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夢想の創造 〜幻想世界に生きる〜  作者: 龍の使い
第一章 怪物たちの静かな胎動
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夢幻の杜 加入

 

 刻は結局、そこまで重症でもなかったため、ここにいる医師だけで対処できると言う事で、このまま研究所で2日間を過ごしていた。


 その間に秀がもう一度訪れ、混乱を避けるため今回の事件を公言しないでほしいとお願いされ、刻もそれに了承する。


 療養中は賢人と研究室の研究員たちは代わる代わる交代しながら刻の世話をしていた。


 刻もある程度自分でできる事はしようとしていだが、彼らが全力で阻止し、もうされるがままであった。


 そして2日後、怪我が治ったためここから出ていくことが決まった。


 着ていた服はインヴィジブルによってボロボロにされていたため、いつの間にか用意されていた服に着替えて賢人たちに挨拶をし研究所を出るとそこには秀がいた。


 事前にここで待っている旨を伝えられていたのだ。


 秀と合流した刻は秀が乗ってきた車に乗って刻の家へと向かっていく。


 刻は夢幻の杜に入隊するにあたって異能大隊から借りている西方基地にある住居に移住することが決まっていた。


 初めは西方基地に移住するという提案を固辞していた刻であったが、距離の問題から秀に説得され、最終的に刻が折れた形となった。


 そして、今住んでいる家から荷物を運ぶのを秀が手伝いを申し込んでくれたのだ。


 刻の家は内界の西の端にあるため西方基地への距離も近く、持っていく荷物も少なかったが、それでも一人で持っていくのは大変だったのでありがたかった。


 道中刻が第一異能機関を長期間休む連絡を秀の方でしたという話をされた。


 そのことには刻はたいそう驚いた。


 てっきり学校に通いながら夢幻の杜で働くものだも思っていたからだ。


 秀曰く今の学校で学べることなんてそんなに重要では無いそうなのだ。


 政府と関わりがある人が言っていいことなのかと思ったが、刻もちょっと実感していたりする。



 〜〜〜〜〜



「…なんか、人少なくないですか?」


 異能大隊いのうだいたい西方基地についた刻が一目見ての言葉がこれである。


 異能大隊いのうだいたいの基地だけあって、大きくて立派な建物である。

 だが、建物の規模と比べて人が少ないため少し寂れた印象があった。


「海に面してる東方基地なんかはもっと人が少ないよ。その分建物も小さいけど。一番人が多いのは北方基地だね。あそこは新宿の内界で唯一外と繋がっているから」


「…外ですか?」


「そう、外界のさらに外側の世界。元々北側にも外界はあったんだけど、一年くらい前に『時狂じぐるい』っていう事件があって外界の人たちが全員その周辺から去っていったんだよ」


時狂じぐるい?」


「あぁ。俺も調査を担当したんだけど今はそこで超常現象があったと思ってもらって大丈夫だよ」


 そう言って秀は基地の中に入っていき、刻もそれに続いて入る。


 基地の中も外観同様すこに寂れた印象であった。


「ここが今日から君の部屋となるところだよ」


 そう言いながら一つの部屋に入っていく。


 そこは刻が暮らしていた部屋と比べると部屋の大きさはあまり変わらなかった。


 一回り小さくなったくらいか。


 あそこら辺は緩衝地帯に隣接していたため広い割に安かったのだ。


 だが、前の部屋と違い設備などは今の最新型が使われていた。


「気に入っていただけたかな?」


「本当にいいんですか?こんな部屋」


「いいよ。ここの基地、部屋が余っているしね」


 かなりいい部屋に少し躊躇う刻だが、秀にそう言われ、もう決まったことだと言うことなのでここで暮らすことの覚悟を決めた。


「それじゃあ、時間になったら会議室まで来てね。そこで君の仲間も紹介するよ。場所はさっき教えたところだから。それまでは自由にしていいよ」


 そう言い残し秀は去って行く。


 それを見届けた刻は時間までに持ってきた荷物を配置して、軽く掃除をした。


 するとすぐに時間になったので部屋を出て本部へと向かっていた。


 会議室の場所は部屋に行く前に案内されていたので迷うことはない。


 その道中、目の前にある扉が開き、一人の青年が出てくる。


 その青年は少し紫がかった黒髪で、刻より一回り大きな体をしていた。


「ん?君も夢幻の杜の隊員なのか?」


「は、はい。今日から加入することになります黒鉄刻です」


 突然現れた人に困惑しながらも挨拶をする刻。


「俺の名前は高倉たかくらこう。あんたと同じ新人隊員だ。高倉たかくらでもこうでもこうちゃんでも好きな様に呼んでくれ」


「…じゃあ、高倉さんで」


「そんなさん付けなんて他人行儀じゃなくていい。呼び捨てで呼んでくれよ」


「え、あ、はい。よろしく高倉」


 刻はグイグイくる巧に戸惑いながらも何度か返事をする。


「おう!よろしくな!」


 そう言いながら手を差し出してくる巧に刻も手を差し出し握手をする。


「よし!じゃあ一緒に行こうか」


 そう言いながら巧は歩いていき、刻もその後ろについていく。


 すぐに会議室の部屋に着き、そのまま入室する。


 部屋には秀の他に青年と女性の二人がいた。


「お!来たね。あとは烈火が連れてくる子だけだ」


 青年の方は少し背が小さく黒髪の短髪で、オドオドとしており、女性の方は吊り目に長いストレートの金髪をポニーテールで纏めていた。


「好きな所に座るといい」


 秀がそう言ったため二人も席に座る。


 席は上座にある二つの椅子のうち一つに秀が座り、秀が座っている側に巧と刻が、巧の前に金髪の女性、刻の前に黒髪の青年が座っている。


 そして刻と青年の隣にもまだ席がある。


 刻たちが着席したあと、誰も喋ることなく静寂が訪れる。


 刻は気まずいと思っていたが、彼にはこんな空気で喋る勇気はなかった。


 そんな時、再び扉が開き


「あれ?俺たちが最後か?」


 そう言いながら二人の人が入ってくる。


 一人は北条烈火。


 そして烈火の後ろにいたもう一人は少しボサボサだが肩あたりで切り揃えた黒髪で儚げな、刻と同じ年代っぽい女性だった。


「じゃあ凛。好きな席に座ってくれ」


 烈火はそう言いながら秀の隣の席に腰掛けた。


 凛と呼ばれた女性は迷った挙句、刻の隣に座った。


 彼女を見ていた刻は、彼女と目が合ってしまい慌てるが、彼女が少しはにかんだのを見て顔が熱くなったのを自覚する。


「はい!じゃあみんな揃った所だしそれぞれ自己紹介していくか。じゃあ…ヒカリから時計回りにやっていこうか」


 烈火がそう言うと、ヒカリと言われた金髪のポニーテールの女性が声を上げる。


「自己紹介って…何を言えばいいんですか」


「まぁ無難に名前と超能力と…これからの意気込みかな!」


「…森宮もりみやヒカリです。フォトンキネシスの超能力者。どうぞよろしく」


 そう言って彼女、森宮もりみやヒカリは締めた。


 彼女は烈火の後半の言葉は聞こえなかったことにしたらしい。


そして順番は次の人へと移る。


「あああの僕のな名前は式織しきおり紡志ほうしです!超能力はえっと、あの、ぬ、布を作ることができます!……あれ?なんかニュアンスが違う様な…」


「紡志は布を生み出すことができるんだ、能力っぽく命名するなら『生地創造』って感じかな」


「あ、す、すみません」


 紡志の紹介にすかさずフォローを入れる烈火。


 ミスを庇ってもらえたと思い、申し訳なさそうに紡志は謝る。


「…狐月こづきりん。…超能力は獣化。…どうぞよろしく」


 凛はとても物静かな人であった。


 凛が簡素な自己紹介であったため刻は次にいっていいのか少し躊躇いながらも自身の自己紹介をした。


「…あ、黒鉄くろがねかけるです。硬化の超能力者です。よろしくお願いします」


 軽く頭を下げる刻。


 この部屋に入ってきたから烈火からの視線が突き刺さっていたが、刻が自己紹介をした時さらに強くなり、ちょっと居心地が悪かった。


「烈火、刻君のこと見過ぎ、彼ちょっと居心地悪そうにしてるよ」


「あっと、悪いな刻君。ちょっと気になることがあってな」


「いえ、大丈夫です」


 秀が烈火を注意したことで視線は和らぎマシになったことで、刻は少し落ち着いた。


 そして、次へと自己紹介が移っていった


「俺の名前は高倉たかくらこう。超能力は念力だ。高倉たかくらでもこうでもこうちゃんでも好きな様に呼んでくれ。あと普通に呼び捨てで呼んでいいぞ」


そのまま秀と烈火も自己紹介を行なっていく。


「じゃあ次は俺たちの番だな、順番的に俺から行こう。俺の名前はたちばなしゅう。基本的に事務仕事を行っている。政府との掛け合いは俺が行うことになるな。どうぞよろしく」


「最後は俺だな。まぁほとんどの人は俺を知ってると思うが一応。俺の名前は北条ほうじょう烈火れっか。炎の夢創者クレアだ。よろしくな」


 そう言いながらニカッと笑う烈火。


 だがみんなそんな事を見ている事はなかった。

 先ほど彼が言った夢創者クレアと言う言葉に引っかかっていたのだ。


 初めて聞く言葉だった。


 ニュアンス的に超能力とは違っているように思えた。


「あぁ、後でそこら辺も詳しく教えるよ」


 烈火も承知していたのかそう言った。


私はファッションセンスが皆無なので基本的に服装に関する記述はかなりふわっとしています。


夢幻の杜加入までまさか10話もかかるとは。

予定では一章30話で終わらせるつもりだったんだけどいけるかな?

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