも、以前から鍛冶屋さんに頼んでいた鉄柱や金具といったリング用品の出来を見に行くそうです。


 さて……ルカさんが早朝に釣りに出かけるのを見送った山田さんは、鍛冶屋に向かいました。そこで典型的ドワーフとでもいった風貌の鍛冶屋さんから話しかけられます。


「前言ってた……音を鳴らす円形の道具は、お嬢ちゃんに渡しておいたぞい」


 お嬢ちゃんと言うのはイクセントラさんでしょうね。多分、ゴングの原型を渡したんだと思います。そこに、にわとりマンの魔力を閉じ込めるのでしょう。


「それで……鉄柱は中を空洞で作っておいたんだが、これで良かったんかいの? 軽くはなったが……脆くなっちまうぞい」


 そう言うと、完成した鉄柱を山田さんに見せてくれました。それを軽く叩く山田さん。音を確かめています。


「そうそう、これ……これでいいんです」


 コーンコーンと響く音を聞きながら、山田さんは鉄柱の出来に満足している事を伝えると……


「それなら構わんが……他の金具も持ってくるから、そこで待っておってくれ」


 そう言うと、ドワーフさんは金具を取りに席を外しました。




【本当に、これでいいんです?】


 私はドワーフさん不在の隙をついて、山田さんに質問を投げかけました。先程の話を聞くに……鉄柱の強度が不安に思えたんですよね。


「ああ、問題ない。今、用意しているリングは常設ではないからな。都度、会場で設営しなくちゃならないだろ。だから軽くないと逆に困る。それに重量、強度関係なく……中空じゃないとダメな理由があるんだが…………わかるか?」


 私の疑問は、山田さんから質問として帰ってきました。うーん……わからない。予算ですかね。


 私はそれを山田さんに告げましたが……不正解でした。山田さんは正解を発表してくれます。




「それは……音だ。場外乱闘では、鉄柱に相手の頭を叩きつけたりするんだが……その音が響けば響くほど、観客に痛みが伝わるだろ?」


【なるほど……こうやって知ると、工夫がいっぱい施されているんですね】




「そういう事だ。その工夫こそがプロレスであり、全てがプロレスなのだ」


【言ってる意味がわかりません】


 金具を見せてもらい、それの出来にも満足した山田さんは宿に戻りました。今日はお休みと決めてあったので、山田さんもゆっくり過ごしています。




 そんなまったりした時間が流れると、日が沈み始めます。




 夕方のまどろみにウトウトしていたその時、宿のドアがノックされました。山田さんは眠そうに返事をすると、ドアが開きます。そして、勢いよく……ルカさんが入ってきました。




「見てっ! これが巨大バラムツの魔石よ!」




 手のひらに魔石を持って、それを見せつけてくるルカさん。それを見ると山田さんは渋い顔を見せます。


「何……この脂まみれの魔石」


 確かにルカさんの手のひらは脂に塗れていて、魔石はテカテカと光っています。


「仕方ないでしょ! 巨大バラムツの魔石って釣ってから解体しないと取り出せないのよ!!」




 その後、山田さんとルカさんはイクセントラさんの家に魔石を持っていきました。その道中、ルカさんがバラムツを食べてしまって大変だったという話をするのですが……それはどうでもいい話です。




「魔石は…………預かる。それと…………ゴングと拡声器は完成したから…………見ていくといい」


 イクセントラさんの家に着くと魔石を預けました。そして、ゴングと拡声器を見せてもらいます。


「おぉ、まさにゴングだな」


 山田さんは木製の台上に設置された、丸みを帯びた金属を見ています。これがゴングですね。


「こちらが拡声器…………音を増幅する魔具」


 そして拡声器も見せられました。私はメガホンのような物を想像していたのですが、棒状の……マイクといっても過言ではない形状です。




「ちょっといい? このゴングを鳴らして、こっちの拡声器を通したら……どうなるの?」


 ここでルカさんが割り込んできました。確かに興味深い質問です。どちらもにわとりマンの魔石が用いられていますからね。どこまで凄い音が鳴り響くんでしょう。


「それはわからないが…………今、鳴らせば…………街を追われるレベルの…………騒音被害が出る」




 それを聞くとルカさんは、手に持ったゴングを鳴らすためのバチを……そっと、そっと戻すのでした。




「衝撃緩衝剤の方は…………少し待ってほしい。まだ加工に手間取っている」


 山田さんがルカさんを残して帰ろうとした際、そう告げられました。


「それの出来次第では……選手の怪我が減るかもしれない重要な物だからな。じっくり作ってくれ」


 山田さんはそう言い残すと、いつもの安宿に向かいます。




 そんな、帰りの道中……


「すーさん聞こえるか? あと一つだ。衝撃緩衝剤さえ完成すれば……リングが、団体が作れるからな! 待ってろよ」


【はい。楽しみに待ってますね】


 私達は笑顔で、そんな会話を交わすのでした。


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