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01 再会は棺の中で

異世界恋愛は初投稿です。

至らぬ点も多いかと思いますが、どうかよろしくお願いします。


「成功したんだ! 蘇生の秘術!」


 胸の上に組んだ両手を動かせないほど狭く、ひどく乾いた空間の中で。

 それでも暗闇に馴染んだ視界の中心に、教会の聖印が見えた瞬間、私は歓喜して叫んだ。


「あれ?」


 そこで、棺の端の方から光が差し込んでいることに気が付く。

 おかしいな。私みたいな平民は死んだら普通に埋葬されるはずだけど。

 棺ごと土に埋められる前に、目を覚ませたってことなのかな?


「よい……しょ!」


 棺の蓋が開きかかっているようなので、手をついて除けようと試みる。

 ぼんやりと見えた石造りの脇から、青みがかった光が広がって……


「エルカ?」


 そこで、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 男性的で、ひどく聞き覚えのある声だ。


「ひょっとして、フェリクス様?」


 私がそう呟いたところで、棺の蓋がずり落ちてしまった。

 バキッと木材の砕ける音がやけに反響して聞こえてくる。


「おや?」


 身を起こすと、ゆっくりとこちらへ振り返るシルエットが目に入った。

 月明かりに照らされて、つり気味なネイビーの瞳が明らかになる。

 それは、白っぽいベージュの長髪を、肩の辺りまで伸ばした男性だった。


「背、伸びましたか?」


 確か、彼は決して長身ではなかったはずだし、髪だってこんなに長くはなかったはず。

 私と同じくらいの身長で、騎士兜を被りやすいように、短髪に切りそろえていたはずだ。


 もしかして……


「私、どのくらい寝てたんですか」

「…………十年だよ」

「え」


 予想はしていたはずなのに、それでも頭が真っ白になってしまう。彼の言うことを疑いたくなってその顔を見つめても、心の内を知ることはできない。


 よく見れば彼の頬は随分とこけていて、目の周りには酷い隈と、黒ずんだ腫れのようなものが見える。目元にかかった長髪は随分とぼさついていて、それでも強い意志の籠った鋭い視線は、真っ直ぐに私を貫いている。


「あんたが俺の前で死んでから、今日で丁度十年だ」


 私にどうしようもない事実を告げる、不気味なほどに低い声。震えているようにも思えるその声色に、込められた感情を推し量ることはできないけれど……


「あ……ははは、じゃあ、お久しぶりですね」


 絶対にこの状況に合わないセリフを吐きつつ、私はにわかに焦っていた。

 だって、フェリクス様はとても嬉しそうな表情はしていなかったから。

 その瞳孔を最大限開いて、こちらをじっと見据えていたから。


「ねえエルカ。俺、言ったよね」


 だって、私は覚えていたから。

 意識を失う直前に交わした、彼との約束を覚えていたから。


「俺より先に死んだら、殺すって」

「え、えっと……」


 いやでも、今こうして蘇ったわけですから。

 いや、確かに一度死んだことには変わりないけど。

 それでも私は生きてますから……ね?


 だから、鞘から剣を抜くのは、やめませんか?



「じゃあ、約束通り、殺すね」



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