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夢想の創造 〜幻想世界に生きる〜  作者: 龍の使い
第二章 鋼の内、瞑想から幻想へ
61/73

不純なものにも使い道はある

 

「…………え?」


 小さな石が大きな岩を破壊するという状況に頭がついていっていなかった。


「まあ、ざっとこんなもんじゃ」


「どうやって…ただの石だったはず」


そんな刻の呟きに剣翁が答える。


「簡単に言うとこの石の存在力を透夢幻ステルスヴィジョンで高めたのじゃ」


 剣翁が石を目にも止まらない豪速球で投げて破壊したのならまだいい。


だが、一度目と同じようにふんわりと弧を描きながら投げられた石が地面に埋まっている大きな岩を壊すと言う事態に脳が理解することを拒んでいた。


 そんな刻を見て剣翁はこういう反応するだろうなと苦笑いしながらも説明を進めていく。


「わしらの頭の中で思い浮かべた想像を具現化する形で想力オドが変質して夢幻ヴィジョンが現実に形成される。じゃが当然、夢幻ヴィジョンの形成する上、夢幻ヴィジョンを形成する上で必要のない曖昧な想像や邪念の混じった想いも存在し、それらは夢幻ヴィジョンとして形成されることなくロスとなる。刻も夢幻ヴィジョンのロスの情報が刻まれているじゃろ?」


 そう言いながら自分の頭をトントンと指で叩く剣翁に、刻もまた頷く。


 想力オドから夢幻ヴィジョンを形成する際、すべての想力オド夢幻ヴィジョンになるわけではなく、少なからずロスが出てきてしまうことは夢幻ヴィジョンの適性と同時に刻まれた情報の一部であり、刻は烈火にこのロスがほとんどないと言われていた。


 ちなみにこのロスが多ければ多いほど夢幻ヴィジョンの存在力は低下し、逆に少なければ少ないほど存在力は上がる。


 そのため刻の夢幻ヴィジョンの存在力はヒカリたちの比較して高かった。


「その夢幻ヴィジョンにならなかったものは想力オドに戻ることもなく空気中に離散される。それらを意識的に集めたものが透夢幻ステルスヴィジョンじゃ。透夢幻ステルスヴィジョンの利点は二つ」


 剣翁は指折りしながら透夢幻ステルスヴィジョンの利点を説明していく。


「一つ目、夢幻ヴィジョンでないものの存在力の上昇させることができる。これはさっきのことを思い返せば分かるじゃろう。これを『幻纏げんてん』という。そしてこれを応用して体に『幻纏げんてん』したものを『幻装げんそう』という。幻装はいいこと尽くめじゃぞ?身体の存在力が上がって相手の夢幻ヴィジョンが効きずらくなるだけじゃなく、身体能力や五感も軒並み上昇する」


 その時、剣翁の会話の中に出てきた『幻装げんそう』の説明が刻は途轍もない聞き覚えがあった。


「……剛身化」


「ん?刻のいた所じゃとそう呼ばれてあったのか?…おかしいのう。『幻纏げんてん』も『幻装げんそう』も共に透夢幻ステルスヴィジョンの情報として刻まれるはずなんじゃが」


「あ、いえ…僕のいた新宿では透夢幻ステルスヴィジョンという言葉自体広がっていなかったんです」


「そうじゃったか。札幌では普通に広がっとったが…新宿は遅れとるのう」


 刻は無意識に出た言葉を拾われて焦りながらも応答し、剣翁は刻の言葉に合点があったといった表情を浮かべる。


「続けるぞ、透夢幻ステルスヴィジョン二つ目の利点…それは感覚の拡張じゃ。第六感と言っても良いの。透夢幻ステルスヴィジョン夢幻ヴィジョンに成りきってないから知覚が夢創者クレアと繋がっておる。だから透夢幻ステルスヴィジョンそのものや幻纏げんてんした物体も自由に動かすことができる。更にいうと、普通に歩くように、近くにあるものをその手で掴むように透夢幻ステルスヴィジョンが触れたものを触覚として認識できる。第三の手と言ってもよいな。これを周りの物体や夢幻ヴィジョンに纏わせて操るのが基本的な使い方じゃな。これに関して聞き覚えは?」


夢幻ヴィジョンを操る使い方は新宿でも基本的な使い方でしたけど、さっきも言いましたが透夢幻ステルスヴィジョンという言葉自体知られてないのでそれが原因だとは…」


「まあ…ロスがあれば夢幻ヴィジョンを形成した時点ですでに幻纏げんてんされておるしのう」


 刻の夢幻ヴィジョンはロスが全くと言っていいほどないため、彼が形成した夢幻ヴィジョンは存在力と持続力は高いが幻纏げんてんされておらず、これが原因でヒカリたちと違い彼が形成した夢幻ヴィジョンは形成後、操作することができなかったのだ。


「あの師匠…夢幻ヴィジョン透夢幻ステルスヴィジョンって類似点ってないんですか?夢幻ヴィジョンでも知覚できると思いますし…それになり損ないっていうならもう少しあると思うんですが…」


「いや、二つは全くの別物と言っていいぞ。刻が言っていたのは夢幻ヴィジョンが知覚していたのではなくそれに纏っている透夢幻ステルスヴィジョンが知覚していたか、変形や破壊によって夢幻ヴィジョン透夢幻ステルスヴィジョンに変化したのを知覚しているんじゃよ」


「えーと………」


 次々と出てくる新しい情報をなんとか整理しながら話を聞いていた刻。


「……そうじゃのう…」


 そんな反応を見た剣翁はあたりをチラリと見渡した剣翁は近くにあった木の枝を拾い、それで地面にガリガリと何かを描き始める。


 ――――――――――――


 石 Lv(レベル)1 /100 EXP(経験値) 1/100


 HP(体力)  100

 STR(強度) 100

 AGI (俊敏) 100

 VIT(耐力)  100



 岩 Lv1 /100 EXP 1/100


 HP  125

 STR 150

 AGI  125

 VIT  150


 ――――――――――――



「刻よ。これがさっき投げた石と向こうで粉々になっている岩のステータスとするぞ」


 それを書き終えた剣翁は刻へと顔を向けるとそこには更に頭にハテナマーク浮かべている刻の姿があった。


「………ステータス?」


「ほれ、RPGゲームとかで出てくるじゃろ?」


「RPG?…ゲームってトランプとか双六とかですよね?」


「娯楽が昭和まで戻っておる」


 まさかステータスという言葉を知らないどころかRPGゲームすらも知らないという刻に、かつて仕事以外の時間のほぼ全てをゲームに費やした剣翁にとってその事実は、彼が頭を抱えて落ち込むには十分であった。


「話を先に進めるとしよう」


 その後、多少立ち直った剣翁は少し逸れてしまった軌道を元に戻して話を続ける。


「そのHPやらSTRやらを合算したものが存在力とするぞ。数字が大きい方が存在力が大きいからの…それじゃあこの石と岩がぶつかった場合、どっちが勝つ?」


「岩のほうが勝ちます」


 そう問われた刻は迷わずに岩のステータスが書かれている方を指差す。


「そうじゃな。それじゃあ」


 刻が答えた後剣翁は再び地面に何かを書き始める。



 ――――――――――――


 石 Lv10/100 EXP 0/110


 HP  100(+100)

 STR 100(+100)

 AGI  100(+100)

 VIT  100(+100)


 ――――――――――――



「この石とさっきの岩ならどっちが勝つ?」


「……この石です」


 再び問われた問いに今度は先ほど剣翁が書いた方を指差す刻。


「その通りじゃ。さっきの石とこの石、ステータスの違いはなんじゃ?」


「Lvが1から10になっていることと…EXPが変わっていることと…あと、HPやSTRの100の後ろにプラス100が付いています」


 剣翁は刻の回答に満足したのか説明を続けていく。


「それが石に透夢幻ステルスヴィジョンを込めたことで起こった変化じゃ。簡単に言えば透夢幻ステルスヴィジョンとは経験値のようなもので、物に込めていくとその物のレベルが上がっていき、カッコの中のように各ステータスの数値が加算されていく、つまりは存在力を上げていくということなんじゃ。…じゃあ夢幻ヴィジョンの方はどうなんじゃって話じゃが……」


 そう言いながら木の枝を持ちまた何かを書き始める剣翁。


 ――――――――――――


 石もどき


 HP  200

 STR 200

 AGI  200

 VIT  200


 ――――――――――――



「これが夢幻ヴィジョンで形成された石のステータスじゃ。さっきと全く違うじゃろう?」


 剣翁の言う通りさっきの石のステータスと今回彼が書いた石のステータスは全く異なっていた。


『石』ではなく『石もどき』とついていたり、LvやEXPが書かれていなかったりHPなどの数値が100ではなく200になっていたりとかなりの違いがあった。


夢幻ヴィジョンっていうのはこんなふうに、ステータスの数値を同じにすることで現実にある石と何ら変わらないものを創り出しているんじゃ。夢幻ヴィジョンの存在力を上げると言うことは、HPやらSTRやらの数値の割合を変えることなく上げていくということ。拡大解釈エクステンドのように多少はその割合が変化しても問題ないんじゃが。まあ、長々と説明したが透夢幻ステルスヴィジョンというものは一言で言えば、経験値であり、もう一つの感覚だとわしは認識しておる」


 剣翁の説明をどうにか噛み砕きながら、夢幻ヴィジョン透夢幻ステルスヴィジョンの違いをどうにか理解した刻は新たに生まれた疑問を剣翁へと投げかけた。


「師匠。この透夢幻ステルスヴィジョンって何か欠点みたいなものってないんですか?」


 今までの説明を聞いた限りだと透夢幻ステルスヴィジョン夢幻ヴィジョンほど正確に想像しなくていい…むしろしない方がいいのにも関わらず、剣翁が小さな石で大きな岩を破壊したように周りのもの全てが武器になりうるこの力はかなり使い勝手がいいように刻は思えたのだ。


 だからこそ夢幻ヴィジョンのように、形成するために詳細に想像しないといけないだとか、不完全だと形成不全パージが起きるとか、何かしらの欠点があるのではないかと考えていた。


「もちろんあるぞ。ほれ、さっき書いた二つの石のステータスのLv(レベル)EXP(経験値)の部分をよく見てみるんじゃ」


 そう言われ、二つのステータスを見てみた刻はあることに気づく。


Lv(レベル)EXP(経験値)の右側の数字……」


 LvとEXPの/100の部分が目に留まった刻。


 それが何を意味しているのか刻は分かっていない。


 特にEXPは左右の数値が二つとも異なる数値であったことを不思議に思った。


 その反応を見て剣翁は話を続けていく。


「Lvの右側にある数値はLvの上限であり、これ以上のLvになることはない。つまり、物に込められる透夢幻ステルスヴィジョンの上限が決まっている…存在力がそれ以上上がらないということじゃ。そしてEXPは右が次のLvに上げるための必要経験値、左が今溜まっている経験値じゃ。見てわかる通りLvが上がっていくごとに必要経験値…込めなければならない透夢幻ステルスヴィジョンの量が増えていくというわけじゃな。会得するのは簡単じゃが極めるのがとにかく難しい。それが透夢幻ステルスヴィジョンの欠点じゃな。………あと、強いて言うなら透夢幻ステルスヴィジョン単体での存在力は途轍もなく低いことかのう。それこそクロすら殺すのに苦労する」


 そう話を締めくくる剣翁と真面目にその話を聞いている刻を横目に、二人のやりとりを静かに聞いていたコシンプは途轍もなく呆れた表情で剣翁を見ていた。


「いや普通はクロに傷をつけることすら出来ないからな。透夢幻ステルスヴィジョンだけでクロを殺せるのはジジイだけだ。おいガキ、気を付けろよ。ジジイは非常識だからな。確かにこいつの説明は正しいが、ジジイはそんなルールなんぞクシャクシャに丸めてその辺にポイ捨てしているレベルだぞ」


「何を言ってるんじゃコシンプ。嘘の情報を刻に教えるでない。わしは常識人じゃ。そう言うお主が一番非常識じゃろ。この間なんて『常日頃幻装すれば体なんて洗わなくていいって』って言って風呂入ってないじゃろ」


「ジジイこそ『わしに毒は効かん』っていいながら毒キノコ食い歩きしてただろーが!と言うか強さと言う一点に置いてジジイは常識のかけらもねぇからな!常識が裸足で逃げ出すレベルだぞ!」


「なにを〜」


「あぁ〜?」


「……あ、はは」


 突然言い争いを始めた二人に刻は本日二度目の苦笑いをこぼした。


透夢幻が本物の車をアップグレードさせるための強化部品かつ燃料だとすれば、夢幻は外観だけでなく素材も中身も本物の車と全く同じに3Dプリントしたプラモデルのようなものです。

プラモデルの方はいくら同じ形をしていたとしても燃料がないと動けないですよね?

制限解釈はそれを決まった予算内で作ること、拡大解釈は扉を本物よりも更にアップグレードさせたようなものです。



補足

透夢幻の元となる夢幻のロスは自分の本心の偽っていたり、怠けていたり、高齢になったりすると増えていきます。

つまり、本心を隠していた高倉巧は念力として形成していたのも、怠け者の木崎錦が綿人形を動かしていたのも、もっというと高齢のカラ婆が周囲の水蒸気を操っていたのも全て透夢幻が原因です。



今回は透夢幻の説明回でした。


これで夢幻に関する基本的な説明は全て終了です。



剣翁が説明していた内容は夢幻と透夢幻の違いを簡単に説明しようとしたものであって、夢幻というものの本質を説明しようとしたら、ステータスという例えはある意味合っており、ある意味間違っているとも言えるのです。


この物語はラノベとかでよく出てくる『気力』や『魔法』のようなものではない力というかそういうものを妄想していて、それを素体として作られているので夢幻や寓話獣の設定は物語の根幹であり、かなり細かく作っております。


問題があるとすれば、魔法みたいに『ああこういうものね』というものがないため物語の中にその説明を組み込まないといけないことと、作者自身あまり文才がないためこの説明を上手く物語に組み込めなかったことですかね


夢幻ヴィジョンのロスと夢幻極致プライマルアーツ会得のためのファクターである想いの純度はちょっと違います。


あと少し触れておきますが、剣翁は色々とオカシイです。

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