34話 「さあ、食え。全部、食え。残さず、食え」
二人は街へ帰還すると、その足で冒険者ギルドへ向かいました。山田さんの倒したスライムの魔石の換金の為ですね。そして山田さんは、いつものお姉さんに魔石を提出しました。
「刺殺マンさんの今日の報酬は……銅貨八十四枚になります。お収めください」
山田さんは銅貨を受け取るとルカさんの所に持ち帰り……二人で分けているようですね。
「え……アタシが多い方を貰っていいの?」
ルカさんは分けられた銅貨の、どう見ても枚数が多い方を渡されました。遠慮して返そうとするルカさんですが、山田さんは頑なに受け取りません。すると、少ない方を自分の物にしてしまいました。
「なにも、そんな事しなくても……アタシ、夫婦のお財布は共通が理想だから…………」
赤面して反論するルカさん。しかし山田さんは、それを完全に無視するのでした。
「まあまあ、多い方を受け取っておけ。それには意味があるんだ」
そう言うと、山田さんはルカさんを連れてお風呂へ向かいました。赤面で……背中を流してもいいわよとか言うルカさんでしたが、これまたスルーされます。そうして男湯、女湯に別れると汗を流しました。
お風呂屋さんを出た二人はいつもの食事処へと向かいます。近づいてくると活気で賑わう声が聞こえてきました。二人はそんな扉をくぐるのです。
「にわとりマンステーキを三枚と……ガーリックパン。ドワーフの鉄鍋餃子と……エールでお願い」
山田さんが注文をしました。その注文は元気よく厨房へ通されます。その後、二人は注文の品が出てくるまで……本日の練習やプロレスについて語らうのでした。
「じゃあ、ルカはステーキ三枚な」
ガーリックパンの風味を楽しんでいる山田さん。隣には……にわとりマンステーキが三枚、ルカさんの前を占拠しています。開いた口が塞がらないルカさん。早く、その口にステーキを放り込んだほうがいいですよ。
「良質なトレーニングで傷ついた筋肉は、良質なタンパク質で回復すると……より強く太くなるんだ。さあ、食え。全部、食え。残さず、食え」
山田さんは餃子をつまみにエールを味わっています。幸せそうですね。
「こんなバカみたいな量……食べきれるわけないでしょ!」
怒りを表しながらも、律儀にステーキを食べまくるルカさん。なんだかんだ二枚半くらいは食べて……ここでギブアップ。食べ残しは山田さんが食べました。ルカさんは顔に脂を浮かせながら赤面しています。テカテカですね。
そんなこんなで店を後にした二人は、腹ごなしに軽く歩きだしました。
「そういえばさ……ロープの話をしたじゃない?」
ルカさんは歩きながら、そう話を切り出しました。
「あのさ……アタシの知り合いに魔具研究家がいてね。そいつがロープの代用品を持ってると思うわ」
「え? 本当か?」
「いや……多分、代用品にはなるとは思うんだけど…………なんていうか、詳しくは……」
歯切れが悪いルカさん。何か隠してる気がしますね。
「とにかく……見てもらえばわかると思うわ。アイツなら暇してるだろうし、明日……行ってみない?」
ルカさんは山田さんを誘いました。これが明日の練習をサボるためとかじゃないといいんですが……。とはいえ、ロープ問題が解決するかもしれないと聞かされれば、山田さんは快諾します。
「ああ、行こう! で……その人はなんて名前なんだ?」
それ、気になりますよね。ルカさんがそいつとかアイツって言う相手ですから、知り合いだとは思うんですけど。
「名前はイクセントラよ。でも、期待しないでね。アイツ…………本当に変人だから」
こうして、明日……イクセントラ家を訪ねることになりました。はてさて、どんな人なんでしょうね?




