雷鳴と女神
こんなに遅くなってすみません
ちょっと急ピッチで書いたので後で書き直す可能性があります。
あと見直しをしていないので誤字脱字があれば申し訳ないです。
『とりあえずくたばれ』
初撃の蹴りを受け止められた〈コシンプ〉は空いているもう片方の足で追撃しようとする寸前、体に衝撃が走る。
『……ッんにゃろう!』
その衝撃で少し硬直したが、それでも無理やり蹴りを放つ。
しかし、その隙に〈カンナカムイ〉は〈コシンプ〉から距離をとっていた。
『俺の雷を耐えたか!』
〈カンナカムイ〉は右手に雷を纏わせて前へと突き出すとそこから何条もの雷が分岐しながら〈コシンプ〉へと殺到していく。
〈コシンプ〉はその雷をその場から前へと突き進み回避。
『ん?』
そのまま雷を通り抜けながら〈カンナカムイ〉の前まで近づいた〈コシンプ〉はその腕を無骨な石に覆い、そのまま殴りかかった。
一瞬違和感を感じた〈カンナカムイ〉だが、すでに目の前に来ている〈コシンプ〉を見て目の前のことに頭を切り替える。
〈カンナカムイ〉はそれに対して体術の心得があるのか流れるように殴りかかってくる右腕に両手を添えて受け流し、体ごと彼女の体勢を崩そうとしていたが、その手首の片方がバシッと握られる。
『今度は逃さねぇ』
握った主である〈コシンプ〉はニヤリと笑い、その顔を〈カンナカムイ〉から遠ざける。
いつの間にか反対側の手首も握られていた。
〈コシンプ〉と〈カンナカムイ〉の距離が急速に近づいていき……〈カンナカムイ〉の頭部に向かって〈コシンプ〉は頭突きを行った。
『ぐっ!!』
頭を手で抑えながら何歩か後ずさった〈カンナカムイ〉。
その手の隙間からは額から出血していることが見て取れた。
『かってぇな。腕にも微かに鱗があった。それに雷を主体とした戦闘。人の形をした何かの生物、…それも雷を司る生物がモデルの純獣。お前、結構強いだろ。まだ本気を出してねぇな。そんなんじゃあ死ぬだけだぞ』
『………妙だな』
〈コシンプ〉は目の前の相手を警戒しながらも頭の中ではかなり思考を巡らせていた。
そしてそれは〈カンナカムイ〉にも言えることだった。
(不用意に敵に触れるのは失敗したな。攻撃の当たる瞬間だけだが私の身体の存在力を引き上げているしカウンターを仕掛けてきても私なら予兆を見てすぐに対処出来ると思ってたんだが……まさかカウンターとして夢幻を常に纏ってるとは思わなかった。それにあの攻撃マーキングも兼ねてたのか変なの纏わりついたし、絶対私にとって良くないものだし領域内じゃなかったら対処が面倒だったぞ……それにしても急襲してたからよく見てなかったけど、こいつはあの場には居なかったはずだ。あの存在力…もしいたのだとすれば絶対に気づかないはずがない。あいつらの気配もここら辺で途切れているし、私が来た時には争った形跡があった。それに加えて、あの時の奴らの気配というか力があいつの中で混じっている……ここであいつは何をしたんだ?)
(俺の《悋気霹靂》は接触によって相手を感電させると同時に相手に雷のマーキングをして、その雷に通電させることでそれ以降の攻撃を全て必中にさせる、並の奴なら接触による感電だけで殺せる夢幻………なのにあいつは感電させても死ななかった上にマーキングもできていなかったのか、次の攻撃が当たらなかった。可能性は二つ…雷自体あいつには効かないのか、それともあいつが俺より存在力が高いのか……あの後雷対策なのか腕の岩で覆っていたのを見るにおそらく後者……なんだが、なんか妙だ。人間と違って寓話獣にとって夢幻は体の一部そのもの。俺の雷が触れたものどんな風になっているのか俺には手に取るように分かる。その点で言えばあの時、俺はマーキングが出来ていないことに気づいていた。気づいていながらその情報を頭の片隅に追いやった。侮っていた?それじゃああの後マーキング出来てる前提で攻撃を仕掛けたことに矛盾している。俺の思考に干渉してくるタイプの寓話獣なのか?だとしたら厄介すぎる……だが)
『ここで力を消耗する気はない』
『あ?』
〈カンナカムイ〉にとって〈キラウシカムイ〉たちの力を取り込みに来ただけであり、万全の体勢で彼との戦いに挑むためにもためこんなところで消耗するつもりはなく、そんな状況で彼女の相手をするのはかなり厳しいと考えてその場からの離脱を図った。
〈コシンプ〉が気づいた時にはすでに彼は全身の存在力を上げ目に見えるほどの雷を纏いその場を離脱する寸前。
今更動こうとしたところで到底間に合わない。
すでにこの場を離れた後の行動について思考していた〈カンナカムイ〉。
だが
『っ!?』
何故か全身を覆っていた雷がバチッという音を立てながら弾けてなくなっていた。
目を見開きながら〈カンナカムイ〉はバッと自分の体を見て、自分を纏っていた雷が弾けた理由を理解する。
『……形成不全』
そう、〈カンナカムイ〉の雷が弾けた理由は形成不全……それも自身の夢幻に異物が混入した事によるもの。
それによって《悋気霹靂》が消えてしまい、数秒だが自身の存在力が低下してしまっていた。
形成不全なんて滅多に起こることでもないし、寓話獣にとって体の一部のようなものなのだから、〈カンナカムイ〉からすれば失敗するなんてことはありえなかった。
だからこそ偶然なのか技量なのか分からないが自身を形成不全させた〈コシンプ〉に対して彼は驚いていた。
だが、自身が形成不全を引き起こした事も問題よりも〈カンナカムイ〉が驚きを露わにしたのはその手段。
『何故お前がそれを使える!』
自身を形成不全させた手段
まだまだ未熟だったが
それは見間違いでなければ
かつて友だった剣翁が見せてくれた奥義の一つだったのだから。
他のことに気を取られていた〈カンナカムイ〉の目の前に移動していた〈コシンプ〉は彼から見ても相当の存在力の高いそのまま彼の腹へと殴りつけた。
『逃すわけねぇだろうが!』
『ぐっ……』
ほぼ無防備な状態でそれを喰らった彼は地面に二本の線を刻みながら後ろへと下がっていき、腹を押さえながらその場に膝をついた。
さらに〈コシンプ〉はそんな〈カンナカムイ〉へ追撃するように右足を上げ、そのまま踵落としで彼の頭めがけて振り落としたが、さすがの彼も連続で攻撃を喰らいたくなったので横に転がりながら避けた。
そして空を切った〈コシンプ〉の踵落としは地面へと激突し、大きな蜘蛛の巣状のひび割れを起こした。
『ガアッ!!』
横に避けた〈カンナカムイ〉は僅かに硬直していた〈コシンプ〉に向かって大きく吠えると口内の奥が煌めき、まるで横向きの雷のように彼女へと向かっていった。
数秒間続いたそれが止まり、彼が口を閉じると目の前には大量の土埃と粉々に破壊された木々があった。
次の瞬間、彼が腰についている刀から居合い切りを放つと彼が放った刃の軌跡の一歩外に〈コシンプ〉がいた。
そして両者共に後ろへと下がり、沈黙が続く。
ちらりと先ほど自身が放った攻撃の後を見てみると、破壊の後が地面に突き刺さっているいくつもの鉄の杭に収束していた。
〈カンナカムイ〉が放った先ほどの攻撃は『口から放つ』ことで存在力を引き上げ、さらにその特大の雷をビーム状に変形させて打ち出したもので、一般的な雷とは破壊力は桁違いであり、彼にかかればそれを操作して指向性を持たせることも造作もない。
だが、それでも雷の性質は無視できない。
通電性の高いもの―例えば避雷針など―かつ、その存在力が〈カンナカムイ〉のものと比べ大きな差がなければ〈コシンプ〉を狙っていたとしても彼の雷はそちらに引き寄せることは十分に可能である。
つまり〈コシンプ〉は先ほどの〈カンナカムイ〉の攻撃を地面に突き刺さっている鉄の杭を避雷針代わりにして回避し、彼の攻撃を隠れ蓑にしてまわり込んで近づき攻撃を仕掛けようとしたのだが、それを予測していた〈カンナカムイ〉によってその企みは失敗に終わったのだ。
数秒の沈黙の後、先に動いたのは〈コシンプ〉だった。
『あの時、確かにお前を形成不全させた…させた状況で、さらに存在力を上げて私は殴った。夢幻と似通った私たち寓話獣にとって形成不全は自身の体を維持できなくなることと同義であり、そこから更にダメージを受けた場合、純獣でも死ぬか瀕死になる……はずなんだが、私が殴った時の感触から言ってお前には実体があった。夢幻じゃない、この世界に完全に定着した物体としての感触だ…………まさかここで私以外の奴と出くわすとはな』
『それは俺のセリフだ。まさかここで《覇王気》を見れるとは思ってなかったぞ。それも本来透夢幻が使えない寓話獣があいつの奥義の一つを使ってくるとはな。話には聞いてたが……お前が〈コシンプ〉か』
『私もあんたのことはジジイから耳がタコになるくらい聞いてるよ………〈カンナカムイ〉』
〈カンナカムイ〉は臨戦体勢の構えを解き、それを見た〈コシンプ〉はゆっくりと自然体に戻していった。
もちろん二人の技量を考えればその場から不意打ちしようしても十分迎撃に間に合うとお互いに思っているからというのもあるが、それでも二人の間にある空間は戦いから会話へと移行していった。
『〈コシンプ〉よ。お前と剣翁との繋がりは何だ?』
『まあ、私にとっちゃあジジイはここまで育ててくれた親であり恩人であり、超えるべき目標だ』
『まあ、ジジイの前じゃ恥ずかしくて言った事ねぇけどな』と〈カンナカムイ〉に聞こえないように口元を手で隠し、やや恥ずかしそうにしながらも言葉を続けた。
『あいつの力に頼ってる程度じゃ足りないぞ』
『んなことは分かってるよ。私は私の力でジジイに並ぶ』
『それが何を指すのか分かってるんだろうな』
『もちろん……私は寓話獣の女王になる』
言葉だけ、いくら強気なことを言っても言葉だけなら何とでも言える。
だが、その言葉を口にした彼女の瞳からはそれが決して嘘ではないという確信が〈カンナカムイ〉にも分かるほどにありありと見てとれた。
その回答を望んでいたものであり、嘘偽りのないものだったからか、もしくはこれからのことに安堵したのか、厳つい表情をしていた〈カンナカムイ〉の眉から皺消え、ふっと笑みを溢した。
『………そうか。もうあいつは一人じゃないのか………そうか……なら安心だ…安心してあいつと戦える』
まさか目の前の男がそんな表情をすると思っておらず目をパチクリとしていた〈コシンプ〉を見ながら、少し寂しそうに、悔しそうな顔で〈カンナカムイ〉は言葉を続けた。
『あいつは孤独だ。強さと言う点で言えば俺も…誰もあいつの強さには追いつけない。人間でさえ剣翁の強さを恐れ、離れていった。だからなのか、あいつはいつも寂しそうにしていた』
『………なら何でジジイと決別した。なぜ今から殺しに行こうとしている』
〈コシンプ〉は薄々勘づいていた。
今は自分がいて出来ないが、目の前の男が今すぐにでも剣翁を殺しに行こうとしていることを。
次の戦いに備えてなのか消耗を避けた動きをしていることを。
だからこそ剣翁の方へ生かさないように、逃がさないようにしながら、可能ならば〈カンナカムイ〉を殺そうと動いていた。
それなのに、今目の前にいる〈カンナカムイ〉からは〈コシンプ〉に対する戦意も、剣翁に対しての殺意も憎悪も一切抱いていないことに彼女は気づいていた。
行動と感情がチグハグなのだ。
だからこそ〈コシンプ〉は疑問に思っていた。
出来るだけ早く話の続きを書きたいという欲求はあるのですが、最近ちょっと忙しくてさらに執筆のモチベーションが全然湧かない状況です。
そのため次の話からは申し訳ないですが今までの半分の2000字で投稿していきます。
もうこっちの方がモチベーションを維持できるのならこのままにしていきますし、4000字に戻す可能性もあります。
もし4000字で投稿に戻す場合は事前に言います




