表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

06 メインディッシュは銀皿の上に

 自分の不死性をわかっていても、流石に首を切り落とされたらたまったものじゃないわけで。

 あまりにショッキングな光景を目にしてしまったものだから、私はしばらく気を失ってしまっていたみたいだ。

 瞬きを数回繰り返してから、霞む視界の焦点を合わせて、目の前の光景を理解しようと試みる。


「……?」


 どうやらここは屋内で……随分と薄暗い部屋であるらしい。

 月明かりに似た光は差し込んでいるし、狭苦しさは感じないから、棺の中ではなさそうだけど、何故か身体は動かせない。

 いや、動かせないというよりは……感覚が無い。

 凄く嫌な予感がして下を向いたら、状況がよく理解できた。


「生首かぁ……」


 なんとなく感づいてはいたけれど、私は今首だけの状態であるらしい。

 自分の声が聞こえる辺り、発声はできるようだけど……

 やっぱり実感してみると、辛いな。

 あれだけ必死に呼びかけても、誰も私の話を聞いてくれなかったし。

 フェリクス様に至っては、会話したのに首落としてきたし。


 なんて、心の中で文句を言っていたら、背後からコツコツと足音が聞こえた。


「その状態でも喋れるらしいね」


 今更、声の主は誰? なんて思わない。

 控えめな光量のランプを手に、大回りで横切った彼の背中には、光と剣の紋様が見えた。

 聖印のあしらわれた純白のマントは死者の安寧を司る神、テレージアに仕える聖騎士の証。


 彼が振り返って、薄いベージュの長髪も明らかになる。

 間違いない、フェリクス様だ。


「お久しぶりです。随分背が伸びましたね」

「……あんたが小さくなったんだ」


 は。そりゃもちろん生首ですから。

 どれだけあった頭身も一頭身に様変わりですね。


 なんて、冗談を続けてやることもできるけど、正直そんな気分じゃない。


「それで、乙女の身体を弄んで、楽しいですか?」


 どうやら私が今いるのは食卓の上であるらしい。

 銀の皿の上に生首を置いて、傍にはご丁寧にナイフとフォークまで用意してある。

 さして考えなくたって、それを何に使うつもりかはわかる。

 

「弄ぶなんて言い方が悪いな。尋問だよ」


 何故なら、フェリクス様は私と目も合わさずに正面の席についているから。

 さも当然とも言いたげな所作で、二つの食器を手に取っているから。

 彼はそれを、私に使うつもりなのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ