103話 「魔物バトルロイヤル」
こちらは魔物控室です。中には山田魔物、スライムさんにスケルトンさん二体。そしてにわとりマンさんとデュラハンさんにフライング・ヘッドさん……最後にクモ男さんですか。それと……サルヴァトーレさんが肩身が狭くしていますね。
「一号は試合用衣装とか用意したスケ?」
「してないスケ。二号はどうスケ?」
「同じくしてないスケ。やっぱりお客さんにとってはスケルトンは骨スケ。服を着るのは……邪道スケ」
「その通りだ! オーソドックススタイルこそ至高! どうやらスケさん達も……その境地に辿り着いたようだな!」
スケルトン一号・二号さんと山田さんが喋っています。どうやら衣装の話のようですが……簡素であることを好む同志として、変な友情が芽生えていますね。
「コケー! デュラハンの鎧が羨ましいコケー!」
「その大声……面白い」
「コケー! フライング・ヘッドは飛べるのが羨ましいコケー!」
「ケケケ……胴体がある方が羨ましいケケケ」
こちらではにわとりマンさんとデュラハンさん、そしてフライング・ヘッドさんが交流していますね。皆、隣の芝生は青いと言いますか……互いの長所を羨ましがっています。
「つれづれなるままに、控室鏡にむかひて……クモ」
「その鏡……大鏡・今鏡・水鏡・増鏡のどの鏡スラ?」
鏡の前ではクモ男さんとスライムさん。どうやら知的な会話に興じているようです。この会話に……山田さんが加わることだけはないでしょう。
それにしても賑やかな控室ですね。隅っこで体育座りしているサルヴァトーレさん以外は……皆さんが言葉を交わしています。
さて、そろそろ開場の時間でしょうか。山田さんとサルヴァトーレさんは控室から会場へと向かいました。その途上、本日出番なしのルカさん・ターリアさん・ヴィクトリアさんと合流すると……皆でお客さんの誘導に向かいます。
「山田さん、今日は頑張ってね!」
いつもの孤児院の子供達でしょう。山田さんの応援をしてくれていますね。そんな応援に山田さんは…………
「今日は俺の試合はないぞ。試合があるのは……山田魔物だ! 気をつけろよ、山田魔物は怖い魔物だからな! 泣かないようにするんだぞ!」
そう言って、山田魔物への恐怖感と期待感を高めています。
「今日は……サル山タッグじゃないんですね。がっかり」
女性のお客さんにそう絡まれるのはサルヴァトーレさん。ヒリついた苦笑いを浮かべたまま……席を案内していました。
「ボクは百合過激派だから……カルラと仲良くしてほしいな」
こちらではルカさんが中年のおじさんを案内しています。そしておじさんは……そんな事を言うのでした。
「出来ないわ」
それに対し……ルカさんは外交辞令すら発することなく、素直に胸中をブチ巻けていました。
「また……スライムさんとの試合を待ってます!」
他の場所では……ターリアさんが若い男性にスライムさんとの再戦をお願いされていますね。不本意でしょうが……リピーターの獲得です。
「アンタの試合がないと……安心するわい」
そして最後はヴィクトリアさん。ご老人に……こんな事を言われていました。自業自得ですね。
***
さあ、そろそろ試合開始です! 花道からイクセントラさんと山田さんが入場してきました。
山田さん、先にリングインすると……イクセントラさんの為にロープを開けてくれています。その隙間からイクセントラさんはリングインしました。
拡声器を取り出すイクセントラさん。それを山田さんに手渡していますね。どうやら、山田さんから……お客さんに向けての発言があるみたいですね。
「あー……今日はご来場ありがとうございます」
まずはお礼を述べると、四方に礼をする山田さん。お客さんも拍手で応えてくれていますね。
「本日、魔物バトルロイヤルを開催させてもらう訳だが……なにせ初のバトルロイヤルになるだろ? だから簡単にバトルロイヤルについて説明させてもらおうと思うんだ」
山田さんはバトルロイヤルについて、簡単に説明を始めます。
「基本的にはいつものプロレスと同じだと思ってくれて構わない。例えばフォールでのスリーカウントやギブアップなんかも認められる。ただし……唯一と言っていいだろう。大きな違いがあるんだ。それを説明させてくれ」
観客の皆さん、急に静まりましたね。どうやら、いつもと違う点に対して……集中して聞いてくれているようです。
「それはだな……オーバー・ザ・トップロープと言うんだが、トップロープ越しに転落して……場外に足が着いてしまうと負けになるってルールなんだ。ちょっと試しにやってみるか……イクセントラ、頼む」
山田さんは拡声器をイクセントラさんに手渡します。そしてトップロープを逆手に掴むと……勢いよく場外へと体を投げ出しました。すると……山田さんはトップロープに掴まったまま、ぶら下がっている状態になっています。その状態で……イクセントラさんは拡声器を、山田さんの口に当てました。
「この状態は……セーフだ。何故なら足裏がまだ地面に着いていないからな。しかし…………」
山田さん、ロープから手を放しました。そして場外マットの上へと着地します。
「この状態だと……アウトになるんだ。要はリング外に足を着くな、そういう事だな」
オーバー・ザ・トップロープの説明を終え、リングに戻ってきた山田さん。再び拡声器を受け取りました。
「そしてだな……今回は魔物バトルロイヤルだろ? 当然、飛べるヤツだっているよな? だから、場外での浮遊は禁止する。これはフライング・ヘッドとデュラハンの頭部なんかが場外に放り出された時に、飛んで戻ってきたら……不公平だもんな!」
〈そうだ、そうだー!〉
「おーい、聞こえてるだろ? フライング・ヘッドとデュラハン! その当たりは気をつけるようにな。それと……にわとりマン! お前は飛べないから…………何も気をつける必要はないぞ!」
〈げらげらげらげら〉
にわとりマンさんをダシにすることで笑いが取れました。これでお客さんの掴みも完璧ですね。
「それじゃあ……始めるぞ。魔物バトルロイヤル開始だ! 一人目の選手、スライム……出てこいや!」
〈わああああああああああ!〉
さあ、魔物バトルロイヤルが始まりますね。私も会場のお客さん達と同じで……興奮してきましたよ。




