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逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~  作者: 青雲あゆむ
第2章 中原南部平定編
20/43

15.豫州への遠征(地図あり)

初平4年(193年)9月 揚州 九江郡きゅうこうぐん 寿春じゅしゅん


 徐州での手伝いいくさが一段落すると、俺たちは揚州へ戻ってきた。

 まずは揚州刺史の劉繇りゅうように面会し、馬日磾ばじつていの書状を手渡す。


「ふ~む、徐州での戦が終わったと思ったら、今度は豫州よしゅうか。まあ、戦略的にそうなるのは、分からんでもないがな」

「はい、中原に秩序を取り戻すには、避けて通れない場所ですので」


 書状を読んだ劉繇が、ため息まじりに愚痴をこぼす。

 刺史に就任したばかりの劉繇としては、揚州の統治に専念したいところであろう。

 しかし太傅たいふじきじきの要請とあれば、協力しないわけにはいかない。


「それにしてもおぬし、ずいぶんと活躍したようだな。その若さで討逆将軍とうぎゃくしょうぐんに任命されるとは」

「はい、幸いにも優秀な配下に恵まれ、望外の勝利を得られました。馬日磾さまにもご信頼をいただき、感謝の言葉もありません」


 今回の豫州への出兵に当たり、俺は討逆将軍に任命されていた。

 5ほんの雑号将軍とはいえ、正式な将軍位である。

 それは兵士の士気向上にも、つながるだろう。


 ちなみに前生でも、俺はこの将軍位を得ている。

 あの時は、曹操に尻尾を振ったご褒美みたいなものだった。

 それが今生では、曹操を撃退したご褒美なんだから、面白いものだ。


「まあ、おぬしのような勇士の存在は、揚州にとっても喜ばしい。それで、現在編成中の軍を率いるということだが、本当に1万だけで足りるのか?」

「はい、徐州に遠征した2千の兵もおりますし、豫州刺史さまから援軍をいただく手はずになっていますので」

「ま、こちらとしても、負担が少ないに越したことはないから、助かるがな」

「はい」


 揚州では徐州の戦に向け、1万ほどの後続部隊が編成されていた。

 幸いにも徐州は短期で決着がついたので、ならば豫州へ送ろうとなったわけだ。

 徐州から戻った兵と合わせ、1万2千人の軍が豫州へ出向くこととなる。

 これだけでは少し心許ないが、豫州刺史の郭貢かくこうから、援軍を出してもらうことになっている。

 それを合わせれば、なんとかなるだろう。


 ちなみに揚州も、ただで軍を出しているわけではない。

 揚州から中央へ送るべき職貢しょくこう(税金)から、ちゃっかりと経費をさっぴいている。

 そのうえで揚州の名声が高まるのだから、劉繇も積極的に反対しないわけだ。


「よかろう。関係各所には、儂から指示を出しておく。揚州軍の名を高めるためにも、健闘を祈っておるぞ。ただしくれぐれも、命を粗末にしないようにな」

「はっ、ありがとうございます」


 こうして俺たちは、再び戦場へ舞い戻ることになった。

 少しは休みたいところではあるが、中原の状況は予断を許さない。

 戦乱に翻弄される民のため、そして俺たちの出世のためにも、もうひとふんばりしようかね。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


初平4年(193年)10月 豫州 沛国はいこく しょう


 あれから俺たちはいくつかの部隊に分かれ、豫州の沛国を北上していった。

 幸いにも沛国は、それなりに治安を維持する徐州に隣接するため、それほど乱れていない。

 それでも各所に盗賊やら、無法な軍閥が点在するため、それらを討伐することで、治安と連絡を回復していった。


 そして沛国の中西部に位置するしょうに集結し、刺史の郭貢かくこうと対面を果たしたのだ。


「豫州刺史の郭貢である」

「討逆将軍を拝命した孫策 伯符です。太傅 馬日磾さまより、豫州の治安回復に協力せよとのご指示をいただき、参上いたしました」

「うむ、ご苦労である。沛国南部での働きは、すでに耳に届いておる。馬日磾さまのおっしゃるとおり、軍事に長けておるようだな」

「お褒めにあずかり、光栄にございます」


 そんなやり取りをしてから、今後の計画について打ち合わせる。


「やはり最大の障害は、汝南郡よ。各地の豪族が軍閥化するだけでなく、黄巾賊の残党も割拠しておる。郡全体を正常化するには、一筋縄ではいかぬであろう」

「はい、私も伝え聞いております。しかし豫州勢1万を合わせれば、我が軍は2万2千人にもなります。そうそうおくれを取ることはないでしょう」

「う~む、しかし貴殿、本当に2万以上の軍勢をぎょせるのか? 豫州兵と揚州兵は、別々に動かしてもいいと思うのだがな……」

「いいえ、それではいざという時に、全力を発揮できません。強力な敵の多い汝南郡で、兵力を分散する愚は避けるべきかと」

「う~む……まあ、そうかもしれんな」


 豫州兵を俺の傘下につける事については、馬日磾からはっきりと通達してもらっていた。

 そうでもしないと、いざという時に指揮権で揉めるからな。

 兵力を集中運用できなければ、汝南郡の制圧は難しいだろう。


 何しろ汝南には、ただの軍閥だけでなく、黄巾賊の残党も割拠しているのだから。

 そいつらは何儀かぎ劉辟りゅうへき黄邵こうしょうという猛者もさに率いられ、侮れない勢力を保っていた。

 1万やそこらの兵力で対抗するには、難しいものがあるだろう。


 その後もあれこれと渋る郭貢を説き伏せながら、汝南制圧の準備を進めていった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


初平4年(193年)10月 豫州 汝南郡 汝陰じょいん


 軍の休養や再編、訓練などを終えると、俺たちは汝南郡の制圧に取りかかった。

 譙から南下する形で、各地の反乱分子を制圧していく。

 幸いにも汝南東部の治安はまだましな方であったため、大した戦いにはならなかった。


 時には幾つかの部隊に分かれたりしつつ、小さな盗賊や軍閥をつぶし、各地の治安と連絡を取り戻していく。

 そうして順調に進んでいたのだが、やがて大きな障害に突き当たった。


「あれが汝陰か」

「ああ、何儀かぎひきいる賊軍に、城ごと乗っ取られているそうだよ」


 それは汝南郡の南東部に位置する、汝陰じょいん城だった。

 何儀という黄巾の残党がここを攻め落とし、堂々と居座ってるらしい。


「敵の兵数は?」

「8千を超えるらしいね」

「けっこういるなぁ」


 けっこう大きな城なので、敵兵も多いだろうとは思ったが、想像以上だ。

 そこで配下の意見も聞こうと、主な将を集めて軍議を開く。


「――というわけで、皆の意見を聞きたいんだが、何か妙案はないか?」


 しばしの沈黙の後、黄蓋が声をあげる。


「四の五の言わずに、攻め立てればいいと思いますが、何か懸念でも?」

「8千もの敵兵が城に籠もってるんだ。普通に攻めたら犠牲が馬鹿にならない」

「それはそうでしょうが……寿春でやったように、密偵に手引きはさせられないのですかな?」

「一応、試してはみたんだが、無理だった。敗残兵から情報が伝わったのか、警戒が厳しいんだ」


 もちろん、密偵を潜ませるぐらいは考えていた。

 しかし豫州に逃げこんだ袁術たちから、寿春攻略の話が広まったのだろう。

 よそ者の出入りは厳しく管理され、部隊単位での潜入など、とうてい不可能な状況だった。


 すると今度は程普が発言する。


「それならばじっくり腰を据えるしかありませんが、敵の援軍の可能性は?」

「……その可能性は十分にある。すぐ近くではないんだが、黄巾残党の拠点が、いくつかあるらしいんだ」

「やはりですか……あまり手間取っていると、そいつらが援軍に来る可能性が高いと」

「ああ、そのとおりだ」


 これもまた、俺を悩ませている要因のひとつだ。

 ぐずぐずしていれば援軍が駆けつけて、俺たちが挟撃される可能性もある。

 そんな状況を共有しつつ、あれこれと話しているうちに、呂範が手を挙げた。


「あの~、ちょっと思いついたことがあるんすけど?」

今回の舞台は豫洲の沛国と汝南郡。

豫洲は揚州の北かつ徐州の西に位置し、沛国はその東側です。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


最初は豫洲の都である譙へ進軍し、

挿絵(By みてみん)


汝南郡の汝陰まで進出しました。

挿絵(By みてみん)



地図データの提供元は、”もっと知りたい! 三国志”さま。

 https://three-kingdoms.net/

ありがとうございます。

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