16話 「この技喰らってみな……飛ぶぞ」
「あてくしはオマエの噛ませ鶏じゃないコケー!」
にわとりマンが急に喋りだした。しかし……本当に声がデカいな、コイツ。
【闘犬に噛ませ犬ってのがいますけど、闘鶏にも噛ませ鶏っているんですかね?】
知らない。そもそも噛ませ犬だろうが噛ませ鶏だろうが、どっちにせよ引き立て役って意味だろう。実在するかどうかを考える意味などない。そもそも、にわとりマンとかいう生物が実在していることの方が異常なのだ。
しかし、にわとりマンとは……どう戦えばいいんだろうな。近づけば嘴だけでなく、あの強靭な脚からキックが飛んでくる。俺は自身の持ち技のレパートリーから、この事態の解決法を探った。近づいてはダメだ。そうなると……打撃や投げ技、極め技なんかは分が悪いな。
そこで、ふと思い出した。
強靭な脚からキックが飛んでくる……か。そう言えばにわとりって飛べないよな。俺はにわとりマンの背中に生える羽に注目する。それは……あの図体を宙に浮かせるのには、貧弱すぎて見えた。
「この世界のにわとりって飛べるの?」
【飛べませんよ。ジャンプと言う意味で跳ぶことはしますけど、空を舞う意味での飛ぶことはありません】
俺はすーさんに確認を取った。そうか、やはり飛べないんだな。
よし、決まった! 飛び技だ。アイツが飛べないのなら……俺が代わりに飛んでやる!
俺はにわとりマンに向け、駆け出した。そして、ヤツとの距離が詰まる前に……高く飛び上がる! そして両の足裏をヤツに向けた。そして矢のようにヤツを狙う!
にわとりマンも高く跳んだ。ジャンプキックで迎撃する気だろう。しかし……俺の勝ちだ! 何故なら……俺には助走分の勢いが加わっているからな!
「喰らえ、飛翔天女ならぬ飛翔筋肉と呼ばれた俺の必殺技……ドロップキックだ!」
ドカッ!
「痛いコケー!」
俺のドロップキックは、にわとりマンの胸部に直撃すると……ヤツを吹っ飛ばした。
ヤツは起き上がろうとする。そこに狙いを付けて、再びドロップキックを叩き込む俺。その後……ヤツの起き上がりを何度も何度もドロップキックでぶっ倒してやった。
【七ドロップキック八起きなのか、七ドロップキック八倒なのかはわからないですけど……なんだか可哀想になってきますね】
「ふっ……俺のドロップキックは抜群みたいだ」
何度もドロップキックを繰り返した俺は、少し息をつく間を取る。大丈夫だ、にわとりマンは完全にダウンしているからな。ほら、あそこで仰向けに寝てるだろ。
「あてくしも…………出来ることなら…………飛びたかったコケー」
瞳から涙を溢し、寂しそうに呟くにわとりマン。それもそうだ……お前はにわとりマンに生まれたせいで飛べないんだからな。
そして俺は……閃いた。
気づけば……俺は死闘を演じたにわとりマンに友情を感じ始めていた。だから、コイツの夢を叶えてやりたい。そう思ったんだ。そして俺になら……その夢を叶えてやることが出来る。
俺はにわとりマンに近づくと、ヤツの両足首を掴み……俺の両脇に挟んだ。そして、言う。
「この技喰らってみな……飛ぶぞ」
「コ……コケ?」
俺はヤツの両足首を両脇に挟んだまま、己の体を軸とし回転し始めた。回転数に比例して増す速度。
【なんだかコマみたいですね】
「コ……コココココココ!」
どれくらい回しただろうか……そろそろだな。俺はヤツの放出角度を整え、にわとりマンから手を離す。
「これが俺の必殺技、ジャイアントをスイングする……ジャイアントスイングだ! 飛んでけっ!」
「コケー! あてくし…………飛んでるコケー! ありがとコケー!!」
俺の手から離れたにわとりマンは彼方遠く……見えなくなるまで飛んでいった。
よかったな……夢が叶って。俺もリングアウト勝ちとはいえ……お前のような強敵と出会えて幸福だった。
【なんか格好つけてますけど、魔石の回収が出来てないので……このままだと無報酬になっちゃいますよ】
「あ……」
***
「喰らえっ! チキンウィングをフェイスロックする……必殺のチキンウィング・フェイスロックだ!」
「ギブアップコケー!」
「喰らえっ! チキンウィングをアームロックする……必殺のチキンウィング・アームロックだ!」
「参ったコケー!」
俺はにわとりマンを見つけるや……その羽を伸ばしたり、翼を折ったりと極め技で責め立てる。するとヤツ等はすぐに降参するのだ。そうして俺はギブアップを宣告したにわとりマン達から魔石を回収していく。
【カツアゲじゃないですか……】
気づけば、日没も近くなっていた。そろそろ引き上げ時だろう。俺はセパラドスへの帰途についた。
***
「風呂代を取っておいたのはいいが……冒険者ギルドに直行してもいいか?」
【どうしました? 風呂キャンです?】
「いや、今日は粘液まみれでもないし……お姉さんも怒らないと思うんだけど」
昨日の反省で……冒険者ギルドに行く前に風呂に入る用の銅貨を二枚取ってある。でも、それって粘液まみれで来るから言われただけだよな。今日はにわとりマンとの闘いだったわけだし、粘液まみれになってもいない。それなら、先に冒険者ギルドに行ってもいいんじゃないだろうか。
「それに……風呂に入った後は飯屋に直行したいからな」
【そういう事なら、それでいいんじゃないんですか】
すーさんのお墨付きも得られた。俺は冒険者ギルドに着くと、意気揚々と建物内へと足を踏み入れる。
あ、いたいた。受付のお姉さんだ。俺はカウンターに向かうと、お姉さんの向かいに座り魔石を提出した。個数を確認するお姉さん。一度、その場を離れると……報酬の銅貨を持ってきてくれた。
「にわとりマンの魔石を八個確認できましたので、銅貨四十八枚になります。お収めください。それと抱きつき魔さん……鶏小屋の匂いがしますよ。獣臭いです」
俺は報酬を受け取ると風呂屋に向かった。なるほど、匂いか……誤算だった。やはり風呂を先にするべきだったな。
俺は身に染み付いた匂いを落とすべく丁寧に体を洗う。そして入浴により本日の疲れを癒やすと……次は食事だ!
俺は昨日の食事処へ向かう。今日はチキンステーキだけは食べたくない。それならば……
今日も……俺とメニュー表の一進一退の攻防が始まるのだった。
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