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それでも俺は妹が一番可愛い。  作者: 上羽みこと
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幕間【魔王城より愛を込めて】

幕間【魔王城より愛を込めて】


メイが勇者としての厳しい鍛錬に明け暮れている頃。

所変わってここは魔界。

数百年の昔、かつての魔王が勇者によって討ち倒され統率者を失ったことで魔界は無法の地へと変わり果てた。

そんな魔界に十数年前、新たなる支配者として現れたのが現在の魔王、魔王アルシエラである。

アルシエラは理外とも呼べる圧倒的な力とカリスマ性で瞬く間に魔界を統一し、その頂点へと君臨した。

魔界の支配者たる絶対的君臨者、魔王が住む魔王城は今もなおその半分近くが氷に閉ざされている。

それをやってのけた魔王が今、魔王城の玉座にてだらけた姿勢で座っている。



「……じい。これの続きってまだ?」

玉座をソファ代わりに寛ぎながら何やら本を読んでいるのは、明らかに魔王のイメージにはそぐわない10歳ほどの少女。

しかも、キャミソールと下着だけという物凄い薄着な格好をしている。

しかしその長い銀髪の頭部には、氷でできていると思わしき2本の立派な角が生え、背や腰にも翼と尻尾があった。


「ええ、まだ出ていません……」

じいと呼ばれたのは、龍のような頭が特徴的な年老いた魔族の男性。

玉座の直ぐ側で佇む姿はどこか、執事のようでもあった。


「そっかぁ……はぁー……」

その赤い瞳で数回瞬きすると、ため息をつきながら本を閉じる。

そしてぐっと伸びをするように、腕を上へと伸ばした。


「……アルシエラ様。そろそろお着替えください……もうすぐ会議の時間ですぞ。」

じいが魔界時計を確認して、少女へと声をかける。


「え?今日お休みじゃないの?聞いてないんだけど……」

文句を垂れるように頬を膨らませる少女、もとい魔王アルシエラ。


「昨晩緊急で明日に会議の予定が入ったとお伝えしましたが……」

スケジュール帳のような物を開きながら、確認するじい。


「えー……そうだっけー?はぁ、仕方ないなぁ……」

アルシエラはめんどくさそうに立ち上がると指を鳴らす。

すると一瞬、アルシエラが氷漬けになったように氷に包まれた。

そしてそれが砕け散ると中からは黒を基調としたデザインの華麗な衣装に身を包んだアルシエラが現れる。

その様はもはや着替えというよりは変身に近かった。


「で、今日の議題は?」

再び玉座に腰掛けると、何かを要求するようにじいへと手を伸ばすアルシエラ。

じいは即座にその手に本日の会議内容が書かれた紙を手渡す。


「……ふーん。またこいつらかぁ……なっまいきぃ~」

今回の議題は、魔界某所で発生している旧魔王派を唱える過激派によるテロの被害とその対処について。

アルシエラは内容に軽く目を通すとポイッと紙を投げ捨てる。

じいは慣れた様子でその紙を拾うと、玉座の側に垂れる紐を引き御簾みすを下ろす。

間もなくして、玉座の間の床に描かれた魔法陣が輝き4つの人影が現れる。


「よくぞ参った、魔王軍四天王よ。さて、本日の緊急会議の内容だが──。」

現れた四天王に対し、じいは御簾みすの中から司会進行を始める。

一方でアルシエラはその様子を退屈そうに聞いていた。


「……という感じにしたいかと思うのですが、よろしいですかな?魔王様」

確認を取るようにアルシエラの方を見るじいに対し、アルシエラは適当に手を振って答える。

ものすごくどうでも良さそうだ。


「では取り急ぎ、旧魔王派のアジトと見られる場所へ調査を……ん?どうされましたか魔王様?」

進行を続けようとするじいに対し、アルシエラは手招きをして何やら耳打ちをする。


「え?ええ、恐らくここが奴らのアジトになっているかと思われますが」

魔界の地図を見せながら説明するじい。

アルシエラはその地図で場所を把握すると、静かに手を高く掲げ指を鳴らした。

突然の魔王の行動に四天王達が緊張の面持ちで見守る中、突如として遠くから地響きのような音が聞こえてくる。


「な、なんだ!?地震か!?」

じいが慌てて、玉座にしっかりと掴まる。

やがてその音が収まると、一人の魔族の兵士が慌ただしく玉座の間に飛び込んできた。


「か、会議中失礼します!至急ご報告申し上げたい事が!」

四天王と魔王勢ぞろいという場に、かなり緊張している様子の兵士。


「な、何事だ!」

じいがやや厳しい声で兵士へと問いただす。


「た、たった今魔界南方地域にて、”巨大な氷の槍”の着弾が確認されました!現地は壊滅的な状況で、詳しい被害状況などは今確認中であります!」

敬礼をしながら、そのような報告を上げる兵士。

それを聞いたじいと四天王たちは、まさかと言うようにアルシエラの方へと目を向けた。


「ま、まさかとは思いますが魔王様……困りますな!そのような事をされては!」

大慌てのじいがアルシエラへと詰め寄る。


「何が問題だ?これであいつらは一網打尽であろう?」

どこか楽しげに言うアルシエラに、じいは頭を抱えた。


「と、ともかく会議は一時中止とする!そして状況が分かり次第追って連絡する事とする!以上だ!」

アルシエラの身勝手な行いによって、会議は中断となった。

やがて四天王達は再び魔法陣で帰っていく。


「……アルシエラ様!」

兵士と四天王達が全員帰った後で、じいは孫を叱りつける祖父母のような声でアルシエラを呼ぶ。


「えーだってこうしたほうが絶対……」

怒られ、少し不貞腐れたような顔で言い訳をするアルシエラ。


「なりません!ともかく、私は事態の確認をしてまいりますのでくれぐれも余計な事は……!」

険しい剣幕でアルシエラを叱るじい。


「あーはいはいわかったって……」

だがアルシエラ全然反省をしていないような、適当な返事をする。

その上さっさと行け、というようにじいを手で追い払う。


「まったく……困ったものですな……!」

じいはぷりぷりと怒りながら、どこかへ去っていった。


「はーぁ、つまんないの……ねぇ」

アルシエラは再び薄着姿へと戻ると、物凄くだらしない姿勢で玉座に座りながら、かかとで玉座を叩く。

すると玉座の影から、ぬうっと人影が現れる。


「……どうしたんだ、雪?」

アルシエラを雪と呼び微笑むその人影は、一見すると人間の男性のように見える。

しかもその格好はこの世界ではあまり見ないような、所謂学生服であった。


「聞いて()()()()()、あのね……」

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