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冴えないプロレスラーの俺がツッコミの女神に転移させられたのは娯楽のない世界だったので、プロレス団体を設立して人々に娯楽と笑いを届けよう  作者: マスクドぷるこぎ
団体創成編

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37話 「我は美を探求しているだけ」


「まあ、イクセントラがド変態なのは理解した」


 山田さんは思考と表情を取り戻すと、そう言いました。私も同感です。


「失敬な。我は美を探求しているだけ」


 イクセントラさんは反論をしますが、山田さんもルカさんも全く聞く耳を持ちません。


「ところで……疑問がある。イクセントラのことはルカから聞いたんだが……二人とも知り合いだったりするのか?」


 山田さんが両者に質問を投げかけました。これは、どちらが答えても大丈夫な質問ですね。さあ、どちらが先手を取るのでしょう。


「知己だ…………何故ならルカは我の客だった」


 その質問にはイクセントラさんが答えました。そして話を続けようとしています。しかし、何故かはわかりませんが……質問に解答しなかった方、つまりはルカさんが……じりじりとイクセントラさんに迫り始めています


「我は以前…………ルカより魔具の注文を受けた。その注文は…………」


「だぁーーーー!」


 イクセントラさんが語っている途中……急にルカさんが乱入してきました。ルカさんは話を妨害すべく……イクセントラさんの口を塞ぎにかかります。しかし……


「うるさい…………□◎△$■♀♡%」


 ルカさんはイクセントラさんの口を塞ぐのに失敗してしまいました。そして彼女の魔法の詠唱が始まると……




 シュパーン!




 先程イクセントラさんが持ってきたロープが宙を舞います。そして瞬く間にルカさんを縛り上げました。その早業には目が追いつきません。いつの間にか、ルカさんは両腕、両脚を縛られ……天井からから海老反りで吊り下げられていました。


「これなら……十分だな」


 ロープの頑強性と、それをを自在に扱った魔法に感嘆を禁じ得ない山田さん。緊縛されたルカさん……というより、ロープを眺めています。




「こういうのが趣味なら……アタシは…………いいわよ」




 赤面したルカさんの発言を無視する山田さん。ルカさんを揺らして、ロープの弾力性を確かめています。その度に、ルカさんは変な声を上げるのでした。


 そして話を遮られたイクセントラさんは、ようやくにして話を再開させました。


「ルカは…………魔力で小刻みに動き続ける、手のひらサイズの丸い物体を注文した。それが我とルカとの出会い」


 山田さんは何のことかわかっていません。ですが、天井から吊り下げられたルカさんは…………過去最大級に顔を赤らめるのでした。




 ルカさんの顔が正常化した頃、彼女は拘束を解かれました。そして、イクセントラさんは山田さんに問いかけます。


「ところで…………何故に服に刺殺魔と書かれている?」


「あぁ、これか。これは何と言うか……話せば長くなるんだ。とにかく俺は殺人犯ではないってことだけは言っておく」


 まあ、神に貰った。文字は神が考えているとか言っても信じてもらえませんからね。このはぐらかし方は仕方がありません。そんな言い訳に対してイクセントラさんは……


「殺人犯でないのなら…………何を刺す? 山田が男性を背後から…………別の意味で刺すのなら、その行為は歓迎する」


 そんな事をのたまうのでした。


 


 なるほど……確かに、立派な変人ですね。これで私視点では変人が三人になりました。今後が不安です。




***




 主にイクセントラさんによってもたらされた騒動は、ようやく平穏を取り戻しました。何事もなかったかのように、三名はソファーに着座しています。


「ところで、魔具を作れるという話だが……マットの下に引く衝撃緩衝材のような物は作れないだろうか?」


 極めて平静を装いつつ、山田さんが口を開きました。イクセントラさんは冷静に答えます。


「それならば…………時間と素材があれば可能」


 そこに、ルカさんが平常心で口を挟みます。


「素材って何よ?」


「…………スライムの粘液」


 イクセントラさんからは、山田さんにとって馴染み深い素材を提示されました。良かったですね、これなら集めるのも簡単でしょう。


「粘液に…………巨大バラムツの魔石が持つ脂属性を与えることで…………粘液をゲル化させる。その後…………薄く加工すれば…………作成成功」


 制作法を語ってくれたイクセントラさん。それを聞くと……山田さんは考え始めました。


「ふむ、スライムは問題ないな。俺に任せておけ。問題は巨大バラムツだが……」


 一旦、状況を整理して……必要な物の入手法を考え始めた山田さん。その発言にルカさんが割り込みます。


「アタシ、バラムツなら知ってるわ。港町出身だからね。必要なら釣ってくるわよ」


 トントン拍子で進む素材確保の手段。気づけばイクセントラさんの家に来ただけで……ゴング、ロープ、そして衝撃緩衝材までもが確保されそうです。これでリング問題も解決でしょう。


 それで……後は何が不足していましたっけ?




「それとだ……イクセントラ」


 再び、山田さんからイクセントラさんへ問いかけがありました。


「せっかくだし……レフェリーもやってみないか?」


 今日の山田さんは……どこまでも貪欲に、団体設立への不足要素を埋めに行きます。答えは如何に。


「いつも、我と会話する者は…………すぐに会話を止めて去ってしまう。でも、山田は…………我の話を聞いてくれた。だから、山田は…………信用に足る人物。よって…………レフェリーとは何か知らないが…………やってみる」


 そう答えたイクセントラさん。



 何とこれで……リングだけでなくレフェリーの当てまで付きました。


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