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逆襲の孫策 ~断金コンビが築く呉王朝~  作者: 青雲あゆむ
第2章 中原南部平定編
15/43

11.徐州への援軍(地図あり)

第2章 中原南部平定編に入ります。

初平4年(193年)7月 揚州 九江郡 寿春


 見事に寿春を陥落させた俺たちは、次々と周辺地域を掌握していった。

 そんな中で袁術は逃亡に成功し、豫州よしゅう方面へ逃げている。

 しかしその軍勢は著しく目減りし、目ぼしい武将も討ち取ったので、当面の脅威はないと思われた。


 ちなみにこの頃の豫州は、州としてのまとまりに欠く状況だ。

 一応、名目上の太守や刺史(州知事)はいるものの、各地で黄巾賊の残党や軍閥が割拠しており、曹操や袁紹に対抗するような余裕はない。


 それに対し、徐州では牧(軍権を伴う州知事)である陶謙とうけんがしっかりと州内を掌握し、朝廷への恭順姿勢を見せていた。

 その陶謙と袁術を協力させ、曹操や袁紹に対抗する、というのが当初の朝廷の戦略だった。

 しかし前生では、袁術が馬日磾ばじつていを拘束して脅迫したため、その戦略は瓦解がかいする。

 その結果、曹操たちは勢力を伸ばすことができた、という一面もある。


 今生ではその原因である袁術を追い払ったものの、まだまだ勝負はこれからだ。

 そこで今後の戦略を話し合うため、俺たちは馬日磾と向かい合う。


「寿春の攻略、見事であった。特に孫策の働きは、大きかったと聞く」

「はい、ありがとうございます。しかし勝負はこれからが本番でございましょう」

「うむ、そのとおりだ。知ってのとおり、曹操と陶謙の関係が悪化している。おそらくまた戦になるであろうが、陶謙だけで勝てる見込みは薄い。そこで大至急、揚州から援軍を出したいと思うのだが、どうだろうか?」


 陶謙は数年前から、袁紹・曹操陣営と対立してきた。

 しかし今年の始め、馬日磾らの仲介で和睦が成立し、表向きは平穏を保っている。

 ところが陶謙の影響下にあった闕宣けっせんという軍閥が、兗州えんしゅうの一部を占拠して天子を自称した。


 おまけにその過程で、曹操の父 曹嵩そうすうを殺してしまったのだからたまらない。

 陶謙はただちに闕宣を討伐し、曹操に弁明の使者を送ったのだが、それで曹操の怒りが収まるはずもない。

 準備が整いしだい、曹操の軍勢が徐州へなだれ込むと見られていた。


 そしてその先には、大虐殺が起こることを俺たちは知っている。

 そんな悲劇を回避するべく、周瑜が提案を持ちかけた。


「その類まれなる武略で兗州を制した曹操には、陶謙さまも苦戦することでしょう。援軍を送ることには賛成です。しかし大軍を送るには時間が掛かりすぎますので、精鋭部隊を先行させてはどうでしょうか?」

「精鋭部隊とは、どれほどの規模か?」

「孫策たちを中核とした、2千人ほどの部隊です」

「ふむ……たった2千で役に立てるかな?」


 疑わしげな顔の馬日磾に、周瑜が自信満々に答える。


「徐州も兵数だけで見れば、曹操に劣るものではないと存じます。ここで必要なのは、経験豊富な将と、中核となる精強な部隊であるかと。我らが孫軍団は、かの孫堅将軍の下で戦ったつわものの集まりなれば、必ずやお役に立てましょう」

「ふむ、そういうものか……そうなると、貴殿らの武勇を保証するため、儂も行かずばなるまいな」

「ご賢察、恐れ入ります。そうしていただければ、百万の味方を得るに等しいかと」

「ふははっ、それはちと過大評価だが、できることはしよう。そなたらも、今一度わしに力を貸してくれい」

「「「ははっ」」」


 こうして徐州への援軍派遣と、精鋭部隊の先行が決まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


初平4年(193年)8月 徐州 彭城国 彭城ほうじょう


 あれから半月ほどで、俺たちは2千人の部隊を率いて、徐州へ駆けつけた。

 すでに曹操の軍勢は出陣しているらしく、徐州牧の陶謙はこの彭城で、防戦の指揮を執っていた。


「おお、馬日磾さま。わざわざのお出まし、ありがとうございます」

「うむ、曹操の始末をつけるのも、儂の役目だからな。ついては揚州からの援軍を紹介しよう」


 そう言って馬日磾は俺たちを手招き、陶謙に紹介した。


「彼が揚州軍を率いる孫策で、その横が周瑜だ。どちらも若いが、年に似合わぬ戦巧者である」

「はじめまして。孫策 伯符と申します。さきの長沙太守 孫堅が我が父になります」

「周瑜 公瑾と申します。廬江周家を代表して、まかり越しました」


 俺たちを見た陶謙は一瞬、残念そうな顔を見せたが、すぐに表情を取り繕った。


「お、おお、そうか。貴殿が孫堅将軍のご子息か。さらに廬江周家が後ろ盾とは、実に心強い」

「はい、我々は若年ながら戦の経験を積んでおりますし、さらに父と共に戦った猛者もさも多くおります。きっとご期待に応えられましょう」

「うむ、うむ。期待させてもらうぞ」


 おそらく、あまりに若い俺たちを不安に思っているのだろうが、陶謙はそれを押し隠してみせた。

 さすがは徐州牧になるほどの男だ。


 その後、話は徐州をいかに守るかに移る。


「このように敵はふた手に分かれたので、傅陽ふようにも兵を配置しておる」

「ふむ、敵の兵力はいかほどでしょうか?」

「この彭城に向かっている本隊が2万、傅陽に向かう別働隊が1万ほどと聞く」

「それに対して、こちらの兵力は?」

「この彭城に2万、傅陽に5千じゃ」

「……5千で傅陽は耐えられましょうか?」

「あちらは呂由りょゆうという剛の者に任せてある。よほどのことがなければ、大丈夫であろう」

「そうですか……」


 そんな話を聞きながら、俺と周瑜は視線を交わす。

 俺たちの記憶では、陶謙はこの戦で大敗していたはずだ。

 どれだけ曹操が戦に強かろうと、同数の城攻めで勝てるとは思えない。

 そうすると、別働隊が先に勝ちを得て、側背から陶謙を襲ったのではなかろうか。


 周瑜もそう考えたようで、我が軍の立ち位置を提案する。


「城を盾に戦えば、本隊の攻撃はそれなりにしのげましょう。我々は傅陽ふようの様子を探りながら、別働隊の奇襲に備えたいと存じます」

「ううむ……たしかに不安はあろうな。よかろう。そちらの守りは任せるので、よろしく頼む」

「かしこまりました」


 こうして当面の方針が決まり、席を立とうとする陶謙に、周瑜が声をかけた。


「ところで陶謙さま。曹操とは別に、ひとつ気にかかることがあるのですが」

「む? それはなんであろうか?」

「はい、ここへ来る途中、下邳かひで不穏な噂を聞いたのです」

「下邳で不穏な噂? それはどのようなものか?」


 不穏な噂と聞いて顔をしかめる陶謙に、周瑜が先を続ける。


「はい。聞けば窄融さくゆうというお方が、下邳で権力を握っているとか。しかしその振る舞いには目に余るものがあり、領内が混乱しているとの噂でした。陶謙さまはそれについて、何かご存知でしょうか?」

「むう……窄融は儂と同郷の者で、たしかに南部で食料の運搬などを任せておる。それが目に余るとは、具体的にどのような話かな?」

「あくまで噂ですが、窄融どのは南部で物資を横領し、それをとがめる者を殺害しているらしいのです。さらに横領した物資を使って仏教信者を集め、贅沢の限りを尽くしているとか」

「なんと! そのようなことが……」


 俺の前生でも、窄融とは因縁があった。

 ヤツは劉繇りゅうようの下で一軍を構えていて、丹陽たんよう郡で俺とぶつかったことがある。

 そしてその前は徐州で陶謙の世話になっていたらしく、かなりの悪さをしていたと聞く。

 このままヤツが揚州へ流れてくれば、いらぬ混乱を引き起こす可能性が高い。

 それを防ぐべく、俺も陶謙に進言した。


「陶謙さま。周瑜の言うことは噂ですが、それが事実だとすれば、由々しき事態だと考えます。下邳周辺で大規模な横領が行われていれば、それだけ兵糧や兵員の集まりも悪いはず。今回の戦にも、少なからず影響を与えているのではないでしょうか?」

「……言われてみれば、下邳や広陵こうりょうからの物資が少なくなっておるかもしれん。今回の戦が収まりしだい、調べてみよう」

「はい。もちろん調査は必要でしょうが、先に窄融の身柄を押さえることをお勧めします。今回の戦を嫌って、逃亡する可能性が高いと思われますので」

「むう、それもそうか……分かった。南部へ指示を出しておこう」


 ようやく事態の深刻さに気づいた陶謙が、提案に乗ってきた。

 おそらくこれで、窄融が揚州へ来るのは、避けられるだろう。

 あんなクソ野郎は、騒動の素になるだけだからな。


 あとは目の前の戦に、集中するだけだ。

今回の舞台は徐州 彭城国 彭城。

徐州は揚州の北に位置し、彭城国はその西端にあります。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


そして曹操は北側の広戚こうせきから彭城へ向けて進軍中。

(別動隊は傅陽ふようへ)

挿絵(By みてみん)


地図データの提供元は、”もっと知りたい! 三国志”さま。

 https://three-kingdoms.net/

ありがとうございます。

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