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冴えないプロレスラーの俺がツッコミの女神に転移させられたのは娯楽のない世界だったので、プロレス団体を設立して人々に娯楽と笑いを届けよう  作者: マスクドぷるこぎ
団体創成編

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3話 「しょっぱい試合にならないように……頑張ります」


「すーさんって暇なの?」


 街までの道中、俺は脳内で神との意思疎通を続けていた。


【すーさんって私の事です?】


「うん、名前の最初がスーサレムだったから……略してすーさん」


 とりあえず彼女の名前を呼びやすくしよう。そういった意味を込め、彼女の呼び名としてすーさんを提案させてもらった。


【もっと他にあったじゃないですか。何でよりにもよって……】


 猛反発するような声色が俺の脳内に響いてきた。そんなに嫌か? すーさんって伝統ある渾名だと思うけどな。ほら、釣りしてたり……社長やってそうな感じがするだろ?


「それに名前が長すぎてさ、他の部分まで覚えられないんだよ。で……すーさんは暇なの?」


 真面目にすーさんの渾名を考えるのも面倒だ。俺は強引に話題を最初に戻しつつ、すーさんを既成事実化した。


【まぁ、はっきり言ってド暇ですよ。言ったと思いますが……私の世界って、人々が日常を無難にすごしているだけの面白みに欠ける世界ですからね】


 俺にはよくわからないけど、それって悪いことなんだろうか? そんな俺の雰囲気を察して、すーさんは言葉を継ぐ。


【そういえば山田さんは神殺しっていう言葉、知ってます?】


 神殺しか……どこかの日本酒だった気がする。多分、飲んだことある。


【それは……鬼殺しです】


 どうやら違ったらしい。うーん、誰かの必殺技だったっけ。最近、羊を殺すだかそんな必殺技を聞いた覚えがあったような、なかったような……。


【それも違います。えっと、神殺しっていうのは言葉通り……神を殺す要因になるものを言うんですよ】


 ああ、そういう事か……知ってる知ってる。チェーンソーでしょ。


【世にはそれで殺された神もいたらしいですけど……まあ、いいでしょう。正解は退屈です。退屈は神を殺すんですよ】


 すーさんの声から真剣味を感じる。きっと真面目に話しているんだろう。まあ、俺には……サッパリ意味がわからないけどな。


【そういう意味でも山田さんには期待していますからね。きっと、私の退屈を何とかしてくれる気がしますw】


 


「しょっぱい試合にならないように……頑張ります」


 そういうことで、俺は脳内会話をしながら……街へと歩みを進めるのであった。




***




 この道を行けばどうなるものか、行けばわかるさ。




 というわけで、長々と歩き続けた結果……行けばわかった。なんとか日が沈む前に街を見つけることが出来たのだ。


 しかも道中の案内看板のおかげで、街の名がセパラドスということもわかっている。看板はよくわからない文字で書かれていたのだが……何故か読めた。きっと三角筋のおかげだろう。


【その辺りは転移に関しての補填とでもいいますか、言語対応はサービスで付けておきましたw】


「ありがとー!」


 俺は勢いよく右拳を掲げ感謝を伝える。しかし徒歩中の長々とした対話もあってか、すーさんとの仲もだいぶフランクになってきたな。その証拠に……度々すーさんの失笑が漏れ聞こえてくるのだ。


「で……街に入ったら、何をすればいい?」


【そうですね……もし入れたならw冒険者ギルドに行ってww冒険者登録してくださいwww】


 すーさんが楽しそうで何よりです。やっぱり女の子は笑ってるのが一番だ。楽しげな笑い声に俺の足も軽くなる。


 次第に街が大きく見えてきた。あれが街への門だろうな。


 そして俺は……まるでジュニアヘビー級のような軽やかな足取りで、門へと足を踏み入れるのであった。




***




【半裸の男が街に入ろうとしたらwwwそりゃ、当然ですよねwww】


 俺は守衛室の地下、率直に言えば牢屋に勾留されていた。


 いやいや、半裸とは言うが……これは正装だ。レスラーパンツとレスリングシューズを身に纏うだけの俺は、いわゆるオーソドックススタイル。これこそがレスラーの基本中の基本だろう。


 最近だとTシャツとジーンズのレスラーも増えてきたが……やはりオーソドックススタイルこそが正装に相応しい。


「すーさん……ひょっとしてこうなる事…………わかってて、言わなかったの?」


 俺は格子窓の向こう、夜空に向かって話しかけた。傍からは独り言に見えるだろう。しかし俺には……その言葉を届けたい相手がいる


【服のことは聞かれませんでしたからwwwしかも、街への道中を半裸筋肉男が……とぼとぼ歩いてるんですよ。今、思い出しても草生えますwww】


 すーさんの笑い声が脳に響く。うるさい。


 彼女はずっと笑っている。あ……遂には笑いすぎて苦しそうな声がしてきた。


 それに引き換え……俺はどうなるんだろう。ここから出してもらえるのだろうか、それを考えてもわからない。


 しかし……俺は知っている。考えてわからないことは筋肉で考えればいいのだ! 俺は集中し……全身の筋肉の声を聞き始める。すると……各筋肉から様々な提案が出てきた。そして、そこから至った結論はというと…………


「この鍛え抜かれた上腕二頭筋で鉄格子を曲げて……その隙間から脱出すればいいのだ!」


 俺は両の手で鉄格子を握ると力を込めた。俺の上腕二頭筋と僧帽筋は大きく隆起する。


【さらに罪を重ねる気ですか? お願いですから今日は大人しくしてください。明日、衣服が届くようにしときますからwww】


 すーさんの声が脳に響く。俺は鉄格子から手を離すと、体育座りで……静かに夜が明けるのを待つのであった。



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