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PrimordiaL   作者: 桐島徠翔
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第1話 ヴァハムート

西暦2235年 5月20日

場所 惑星E230Ωから地球への帰路


「突っ込みすぎだ!戻ってこいナギサ!」


チャーリー分隊長の怒声が無線から聞こえる。

僕はそこで気が付いた。味方小隊から離れ、僕が乗っている機体だけが孤立していた。(マズイ!)そう思ったのも束の間、量産機3体が自分目掛けて突撃してきた。


一体ずつ相手するのにはなんの問題も無い。僕達の乗っている量産機体「ニューアーマー」よりも性能の劣る機体「チープアーマー」ばかりなのだから。しかし、三体同時に相手取ると話が違ってくる。ましてや入隊してから1年しか経っていない新兵の僕なのだから捌き切れないのは目に見えて分かった。


「オラァァァ!」


しかし、幸いにも味方の援護が間に合う。援護に来たニューアーマーは、まず突っ込んで来た一機のコックピットを右手に持ったメイスを使い叩き潰し、その流れで、もう一機の頭を吹き飛ばした。僕も残る一機と対峙する。敵は右手のサーベルを勢いよく僕に向けて振る。

あまりにも単調な攻撃だった。冷静に左手のシールドで防ぎ、コックピットに向けて右手のマシンガンのトリガーを引いた。敵のチープアーマーから火花が飛び散り、そして爆散した。


ナギサ

「ゴメン。ジョン助かった!」


ジョン

「良いってことよ。こんな所で友達を失う訳には行かないからな。」


ジョンと共に小隊に合流する


チャーリー

「2人とも無事だな」

冷静な口調だった。


ジョン

「何とか無事です」


チャーリー

「そうか、しかし」

チャーリー分隊長は周りを見渡しながら


チャーリー

「思っていた以上にカルテルの連中が多いな。いつもならチープアーマーが10機も出て来ないのに。我々第2騎団でも面倒だな」


今僕達が所属している"四獣騎団は「ニューアーマー」での戦闘に特化した国際連合公認の軍隊である。その中でも第2騎団は宇宙や地上、場所を問わずに戦う遊撃隊だ。僕は親の押しつけでパイロット候補生になり1年前、第2騎団に入隊した。今回のようにカルテルからの攻撃はよく受けるのだか、出てきてもせいぜい5機か6機ぐらいで脅威になる存在では無い。しかし、今回はある程度倒したとは言えど、まだ20機ほど残っていた。


しかも間の悪いことに、今回の任務は惑星調査をして終えた艦船の帰路に脅威が無いかを見て来るという、簡単な物だったが故に僕とジョンそして、ウィルの新兵が3人とチャーリー分隊長のみの編成だった。


ウィル

「分隊長!増援はまだですか!もう持たないですよ!」


今回が初出撃だったウィルがキレ気味に質問する。


チャーリー

「艦船の方から今向かっている。後2分死ぬ気で耐えろ!」


ウィル

「クッッソ!」


カルテルの攻撃はやむはずも無く、無慈悲にこちらに射撃してくる。全員反撃する間もなくただ回避するのに精一杯だった。


ナギサ

「何でこんなにいるんだよ!」


ジョン

「コイツらマジで俺たちのこと殺しに来てんな」


チャーリー

「文句言う余裕があるだけましたな。いいか!これから戦線を下げながら撤退。本隊と合流をする。」


しかし


チャーリー

「ちっ、遅かったか」


チャーリー分隊長の言葉からは焦りが滲み出ていた。

気づいた時には包囲されていて、こちらに銃口を向けて動きを見ていた。性能はこちらが上でも、この数の差の前では役に立たないものになっていた。

さっきまで文句言っていた僕達の余裕が消え去り、言葉が出ない。


僕はそこで初めて自分の目の前にハッキリと"死"がある事に気づいた。恐らく、この小隊全員が思った事だろう。

僕はの"死"は親に決め付けられて、望んでもいない戦場で迎える。

僕の意思は誰にも知られないまま。

そう思った。


???

「間に合っっったぁぁぁ!」


だが事態は僕達の予想どうりにはならなかった。紅く響めく禍々しい人型兵器が、包囲していたチープアーマーを破壊した。残りのカルテルもこの異常事態に気づいて、こちらと距離を作った。

僕達も状況が飲み込み始めて気付く。僕達の前にいるこの悪魔のような機体は...


ナギサ

「プライモーディアル6号機...ヴァハムート...」


ウィル

「スゴイ...」


ジョン

「コイツが例の"悪魔"の機体」


新兵組が唖然としている中、チャーリー分隊長はヴァハムートのパイロットと話している。


チャーリー

「チョイと来るのが遅かったんじゃない?」


パイロット

「しょうが無いやん、コレでもスラスターの出力MAXですっ飛んで来たんやで!」


以外にも聞こえてくる声は僕達とあまり変わらないぐらいで関西弁を喋る人だった。声だけは性別までは分からなかったけど。


パイロット

「まぁ遅れた分の仕事はきっちりしますから、後はゆっくり休んどき」


そう告げるとヴァハムートは、距離を作りこちらを伺っているカルテルの方に向き、手に持っている槍を構えた。


手始めにカルテルとの距離を急速に詰め、その速度に反応し損ねた一機を真っ二つに。そのまま槍を横に薙ぎ払っい2機、3機と玉砕して見せた。カルテルも反撃する。距離を詰められるとマズイと思った連中はマシンガンやミサイルを乱射した。ヴァハムートは量産機では絶対追いつくことが出来ない程の速度で弾幕の中をくぐり抜ける。一発ミサイルが着弾し爆発した。しかし、当たったのはヴァハムートの周りに出ているバリアのような物で本体は無傷だった。


自分たちが苦労して、死を受けいる覚悟もした最悪の状況をたった一機で覆している姿に、僕達が言葉を失っていると、


チャーリー

「まったく、嫌になるね」


チャーリー分隊長は今も暴れ回ってカルテルを殲滅しているヴァハムートを見ながら言った。


チャーリー

「あんな悪魔にすがらないとまともに部下も守れないなんてなぁ。我ながら情けない。」


ジョン

「あれ、本当に人が乗って操っているですか?あの動きはまるで...」


チャーリー

「"ヴァハムートに意思がある"、なんて思えてくるような動きをするだろ」


ジョンは頷く


チャーリー

「ヴァハムートを初めて見る奴は皆、何故かそう思ってしまう。俺もそうだった、実際そんなこと無くパイロットがしっかり操縦しているんだかな」


さらにチャーリーは続けて


チャーリー

「そして皆、何故かあの悪魔を怖がる。具体的な理由は皆答えることが出来ないが、本能的に触れてはならぬ物だと思ってしまっている。」


結構、ヴァハムートは約20機程のチープアーマーをたった一機で、しかも、5分もかからずに殲滅した。チャーリー分隊長やジョン達は何か喋っていていたが僕には聞こえなかった。冷酷で非道、慈悲の無い圧倒的な力を振りまく悪魔に見惚れていた。


そして聞こえてしまった。

さっきまでチープアーマーだった鉄くずや、乗っていたカルテルのパイロットだった物の肉塊や血が舞う地獄で...


アノ人は...


ヴァハムートは...


無邪気に...


笑ってた。















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