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逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~  作者: 青雲あゆむ
第2章 中原南部平定編
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幕間: 曹操は雪辱を誓う

 俺の名は、曹操そうそう 孟徳もうとく

 大宦官 曹騰そうとうの孫にして、兗州えんしゅうを統べる者よ。


 今でこそこのような地位にあるが、こうなるとは思ってもいなかった。

 若い頃は騎都尉として黄巾賊と戦ったし、済南のしょうとして政治に携わったこともある。

 このまま官吏として栄達を遂げるのも一興かと思っていたが、時代がそれを許さなかった。


 事は大将軍 何進かしんの暗殺に始まり、やがて董卓という田舎者が朝廷を牛耳る事態に陥ったのだ。

 そのようなことは到底、看過できぬので、俺は袁紹たちと共に反旗を翻す。

 あいにくと手勢が少な過ぎたうえに、味方に戦意が乏しいせいで、董卓を討つことは叶わなかった。

 挙句、反董卓で結束した連合軍も、自然解消する有り様だ。


 その後、太守として東郡をまとめていると、とうとう董卓が暗殺された。

 その混乱が各地に伝わり、黄巾の残党があちこちで暴れだす。

 やがて青州の黄巾賊に襲われていた兗州に、俺は牧として招かれた。


 ただちに敵の撃退に当たったが、非常に苦しい戦いになった。

 なんとか敵を打ち破り、さらに追撃を掛けていると、敵の大軍が降伏してくる。

 彼らを許した結果、俺は青州兵という戦力を手に入れた。

 この調子でさらに勢力を広げれば、生き残りを確実なものにできるのではないか?


 そう思っていたのだが、にわかに周辺がきな臭くなってきた。

 まず袁術が俺に歯向かい、陶謙や公孫瓚がそれに同調する動きを見せる。

 一時は苦しい状況に追いこまれたが、全ての戦いに勝ち、袁術を追い払うことにも成功した。


 これでひと安心と思ったのも束の間、またもや陶謙が蠢動しゅんどうしはじめた。

 闕宣けっせんという手下を使い、兗州へ手を伸ばしてきたのだ。

 そこで警戒を強めていたらヤツめ、とんでもないことをしでかした。


 俺の親父どのを、殺したのだ。

 俺の、親父どのを……

 掛け替えのない、家族を……

 許せんっ!


 俺はただちに詰問状を送りつけ、ヤツの存念を問うたが、ノラリクラリととぼけるだけ。

 よろしい、戦争だ。

 全力で攻め入って、奴らを族滅してやる!



 俺は3万もの軍勢を仕立てると、ただちに徐州へ攻めこんだ。

 まず広戚こうせきを血祭りに上げると、陶謙めは彭城で迎撃態勢を整えているという。

 ならばこちらもひと工夫してやろう。


「曹仁よ。貴様には1万の兵を預けるゆえ、傅陽ふようを攻めよ」

「お任せください。あえて兵を分けるということは、私が彭城を側背から攻めるのですな?」

「うむ、そのとおりだ。できるだけ早く傅陽を落とし、彭城の東へ回りこめ。貴様ならやれると信じておるぞ」

「フハハッ、必ずやそのご期待に応えてみせましょう」


 さすがは曹仁、話が早いわ。

 この男ならば、やってのけるであろう。

 俺は正面から彭城を攻めて、陶謙の気を引いておけばいい。



 その後、さらに南進してりゅうも蹂躙すると、我らは彭城の北側に布陣した。

 小手調べに攻めてみると、想像以上に固いようだ。

 敵もどうやら、我が軍と同等の兵力を集めているらしい。


 あちらは城を盾にできる分、こちらが圧倒的に不利だ。

 ここはしばらく攻め気を見せつつも、犠牲を抑える戦いに徹するべきだな。

 曹仁よ、頼むぞ。



 そうして苦戦を続けるうちに、朗報が舞いこんできた。


「別働隊より伝令。曹仁さまは見事、傅陽を落とすことに成功したそうです。今後は部隊を編成しだい、彭城へ向かうとのこと」

「さすがは曹仁だ。ねぎらいの言葉と、連絡を密にするよう指示を送れ」

「はっ!」


 ククク、目論見どおりだ。

 これで陶謙に吠え面を、いや、ヤツの首を挙げてやるわ。

 見ておれよ。




「曹操さま! 後方に敵らしき部隊が現れました! 旗の銘は”孫”です」

「なにいぃ!!」


 しかし事は思いどおりには進まなかった。

 曹仁の登場を今か今かと待っていたら、背後に敵らしき軍勢が現れたのだ。

 しかも旗には”孫”の文字があるという。


 ”孫”といえば孫堅だが、ヤツは死んだはず。

 その残党が袁術の指示で、出向いてきたのか?

 いいや、今はそれどころではない。


「大至急、典韋てんいの部隊を向かわせろ。退路を確保するのだ」

「はっ」


 これはまずいぞ。

 退路を断たれそうになれば、兵が動揺する。

 むう、早くも一部が騒ぎはじめた。

 こうなると、正面も……


「彭城から敵が進出する動きがあるようです!」

「くっ、于禁に防がせろ。我々は撤退に掛かる」

「……はっ!」


 くそっ、なんたる失態か。

 敵を挟撃するはずが、逆に挟撃されるとは。

 陶謙がピンピンしているからには、曹仁の部隊は撃退されたのであろうな。


 しかし曹仁は、8千もの兵を率いて南下したはず。

 それを撃退するような余裕が、陶謙にあったとは思えないのだが。

 やはり孫堅の残党が、援軍に来ていたということか。

 まあ、今はそんなことより、生き延びることが優先だ。




 その後の撤退戦は、悲惨なものだった。

 于禁のふんばりで生還は叶ったものの、軍勢の半数を失うという体たらく。

 幸いにも曹仁が生還してきたので、事情を問いただした。


「やはり孫堅の残党か?」

「はい。敵は我が隊の半分程度だったにもかかわらず、巧みな用兵に翻弄されました。しかも敵将に楽進を討ち取られてしまい……」

「なんと、楽進がか? その者の名は?」

「孫策 伯符と名乗ったそうです。そいつは成人しているかどうかの、若者だったとか」

「孫策? 聞いた覚えはないが、孫堅の係累であろうな。ひょっとしたら息子か」

「その可能性はあります」

「う~む」


 半分の軍勢で曹仁を負かし、楽進をも討ち取ったなどと、ちょっと信じがたい話だ。

 そんな剛の者がいれば、少しは俺の耳にも入っているだろう。

 かなり若いということは、相当な切れ者が背後にいる可能性が高いな。


 今回は素直に負けを認めるしかあるまい。

 やはり世の中は広いということだ。

 しかしこのまま引き下がる俺ではない。

 必ずや体勢を立て直して、親父どのの仇を取ってやるのだ!

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