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冴えないプロレスラーの俺がツッコミの女神に転移させられたのは娯楽のない世界だったので、プロレス団体を設立して人々に娯楽と笑いを届けよう  作者: マスクドぷるこぎ
団体創成編

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12話 「スピをアーする……必殺のスピアーだ!」


 本日届けられたスウェットの上には……粘液と書かれていた。


「なんで粘液なの?」


【昨日の上半身が粘液まみれでしたから、その気持ちを忘れないようにです】


 俺はスウェットの上下を身に着けると、釈放される。衛兵さん……本当にお世話になりました。




「今日もギルドに行った方がいい?」


 俺はすーさんに尋ねた。スライムを狩るのなら早いうちに行きたいからな。寄り道なんてしてる暇はない。


【登録は済んでますので、狩り場に直行しちゃって大丈夫ですよー】


 そうなんだ、なら良かった。なにせ今日はスライムを沢山倒さないといけないからな。時間が惜しい。ただ……沢山倒したとして、何匹倒したとかの報告はどうしたらいいんだろう。そもそも、倒した数を証明できるんだろうか。


【えっとですね……魔物は倒されると魔石を落とすんです。そして、それを提出することで報酬が貰えます】


 へー。便利に出来てるもんだな。でも、昨日は魔石なんて拾わなかったし……なんでお金が貰えたんだろう。


【そりゃ、あんなにも粘液まみれの人を見れば……一匹くらい倒したと思うでしょう…………もしくは()()です】


 そっか……まあ、いいや。とにかく今日はスライムを大量に倒さなくてはならない。何故かって? それは……腹が減ったからだ。


 こうして俺は狩り場へと走るのであった。




***




 狩り場に辿り着いた俺は周囲のスライムを探す。辺りを見回していると、その時…………。


【あそこの水場付近にいますね】


 すーさんが教えてくれた。いつも、ありがとう。俺はスライムに近寄ると、スウェットの上下を丁寧に畳んで……戦闘態勢に入った。




 俺は敢えてスライムとの距離を離している。このままでは俺の攻撃は届かない……が、ヤツの攻撃は届くのだ。そして、ヤツは俺に向かって体当たりを敢行してくる。


 ここが好機だ! 俺は体当たりを大胸筋で受け止めると両腕で挟み込み……


「ベアをハッグする……必殺のベアハッグだ!」


 ぷっちんと破裂するスライム。


【あ……それです、それ。お腹のあたりに引っかかってるのが魔石ですよ】


 俺はシックスパックに割れた腹筋の隙間に、粘液まみれの魔石をみつけた。なるほど、これを沢山集めればいいんだな。そして俺は上半身を粘液まみれにしながら……スライムを探すべく走りまわるのであった。




***




 それから山田さんは、スライムを見つけては破裂させる作業を繰り返していました。それを遠巻きに……呆れたまま見つめる冒険者の人達。気づけば彼らによって、山田さんは抱きつき魔という異名で呼ばれるようになっていました。日頃の振る舞いって大切なんですね、皆さんも気をつけてください。




「流石に少し疲れてきたな、休息を取ろう」


【お疲れ様です】


 俺は手近にちょうどよい大きさの岩をみつけると、そこに腰掛けた。そして魔石の数を数える。


「ひのふのみの……十一個か」


【おお、すごいですね。銅貨二十二枚分ですよ】


「もうスライムを倒すコツは掴んだからな、楽勝だ」


 すーさんは称賛の声を挙げるが、俺はさも当然であるかのように涼しげな顔で返答を返した。


【楽勝とか言ってますけど、何匹かの体当たりがみぞおちに直撃してたの……見てましたからね】


 それは仕方ない。だってフォークボールだったもん。思ったより落ちたから掴めなかっただけだってば。


「まあ、それは置いておくとして……スライムを潰すだけの単調作業には少し飽きてきたな」


【見てる分には楽しいんですけどね】


「いや、なんと言うか……もっと効率的にスライムを倒せないか試してみたいんだよ。ベアハッグだと時間がかかるし疲れるからな……何より上半身が粘液まみれになるのが気持ち悪い」


【気持ち悪いと思える感性……持ってたんですね】


 なんだか馬鹿にされてる気がする。でも気にしない。俺は返答することなく立ち上がると、スライムを探し始めた。そして標的をみつける。

 

 俺は先程までと同じ距離感でスライムと対峙した。ふふっ……ここまでは同じに見えるだろう。だが、ここからが本番だ! 俺はスライムの体当たりを待つのではなく……全力でスライムに向かって駆け出す。


 全力疾走のまま、俺は重心を低くして前傾した。そしてスライムに頭から突っ込むのだ! この技はアメフトやラグビーのタックルから派生した技であり、全力でぶつかったまま相手を抱え込むと……そのまま地面に叩きつける。どうだ、スライム……この衝撃力にお前の膜は耐えられるかな?


「喰らえっ! スピをアーする……必殺のスピアーだ!」


【スピとアーって何なんでしょうね】


 ぷっちん


 スライムは破裂した。俺のスピアーは……ヤツの表面の膜を破るのに成功したのだ。しかし、スピアーでスライムを倒すのは二度とやらない方がいいかもしれない。何故なら……ヤツの粘液が頭から顔にかけてを覆いつくすからな。


【これで残すは下半身ですね。どんな技なら下半身も粘液まみれに出来るんでしょう】


 考えたくもない。それより俺は顔を覆う粘液を払うのに忙しい。すーさんは無視しておくのがいいだろう。しかし、またもすーさんから脳内に声が届く。しかも声色からは……ケタ違いの切迫感すら感じる。


【山田さん、あれを見てください!】


 尋常ならぬ様子のすーさんの声が響く。俺は無視を中止すると視線を向けた。すると、視線の先にはスライムが見える。


【あれと戦うのだけは……避けたほうがいいです。逃げてください!】


 どういう事だ? あのスライムは他のスライムと何が違うのだろうか?




 俺は何がなんだか理解できないまま……立ち尽くすしかなかった。


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