104話 「手羽先・アームロック」
さあ、待望の魔物バトルロイヤル! 一人目の入場者はスライムさんですね。花道を……這うようにして進んできます。
〈スライムさん、頑張れー!〉
〈前回の試合でファンになったぞー!〉
〈また、ターリアさんとの試合を頼みます!〉
これも、前回の試合のおかげでしょうか。スライムさん、すっかり人気者ですね。お客さんの声援を受けると、それに応えるように……飛び跳ねながらリングインしました。
「二人目、三人目の選手、スケルトン……出てこいや!」
山田さんの誘導にスケルトン一号・二号さんが花道に姿を現しました。お客さんからは……歓声五割、悲鳴五割といった感じでしょうか。
〈凄え……骨が歩いてやがるぜ!〉
〈怖ーーーい!〉
スケルトンさん達。その圧倒的体重の軽さのおかげでしょう。とても軽やかな足取りでリングに向かっていきます。
「四人目、にわとりマン! 出てこいや!」
「コケー!」
にわとりマンさんは会場に……自慢の大声を響かせながら登場してきました。
〈うるせー!〉
〈あれ……でも、よく見たら愛嬌あるわね〉
飛べもしない背中の小さな羽を動かしながら、花道を爆走するにわとりマンさん。その勢いのままリングインします。
「五人目は……フライング・ヘッドだ! 出てこいや!」
フライングヘッドさん、ふわふわと浮遊したまま花道へと現れました。
〈頭が飛んでやがるぜ……ちょっと気持ち悪いな〉
〈でも……思ったよりイケメンじゃない?〉
泥パック施術済のフライング・ヘッドさん。割と女性からは歓声が上がっています。花道を飛びながら進むとリングインしました。
「六人目……クモ男! 出てこいや!」
クモ男さん、普通に花道に現れましたね。観客の皆さんに一礼すると花道を往きます。
〈俺……蜘蛛は生理的に無理〉
〈私もちょっと……〉
可哀想なクモ男さん。歓声ゼロ、生理的嫌悪感十割です。ですが、試合で見返してやりましょうよ! クモ男さんは普通に花道を進むと、普通にリングインしました。
「次が最後だ……七人目。デュラハン……出てこいや!」
最後に姿を現したのはデュラハンさんです。重厚な鎧を身に纏い、小脇には自身の頭部を抱えたまま……威風堂々と花道を進みます。
〈最後の入場だけあって、ラスボスみたいだな〉
〈あんな化け物、どうやって倒すんだよ〉
〈顔はフライング・ヘッドの方がカッコイイわね〉
デュラハンさん、観客の声に興味深そうですね。多分……面白い、とか言ってるんでしょう。ゆっくりと花道を歩むと……遂にリングインしました。これで全員が揃いましたね。
リング上には七名の魔物がひしめいています。イクセントラさん、少し肩身が狭そうです。
ちなみに入場アナウンスを終えた山田さんは、リングサイドに控えています。あ、ルカさんも合流しましたね。どうやら山田さんとルカさんはリングサイドで、このバトルロイヤルを観戦するみたいですよ。
さあ、イクセントラさん……ゴングを要請しました。魔物バトルロイヤル、いよいよ始まります!
カーーーーーン!
***
「さあ、ゴングが鳴らされました。なお、この試合は実況を山田……解説はルカの方でお送りさせてもらいます」
なんと山田さん……リングサイド、受付二号さんの隣の席で拡声器を通して実況を始めました。その付き添いで解説をやらされているのはルカさんです。
まあ、観客の皆さんに魔物さん達の特徴だったり……バトルロイヤルの見どころなんかを実況形式で伝える意図があるんでしょうね。悪くないと思いますよ。いや、むしろ……良いと思います。
「解説のルカさん、この試合の見どころはいかがでしょう?」
思ったより実況に向いている山田さん、ルカさんにバトルロイヤルの注目点を尋ねました。
「スケルトンの骨が何本折れるか……でしょうね」
「なるほど。ではリングの方に注目していきましょう。七体の魔物が……もはや大乱戦になっています。デュラハンはスケルトンをボディスラムで投げた! これにスケルトン二号の肋骨が折れる!」
ポキポキッ
今、目立っているのは山田さんが実況している骨折シーンですが……他ではクモ男さんが糸を放出して、にわとりマンさんを捕らえています。フライング・ヘッドさんはリング内上空を飛んで、まだ様子見に徹していますね。それとスケルトン一号さんはスライムさんにスケルトンチョップを放っています。
「おお! にわとりマン、クモ男の糸に捕まるも……それを逆手に取った! なんと糸を遡ると……クモ男に接近する! そして……極めた! これがにわとりマンの必殺……チキンウィング・アームロックだ!」
〈うおおおお、やるじゃねえか。にわとりマン!〉
〈手羽先が食いたくなるな〉
〈手羽先・アームロックに改名したほうがいいんじゃねえか?〉
「お客さんからは……そのような声が上がっております。私、山田も……手羽先・アームロックには一票を投じたい。そんな気分です。しかし、この試合はバトルロイヤルだ! にわとりマン、まだ経験不足なのを露呈しているぞ、大丈夫か?」
ん? 山田さん……何を言っているんでしょう。今はにわとりマンさんが手羽先・アームロックをクモ男さんに極めているところですよ。何が経験不足なのでしょうね。
「バトルロイヤルというものは……自分以外にも戦ってる選手が沢山いるんです。そんな中、関節技で動きを止めてしまうとどうなるか! 観客の皆さん、是非とも御覧ください!」
見れば、手羽先・アームロック中のにわとりマンさんを囲うように……他の魔物が集まってきました。そしてデュラハンさんとスケルトンさんはストンピング、スライムさんとフライング・ヘッドさんは体当たりを見舞い始めたのです。
〈おおおおおおお! 集中攻撃だ!〉
可哀想なにわとりマンさん……あっという間にフルボッコですね。そして、そのままデュラハンさんに場外に投げ捨てられてしまいます。
「はい、バトルロイヤルで極め技を使うと……こうなるんです! ということで……まず一名。にわとりマンが脱落です。この展開……どうですか、ルカさん?」
「にわとりマンのバカさ加減には……心底呆れます」
〈わはははははははは!〉
会場には笑い声が響いています。こういった笑い声が溢れるのも……バトルロイヤルの魅力なんでしょうね。
さあ、残りは六名……いったい誰が最後まで生き残るのでしょうか。




