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それでも俺は妹が一番可愛い。  作者: 上羽みこと
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幕間【旧魔王派】

幕間【旧魔王派】


時は少し遡り、地獄門防衛戦から4()()()

アルシエラがもう一度兄へ会いに行くと決意した日の翌日。

その日アルシエラは朝から、兄に会うための”お兄ちゃんもメロメロめちゃカワ最強コーデ”を決めるべく鏡の前で悩んでいた。


「魔王様、あんなにおしゃれして誰と会うつもりなのかしら……?」

「やーね、決まってるじゃない。()()よ恋人!」

「えぇ!?()()()()()に意中の人が……?」

アルシエラへ渡すための服を持ってずらりと並ぶ魔族のメイド達。

ひそひそとおしゃべりするのが好きなのは、どの世界も変わらないようだ。


「うーん……このフリフリも可愛いけど、ちょっと()()()()()()()かも……次!」

そう言って次の服を要求すると、並んでいたメイドが素早く手渡してくる。


「それではこちらはいかがでしょう。今魔族の若い女の子達の間で流行りの」

アルシエラはメイドのその説明を聞き終わる前に服を奪い取り、鏡の前で自分の身体に重ね合わせて確認する。

だがまたしても、気に入らなかったようだ。


「うーん……次!」

「ではこちらの()()()()()()()ファッション」

「(お兄ちゃんの)好みじゃない!次!」

そんな調子で次から次へとメイド達の提案する服を切り捨てていくアルシエラ。

切り捨てられたメイド達は、少ししょんぼりとしながら魔界中からかき集められた女性向けの服の山から次の服を探し始める。


「こちらは淫魔サキュバス達のトレンドの」

()()()()()()()()!次!」

そうして不採用となった服の山が、集められた服の山より大きくなろうかと言う頃。

一人のメイドが服ではなく腕輪のような物を持ちアルシエラの後ろへと立っていた。


「もう!次!」

「それでは()()()はいかがでしょう、()()()。」

()()()のメイドがガチャリと音を立てて、アルシエラの手首に銀色の()()をはめる。

腕輪には紫色の宝石のような物がついており、どこか禍々しい雰囲気を放っていた。


「……ん?何これ。服じゃないんだけ、ど……?」

自分の腕に謎の腕輪がはめられた事に気がついたアルシエラが、これを持ってきたメイドの顔を確認してやろうと振り向く。

だがその途端に身体からガクンと力が抜けるような感覚に襲われ、アルシエラは床へと膝をつく。


「これは()()。お気に召しませんでしたか?ですが()()()()()()()()()。」

そう言ってもう片方の腕にも同じ腕輪をはめてくるそのメイドは、よく見れば()()()()を着てマスクをしただけの()()()()だ。


「アンタ……誰……!?()()()()()()じゃ無い……!?」

アルシエラは床へと倒れながら、その怪しげな女装魔族を睨みつける。

突然の事態にざわめくメイド達。


「ハハ……よく()()()()ですよ、魔王様。……まぁもうじきそうとは呼べなくなりますがね。」

マスクを外し、髭面で不敵な笑みを浮かべながらその男性魔族はアルシエラの首へと、腕輪に似たデザインの首輪を取り付ける。

その瞬間、左右の腕輪と首輪を相互に繋ぐような()()()が現れアルシエラを拘束する。


「何、これ……っ!全然、()()……ッ!」

アルシエラは床へ這いつくばりながらその装飾品類を魔法で破壊しようと試みるが、いつものような力が出ない。

どうやらこの腕輪と首輪には、アルシエラの力を封じる効果があるようだ。


「おいテメーら!」

そしてその男性魔族が着ていたメイド服を脱ぎ捨てると、部屋の外から無数の武装した魔族達が押し入ってくる。

だがその者達の装備はバラバラで、軍隊と言うよりはどちらかと言えば()()()のような格好をしていた。

瞬く間にメイド達は床に伏せさせられ、制圧が完了する。


「我ら()()()()、たるみきった魔界を改革する()()()()()だ!いつぞやは世話になったなぁ、クソガキ。」

旧魔王派を名乗るゲリラ集団の、そのリーダーと思わしき魔族が怪しいメイドの正体だったのだ。

その男性魔族はアルシエラの背中を踏みつけ、ぐりぐりとかかとで踏みにじる。


「このッ……!」

アルシエラが殺意を剥き出しにすると、その頭部や背中へ氷のツノと翼が形成され始める。

だがその生成スピードさえも、いつもに比べてかなり遅くなっている。


「おおっと、怖い怖い!……おとなしくしてな。テメーは()()()()()のための()()になんだからよ。」

そう言って男性魔族は形成されかけたアルシエラの氷の角を蹴りで無理矢理にへし折る。


「おい!このガキ()()()()()の牢屋にぶちこんどけ!噛みつかれねーように気をつけてな!ハハハハ!!」

男性魔族がアルシエラの頭を乱暴に掴んで立ち上がらせると、仲間の魔族へと突き飛ばす。

普段ならばこんな奴ら数百人いたって瞬殺できるはずなのだが、やはり力を封印されてしまったようだ。

そしてアルシエラは旧魔王派の手によって、浮遊城へと囚われる事となった。


わざわざ旧魔王派がそうしたのは、封印した()()()()をさせないためだ。

無敵の強さを誇るアルシエラも実は、無限に力を使えるというわけではない。

通常の魔族が力を維持するために定期的に魔界に戻る必要があるように、アルシエラもまた魔界という環境の恩恵を受けている。

そのため地上世界ではその補給ができず、命には関わらない物の徐々にその超人的な力が衰えて行ってしまうのだ。


「っぐぅ……!これさえなければ()()()なんか……っ!」

雑に浮遊城の牢屋へと投げ込まれたアルシエラは、悔しさで下唇を噛みながら必死に門番の魔族を睨みつける。

引きちぎってやろうと必死に鎖を引っ張るが、アルシエラのか細い腕ではそれもできそうにない。


もう少しでまたお兄ちゃんに会いに行けたのに。絶対に……絶対に()()()()

だけどきっとお兄ちゃんが助けに来てくれる。だってお兄ちゃんは私の……。


◆◆◆


アルシエラが牢へと入れられていた頃。

魔王城では、旧魔王派のリーダーらしき男性魔族がジーニアの部屋に居た。


「……というわけでジーニアさんよ、もちろん俺達に協力してくれるよな?先代魔王様の側近だったアンタがいれば、俺達は怖いモン無しだ!アンタだってあんな()()()()に無理やり付き合わされて、嫌気が差してたんだろ?」

男性魔族はジーニアの椅子にふんぞり返って座り、行儀悪く机の上に足を乗せながらジーニアへと語りかける。

ジーニアは元はと言えば先代魔王に仕えていた側近。

先代亡き後荒れに荒れた魔界を見かねて、新たな魔王という傀儡にすべくしてアルシエラを呼んだのだ。

もし本当に先代魔王が復活し、再び魔界があの頃のような繁栄を取り戻すなら、その提案に乗らない手は無いはずだ。


「……しかし本当に先代魔王様を()()()()()()などできるのですか?わたくしが知る限りそのような方法は……。」

もしそんな方法があったなら、自分がとっくに試しているはずだと疑いの目を向けるジーニア。

ジーニアだってここ数百年何もしてこなかったわけではない。

いくつもの方法を探り続け、辿り着いた果てが新たな魔王(アルシエラ)を用意するという方法だったのだ。


「ハハハ!アンタが知らないのも無理はねぇ……なんせその方法は、皮肉な事にあのクソガキが投げてくれたでっけぇ氷のおかげで見つかったんだからな!」

そう言うと男性魔族は、その復活の秘術発見に至った経緯を説明し始める。

あの時、魔界の南方地域に存在した旧魔王派のアジトにて次なる作戦の会議を行っていた男性魔族達。

だがそこへ理不尽とも言えるほどの氷槍という暴力を打ち込まれ、アジトは壊滅し仲間はバラバラ。

奇跡的に生き延びた旧魔王派のメンバーたちは、アルシエラへと復讐を誓った。

しかし同時に、その時の衝撃によって地下深くに埋まっていた()()()()()()()()が掘り起こされたのだという。

そこから発見した文献を元にして秘術の再発見に至り、その秘術のためにアルシエラを生贄とすべくチャンスを伺っていたらしい。


「そのような……。しかし、その肝心の()()はどうするのです?先代の魔王様の身体はとっくの昔に火葬されているのですぞ?」

復活の秘術のためには強大なエネルギーを持った生贄と、復活させるための触媒となる対象者の身体の一部などが求められる。

アルシエラをその生贄にするとしても、触媒がなければそれも無意味だ。


「ハハハ!心配すんなよ!……俺には()()がある。アンタだって知ってんだろ、先代魔王様の死体にゃ()()()()()()って事をよ。」

男性魔族は自分のこめかみを指で叩きながら、不敵に笑う。

確かに先代魔王は先代勇者との戦いの果てに、その討伐の証として勇者に頭を持ち去られたと記録されている。

もしその頭部が、今も地上世界あちらにあるとするのなら。


「アンタらの頑張りのおかげで地獄門ヘルズゲートはこっちのモン。しかも()()()()()までついてると来てる!どうやら運は、完全に俺達の方へ来てるみたいだぜ?……だからアンタも、この勝ち馬に乗らなきゃ損だろ!」

両手を広げて楽しそうにそう語る男性魔族。

ジーニアはそんな男性魔族を見ながら、アルシエラの顔を思い浮かべていた。


「……わかりました。先代魔王様復活のため、このジーニア・オウリュ……()()させて頂きましょう。」

やがて小さく息を吐くと、ジーニアは旧魔王派からの提案に同意する。


「ハハ!そうこなくっちゃなぁ!魔界の夜明けはすぐそこだァ!ハハハハァ!!」

大笑いする男性魔族を見るジーニアの表情は、やはりどこか複雑そうであった。

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