25話 「アックスをボンバーするアックス・ボンバー」
「さあ、そろそろ……白黒つけようか」
俺はデュラハンに告げた。大丈夫……弱点は発見できたからな。勝てる。 200 パーセント勝てる!
「そうですね……面白い勝負でしたが、そろそろでしょう」
ヤツも俺の提案に乗ってくれた。さあ、勝負だ。俺はこの試合を締めるに相応しい技を考える。
デュラハンを仕留めることの出来る技。それはすぐに見つけられた。
やはり……弱点を攻撃してやるのが、一番いいに決まっているからな。しかし、それを可能にするには一つ問題があった。それも……大問題だ。俺はその解決策を考える………………が、なかなか思い浮かばない。
「何かお困りですか?」
ヤツが困り果てた様子の俺に声をかけてきた。しょうがない、聞かれたんなら……それに答えるか。
「俺にはお前に見せてやりたい技が……他にも沢山あるんだ」
「なるほど……その面白き技。是非、拝見させていただきたいものです」
発言の冷静さと比べ、ヤツの眼差しからは半端ない好奇心を感じる。まるで、初めてのプロレス観戦をしている子供達のようだ。
「その為には一つ頼みがある。お前の首……元々あった場所に置いてもらえないだろうか?」
甚だ無茶な提案だと思う。そもそも、それが可能ならば……脇に抱えておく必要なんてないだろう。拒絶当然の提案を受けると……デュラハンは口を開く。
「いいでしょう。騎士たる者……死にゆく者の頼みは拒めませんから」
【山田さんを死にゆく者扱いしてますが、デュラハンさんって既に死んでる者なんですよね…………】
こうして、俺の提案は受け入れられた。
あるべき場所に頭部を乗せたデュラハン。やはり眉目秀麗な顔をしている。
ただ、その頭部は胴体にちょこんと乗せられただけであった。しかも……接着されている訳でもない。だから、少し動くと……ほら、首がズレ始めてるだろ?
「さあ、山田よ……かかって来なさい」
俺に向かって戦闘姿勢を取るデュラハン。動く度に首がズレていく。
ふふっ、これが俺の狙いだ。俺がヤツとの勝負を決するには、弱点を狙うのは当然だろう。だが、それ以外にも目的はある。あの位置に首がなければ成立しない技、それこそが俺の狙いだ!
俺はデュラハンの横に回り込む。ヤツは首のズレが大きくなるのを嫌い、即応できなかった。そして、俺は垂直に跳び上がると、体を回転させる。そして……ヤツの後頭部目掛けて蹴りを叩き込む。
「これが俺の必殺……延髄を斬る…………延髄斬りだ!」
バキッ!
俺の延髄斬りはヤツの延髄を直撃した。その衝撃に……ヤツの頭部は遠くまで吹っ飛んでいく。
決まったな。俺は勝ちを確信した。そして、デュラハンの体部分に背を向ける。しかし、おれの肩をヤツが掴んだ。俺は半身になって振り返ると、そこには……吹っ飛ばしたはずの頭部を首に載せたデュラハンがいた。
【吹っ飛んだ頭なんですが……魔力で飛んで戻ってきてましたよ】
そういうことか。いつの間にか頭部が戻ってきていた説明に納得する俺。そんな俺を横目にデュラハンは垂直に跳び上がると……俺に延髄斬りを見舞った。
「これが……延髄蹴りです!」
ドカッ!
頭から地面に倒れ込む俺。マズいな……勝負をつけるつもりが、俺の方がダメージを負ったかもしれない。歯を食いしばり、立ち上がる俺。それを見下ろすデュラハン。
立ち上がるのにも一苦労した俺は……その間に、この試合の最後を飾るに相応しい技を決めていた。その技は俺の得意技の一つだ。延髄斬りも悪くはないのだが、ここは俺の自慢の攻撃をもってして……ヤツの意識を断つしかない!
俺はデュラハンに向けて駆け出した。そして右腕の肘を少し折ると、肩の高さまで上げる。そのまま走った。そして俺は……右腕全体をヤツの顔面目掛けて叩きつける!
「これぞ究極の斧爆弾、アックスをボンバーするアックス・ボンバーならぬ……山田・ボンバーだ!!」
ドカーン!
先程の延髄斬りよりも遠くへ飛んでいくデュラハンの頭部。それは俺の視界から消えるほどに小さくなると……消えた。今度こそ、俺の勝ちだ。俺はヤツに背を向けると歩き出す。
ピトッ
歩き始めて、しばらくした頃だろうか。そんな音が聞こえてきた。俺は振り返ると……首を載せた状態のデュラハンが疾走してくるのが見えた。しかも……右腕を上げてな。
「これが…………デュラハン・ボンバーです」
ドカーン!
再び……デュラハンが同じ技をやり返してきたのだ。
それをもろに喰らった俺は、舌を出したまま…………意識を失った。
***
【山田さん……起きてください!】
俺はすーさんの声で意識を取り戻す。しまった……意識を失うなんてだらしない。しかし、どれくらい俺は失神していたんだ?
【時間にすれば一分ほどです】
なるほど、ならば……まだ試合は終わってはいまい。俺は目を上げると……デュラハンは俺に背を向け、スケルトン達の歓声に応えていた。俺はこっそりと立ち上がる。
【気をつけてくださいよ、頭への衝撃は怖いんですからね】
そうだな。また、意識を失うのは怖いもんな。だが、この試合に負ける方が……俺には怖いのだ。
幸い、デュラハンやスケルトン達は俺が立ち上がったのに気づいていない。
俺は深く息をする。そして、この試合……どのような技で終わらせるべきかを………………決断した。




