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夢想の創造 〜幻想世界に生きる〜  作者: 龍の使い
第二章 鋼の内、瞑想から幻想へ
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光と闇の対談

 

「まず初めにわしと〈カムイ〉との関係性について先に言おうかのう…わしと〈カムイ〉との間にはとある盟約を結んでいる」


「盟約…ですか?」


「ああ、盟約で決まっている事は三つ……わしが指定したテリトリーから出ない事。わし以外の人を殺さない事。そして、この二つを守っている限りはわしから〈カムイ〉へと攻撃を加えないことじゃ」


「…なんでそんな盟約を結んだんですか?」


「簡単に言えば《札幌》が滅びる可能性があったからじゃの」


 剣翁は静かに語り出した。


「わしと〈カンナカムイ〉が出会ったのは空想侵略の中盤だったか……この地の王であったあいつと出会った。その時のわしとあいつの関係性は…今のわしと〈コシンプ〉との関係性に近いかのう。一緒に暮らすという事はなかったが、あいつとは共に切磋琢磨する仲じゃったんじゃ」


 初めは少し楽しそうに話していた剣翁の表情は次第に悲しそうなものへと変化していった。


「だが数十年前……空想侵略が終わってまだ十年くらいしか経ってない頃じゃったか、突然あいつは《札幌》に襲いかかった。わしがそれを退けたんじゃが、逃してしまったのう。当時のあいつは純獣ピュアよりも強力な神獣デェイティ。《札幌》の人間にとって決して敵わない相手じゃ。だからわしは行方知らずになったあいつを探ためにあいつの仲間だった〈カムイ〉たちと戦っていたんじゃが……まあ、やり過ぎてしまったようでの。滅びる危機を抱いた奴らが盟約を持ちかけてきたんじゃ。それでわしは、自分から奴らに危害を加えない代わりに見つからなかった〈カンナカムイ〉の行動を制限するために〈カムイ〉の名を冠する寓話獣の行動範囲を制限させた」


「……師匠には〈コシンプ〉さん以外にも仲が良かった寓話獣がいたんですね」


「どうだろうなぁ…わしはそう思っていたんじゃがのう。案外わしの思い上がりだったのかもしれん」


 その後、少しの間二人の間を焚き火の爆ぜる音が支配していた。


「少し話が脱線したのう。まあ、わしと〈カムイ〉で盟約を結んでいるんじゃが、奴らにとってはどうにかしてこの盟約を破棄したい。つまりはわしを殺したいわけじゃが、そのままじゃわしには勝てんことを理解しているからか奴らはどうにかしてわしに勝てるくらいに強くなりたい。……そこで刻、お主じゃ」


「え?僕ですか?」


 そこで自分の名前が出てくるとは思っても見なかった刻はとても驚いた表情をしていた。


「〈コシンプ〉曰く寓話獣たちにとってお主は最上級の獲物。殺すだけで進化出来る、文字通り進化の種そのものだとお主を指して言っていた」


「………え?」


 刻は初め剣翁が何を言っているのか理解できなかった。


 何かの冗談なのだろうか。


 そう思っていた。


「……うそ…ですよね」


「今まで刻に襲いかかって寓話獣。お主に死に物狂いで向かってきてなかったか?わしの存在なんか無視してただひたすらに」


 刻は何も言えなかった。


 これまでの道中、すべての寓話獣は刻が対処してきたと言っていたが、正しく言えばすべての寓話獣が例外なく刻の方へと襲いかかってきた為だ。


 初めは自分よりも強い剣翁を避けて弱い自分を狙いにきていたのかと思ったが、剣翁は透夢幻ステルスヴィジョンによって自身の気配を自然と同化させており、彼は寓話獣からは強者とは見られていないはず。


 それに刻も剣翁程ではないにしろ透夢幻ステルスヴィジョンによって自身の気配を自然に寄せている。


 それでも眼前に現れれば刻も剣翁も普通に視認される。


 なのに、これまでの戦いすべて刻の目の前に現れた寓話獣は剣翁に目を向ける事なく刻へと向かってきていた。


 道中だけではない。


 修行で外に寓話獣を倒しにいっていた時も相手にしたすべての寓話獣はまるで刻しか見えていないかのようにただがむしゃらに向かってきていた。


 刻は〈コシンプ〉から寓話獣は相手に舐められる事を嫌うと言う事を聞いたことがあったため、彼にとってはそれが普通であると認識していた。


 だが、よくよく思い返してみると剣翁が前に出て戦っていた時も、彼が瞬殺したため確証は持てなかったが、相手の寓話獣は刻目掛けて襲い掛かろうとしていた。


 もっと思い返してみると《新宿》にいた時に戦った〈ゴーレム〉や〈ゴブリン〉も確かに自分に意識を向けていた気がする。


「…思い当たることはあるようじゃの」


 これまではまだ自分が勝てる相手だったから良かった。


 だが、これからもそうであるとは限らない。


 いや絶対にこれまで以上の敵が出てくるだろうし、剣翁の話の内容的に〈カムイ〉がそうなのであろう。


 そう認識しだすと途端に震えが止まらなくなった。


だが、その震えている刻の肩に剣翁は静かに手を置いた。


「安心しろ、純獣ピュアと出会うことすら滅多にないんじゃし、今はわしがそばにおる。それにお主の才能ならすぐに夢想アーツを会得するだけでもそこいらの相手には負けん。師匠のわしが断言しよう。それとも師匠の言葉は嘘だと言いたいのか?」


 師匠であり確かな強さを持つ剣翁の断言と多分に揶揄いの含まれた最後の言葉を聞いた刻はいつの間にはその震えが止まっていた。


「刻よ。寓話獣が見境なしにお主に襲いかかってくるという事は、それほどまでにお主は夢創者クレアとしての才能に秀でているということらしい。数ヶ月一緒に暮らしてきたが、確かにその片鱗は見て取れる。お主はこれからもっと強くなるじゃろう。だが、その原動力は人の為であれ」


「はい」


「わしはただひたすら強くなりたいという想いからこの力を手に入れた。じゃが手に入れた先にあるのはただひたすらに空っぽな人生だけじゃ。自分の為に強くなるということは自分の中で簡単にその想いに決着をつけてしまう。そこで止まってしまった自らを突き動かすエンジンはいつか腐り、人を闇に落とす」


 そう言った剣翁の表情は悲しみに満ち溢れていた。


「これはお主の師匠としての願いじゃ…すべての人に手を差し伸べる英雄になれとは言わん。だが、誰かのための英雄になる為に生きて欲しい」



 二人の間には静寂を切り裂くようにパチパチと焚き火が小さく爆ぜた音だけが響いていた。



 〜〜〜〜〜



 そこは北海道にあるとある岩山の頂上


 そこを一人の男が歩いていたがふいにその歩みを止める。


『これはこれは。まさか私が背後を取られるとは。すこし舐めていましたね』


『誰だ』


 男の目の前に突然現れた人影から聞こえてくる声。


 だが、()()()()()()()()()()()


『背後の夢幻ヴィジョン……これは雷ですか。私に対する攻撃なのか……それとも逃さないためですか?』


『………』


『ああ、逃さないためですね。まあそうですよね。貴方は私が何者なのか測りかねている』


 再度の無言。


 その反応に男はまるで全てを知っているかのように笑みを浮かべる。


『私が何者なのか。ここはあえて言葉を濁しましょう。私は貴方の同類です』


『……同類?…〈カムイ〉……いや違う……寓話獣…………括りが大きすぎる…………まさか!!』


『分かりましたか?』


『ああ…だが尚更分からん。《札幌》の連中でもあいつの関係者でもないお前が何の用だ』


 静かに殺気を出しながらそう伺う相手に対して男は呆気からんと答えた。


『なに、貴方様の力になりたいと思いまして』


『……いらん。去れ』


『少し黙りましたね?一瞬でも考えたのではありませんか?彼に勝ちたいんでしょう?私なら手助け出来ますよ?』


 相手の殺気が増える。


 もはや只人がその殺気に当たれば恐怖のあまりショック死するのではないかと思えるくらい大きなものだった。


 事実、彼らの周りの動物たち、寓話獣はその殺気に死に物狂いで逃げ出していた。


 そして、そんな逃げ出したモノたちに引っ張られるように一切の光すら通さなかった重たい雲の隙間から月明かりが漏れ出て姿の見えなかったお互いの姿をその目に焼き付けた。


 男の方は極々普通の顔立ちをした長身痩躯で多くの人の中に紛れれば見つからないであろうほどに何も特徴のない顔つきをしていた。


『ふふ。その姿、伝承と全く違いますね。龍の姿をしていると聞いていたのですけど……今の貴方はどう見ても人間に似た姿、龍人と呼べば良いのでしょうか……一体誰を似せたのでしょうね?』


『……黙れ』


 それに対して相手の方は若い人間の体躯に頭のこめかみあたりから後ろに流れて生えた二対の角に全身を覆われ、腰に龍の鱗をあしらったような刀を持った青年の姿をしていた。


『分かっているのでしょう?そこまで至っていてもまだ彼には届かない。貴方もそろそろ焦っている筈だ』


『黙れと言っている!!』


 図星だったのか、相手の龍人の男はそう言いながら腰にある刀を抜刀し、第三者から見ても残像すら見えないほどの速さで振り抜かれたそれは男の胴体を逆袈裟で両断した。


 筈だった


『いいえ黙りません』


 男の体には傷ひとつついていなかった。


 それに、男を斬りつけた龍人の男は斬った時に手から伝わる感触なさに違和感を覚えていた。


『なんだお前の体は』


『言ったでしょ?私は貴方の同類だと』


『……ちっ』


 今戦った所で無駄だと判断した龍人の男は刀を納める。


『それで?俺の力になりたいと言っていたな?何をしてくれるんだ?』


 その言葉に男は満面の笑みを浮かべる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()、何かしらの策はあるのでしょう?ねぇ〈カンナカムイ〉さん』


 そう呼ばれた龍人の男―〈カンナカムイ〉は笑みの浮かべた口元と全く笑っていない目のアンバランスな男の顔立ちを見ながら気味の悪さを感じ顔を顰めた。


『私が貴方様と剣翁との戦いの場を整えてあげましょう。このわたくし操作者ライターの名にかけて』



 〜〜〜〜〜



「刻よ、忘れ物はないな」


「はい」


「よし行くか。今日中に〈カムイ〉のテリトリーから抜けたし、少し急足で行くぞ。着いて来れるか?」


「大丈夫です」


 次の日の朝早くから刻と剣翁は《札幌》へ向けて歩き出していた。


 その数時間後、神の悪戯が彼ら二人に牙を剥く。


 そして分針は周り、時針の針は本格的に動きだす

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