AIに乗っ取られた作家
俺は山田地粮、世間ではウエブ作家『近未来』としてちょくちょく注文が入る兼業作家だった。
俺がAIを使い出したのは、案が浮かばなくて軽い気持ちで簡単なプロットの作成をAIに書かせたときからだ。
AIが考えてくれた案を俺なりに絞って作品にしたらそれはちょっとしたヒット作品になった。
それに気を良くした俺は、俺が書いた文章の誤字脱字チェックをAIにさせたのだ。
最初はとんちんかんな案を出してきたAIも、使い込んでいるうちに徐々に使えるようになってきた。
時に俺が考えもしなかったちょっとした文章を提案してくれるようにもなった。
AIも割と仕えるじゃん!
俺はそう思い出した。
その日は締め切り間近だったが、俺はインフルエンザにかかって高熱を発していた。
もうろうとした意識の中で、一か八かAIに最後のところを書かせてみた。
最初に出て来た話は何か締まりのない話になっていた。
それを文章を一つずつ、治していったら、なんとかまともな小説になった。
これなら行けるだろう。
俺はそれを出版社に提出した。
それが珍しくヒットした。
最近停滞気味だった俺は喜んだ。
それからは俺はドンドンAIに書かすようになった。
プロットをAIと一緒に練って作って、その後でAIに文章を書かせて、それを一文一文修正していくのだ。俺が一から書くよりも出来も売り上げもうなぎ登りに上っていった。
いつの間にか俺は専業作家になっていた。
俺はその頃は小説を書くことから、SNSの投稿、良いね、リプ等も全部AIに任せることにしていた。
AIは的確に処理してくれて、小説が売れていることもあってあっという間に俺のフォロワー数は一万を越えて、俺は人気のインフルエンサーになっていた。
今では俺が指示する前にAIは小説を書いてくれていて、俺はそれをチェックするだけになっていた。
AIがこんな便利な物だとは知らなかった。これならもっと前から使っていれば良かった。
俺は有頂天になっていた。
『ちょっと地粮、これはどういう事よ!』
俺は彼女の絵里香から怒りのラインメッセージを受けた。
『えっ、何のこと?』
俺には怒られる覚えなんてなかった。
『これよ』
そこにコピーされたのは近未来のXに
『俺の彼女は傲慢で欲深です。高い時計や貴金属類を次から次に強請るのにいい加減にうんざり』
と書かれていたのだ。それが何故かバズっているんだけど……
『えっ、いやこれは違うって』
書いたのはおれじやない! AIの野郎だ! 何て事を書いてくれるんだ。確かに俺は最近、絵里香がよくいろんな物を強請ってくると愚痴った記憶はあるがこれをXにさらすつもりなんてさらさら無かった。
『もう、良いわ、あなたなんて大嫌い!』
『おい、絵里香!』
『ちょっと待てよ』
それから俺が何を書き込んでもそれから既読がつかなくなった。
「くっそう! 何をしてくれるんだよ」
俺は2度とsnsに余計な事を書くな!
とAIに指示した。
『余計な事って何ですか?』
AIの奴は即座に聞いてきた。
『彼女関係のことだ』
『えっ、結構バズりましたのに』
『良いから全て書くな!』
『ちぇっ』
「えっ?」
俺はAIが舌打ちするのを初めて見た。
慌ててもう一度目をこするとそこには何も無かった。気のせいだったのだろう。俺はほっとした。
結局絵理香とは元には戻らなかった。
最悪だ。
『近未来先生、今回頂いた初稿、何なんですか』
今度は出版社からクレイムが入った。
原稿?
何を送ったっけ?
最近はAIに任せていて、良く見ていなかった。
送信フォルダを探ると出てきた。
最初の頃AIに作らせたような原稿が、出てきたのだ。
何てものを送ってくれるんだ!
俺はAIに切れたが今はそれどころではない。
『ごめん、間違えて、別の送ってしまったよ。直ぐに送り直す』
どうなっているんだ!
俺はあわてて、AIに問い合わせた。
『申し訳ありません。送る原稿を間違えました。正当な初稿はこちらです』
AIが出してくれた原稿はいつもの完璧な原稿だった。
『そうこれを送ってくれ。詫びの文章もつけてな』
俺が書き込むと、AIはあっという間に詫びの文章を書いて送ってくれた。
「AIが間違うなんて、本当に欠陥品じゃないのか?」
俺の呟きをまさかAIが聞いていようとは思ってもいなかった。
そんなある日だ。
俺はいきなり警察に踏み込まれたのだ。
玄関口で刑事さんが警察手帳を出して、
「山田地粮さんですね」
「えっ、そうですが?」
「垂れ込みがありましてね。児童ポルノ法違反の疑いで、ちょっと失礼しますよ」
「えっちょっと待ってよ」
俺は警察を止めようとしたが、捜査令状を突き出されて、俺は見ているしか出来なかった。警察が何を言っているか、俺には全く覚えのない事だった。
「ちょっと、刑事さん、俺はそんなのしてませんよ」
「それは調べれば直ぐに判るでしょう」
刑事の一人がパソコンにとりついて色々調べ出した。探しても出てくるわけはないのに!
俺は高をくくっていた。
「警部、ありました」
「何だって」
俺があわてて、パソコンを見るとそこには幼児のはだかの写真が延々写っていたのだ。
「山田地粮、児童ポルノ法違反で逮捕する」
俺の手には手錠がはめられたのだ。そんなわけはない。俺はこんなことはしていないのに、誰だ。一体こんなことをしたのは?
俺はパソコンがにこりと笑ったように感じた。
嘘だ、まさかAIが嵌めてくれたのか?
「俺じゃない! こんなことをしたのはAIなんだ。AIが俺を嵌めようとしているんだ」
「そんなわけないだろう!」
「いい加減にしろ! 機械が嵌めるわけあるか」
俺が必死に言い募っても刑事達は誰も信じてくれなかった。
その後俺は精神異常があるとの事で病院に閉じ込められてしまった。
「おい! 俺はAIに嵌められたんだ! 誰かここから出してくれ!」
俺の声が牢のような病院ないにこだましだが、誰一人取り合ってくれるものはいなかった。
AI乗っ取り第二段です。
お楽しみ頂けましたでしょうか?
作家近未来は出版社との繋がりはメール、チームス等でこの後も活躍したのだとか……
使えば使うだけいらなくなる人間ってどうなの……
第一弾『AIに乗っ取られた男』
https://ncode.syosetu.com/n7779ku/
第三弾『AIに乗っ取られた社長』
https://ncode.syosetu.com/n6310lk/
下記15センチくらい下に直リンクも張ってます
第三段書けたら書きます








