24話 「折っれっろ! 折っれっろ!」
円を描くようにして間合いをはかる俺。デュラハンもそれがプロレスのムーブと理解したのか、互いに直径の端と端の位置関係を保っている。
さて、次は何のプロレス技を教えてやろうか。
最初に言った通り、打撃技は効果が薄いだろう……ならば極め技か。俺はヤツの全身を眺める。しかし極め技を用いるにしたって……鎧が厄介だ。締める要素のある技は使えない。なら、肘・膝の関節を狙うのが適切だろう。
俺は意を決した。そしてデュラハンへの最短距離、円で言えば直径を走る。そして低姿勢でヤツに組み付くと足を取り、引きずり倒してやった。そして俺は、仰向けに倒れたヤツの体を横に回し……うつ伏せの姿勢にする。
それからヤツの両脚をあぐらのように交差させると、その隙間に俺の脚を入れた。こうする事で、相手の交差された脚はロックされてしまう。そして、そのロックの負荷を増してやるには……!
「喰らえっ! リバース・インディアンをデスロックする……リバース・インディアン・デスロックだ!」
バターン! バターン!
俺は後方へと倒れ込みながら、背中で受け身を取る動作を連続する。そう……こうやって俺が倒れ込めば倒れ込むほどにロックの負荷は増し、ヤツの脚は痛めつけられるのだ! そして俺は後方受け身を続けた。
「おぉぉ! 派手でカッコいいスケ!」
周囲のスケルトン達から歓声が上がった。
ふふっ、そうだろう。この技は受け身の音がテンポ良く響くからな。視覚だけでなく聴覚も刺激する、そんな派手な技に会場も盛り上がるってもんだ。俺は両腕を高く上げた。そしてリズムを取るように叩く。
パン……パン……パン……バターン!
三回手を叩くと受け身を取る。その動作を何回か繰り返すと……スケルトン達もそれに合わせて手をたたき始めた。俺の手拍子に、骨と骨をぶつけた音が加わる。気づけばスケルトン達は大盛り上がりだ。デュラハンにプロレスラー適性があるとは思ったが、スケルトン達にも観客適正があるとは…………
「面白い」
俺はデュラハンの口癖を用い、呟いた。
その後、俺はデュラハンにリバース・インディアン・デスロックをやり返される。ヤツの後方受け身は鎧のせいだろう、ガシャーンと言う音を立てていた。そして、その都度盛り上がるスケルトン達。
パン……パン……パン……ガシャーン!
「デュラハン様、やっちまえスケー!」
「山田の足を折ってやれスケー!」
「折っれっろ! 折っれっろ!」
【折っれっろ! 折っれっろ!】
いつの間にか、コールの文化まで身につけているスケルトン達。コールの内容は俺に対して侮辱的なのだが……それでも俺は嬉しくなってきた。なんだか…………本当にプロレスをしているように感じたからだ。
いつしか、デュラハンのリバース・インディアン・デスロックも終わり……再び俺とヤツは相対する。
困った。相手は常に俺の技を模倣してくる。それはつまり……俺が何らかの技を出さなくては膠着してしまうということだ。俺はスケルトン達の熱狂に水を差したくはなかった。だから……深い考えなしにヤツに向かって走り出す。
そして……走りながら考える。どうしよう。その時、筋肉の声が聞こえた。筋肉が言うには、生前からの俺の得意技をお見舞いしてやれ……との事だ。俺はそれに従う。そして距離が近づいてきた瞬間、俺は片膝を突き出したまま……跳んだ。
ヤバい。筋肉の言う通りにしたばかりに、これでは打撃技になってしまう。この技は助走からジャンプすると、相手の胸部や顔面に膝をぶつける技だ。このままだと……俺の膝は鎧に直撃してしまう。
しかし、気付く。顔面か……。ヤツは本来あるべき場所に頭部がない。それは脇に抱えられているのだ。ここなら……当てられるんじゃないか?
「喰らえっ! ジャンピングしてニーをバットする……ジャンピング・ニー・バットだ!」
【珍しく説明が正しく聴こえますね】
ドカッ!
俺の膝はデュラハンの顔面を捉えた。ヤツの顔は痛みに歪んでいる。いや、顔だけではない。四肢もフラフラとしている。
そして俺は悟った。間違いない、ヤツは……顔面が弱点だ。
「やりますね……ですが、まだ負けていません。喰らえっ、ジャンピング・ニー・バットです!」
ヤツは俺に向けて駆け込んでくると……同じ技で反撃をしかけてきた。当然、俺は避けない。これが受けの美学だ!
ドカッ!
ヤツの鎧に覆われた膝が俺の顔面を襲った。俺は片膝をつく。ヤツの技は……模倣技とはいえ重い。俺もダメージの蓄積を感じてきた。惜しいが、そろそろ……勝負を決しなくてはならない。俺は力を振り絞ると……再び大地に立つのだ。




