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夢想の創造 〜幻想世界に生きる〜  作者: 龍の使い
第二章 鋼の内、瞑想から幻想へ
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流離う翁と矮躯な寓話

以前投稿したのがハロウィン

今日11月21日…

マーーージデこんなに遅くなって申し訳ないです。

学校行事と課題のダブルパンチで死んでおりました………

 

 袈裟斬り、逆袈裟斬り、振り下ろし、突き、からの横一文字斬り――


 剣術をなにも学んでない素人ながらの動きだが、それでも剣翁の重心の移動や隙を狙った刻の攻撃。


 その全てを回避、または受け流された。


 それもただ回避されたり往なされた訳ではない。


 剣翁が回避すれば刻の死角に回り込み、往なせば刻の体ごと引っ張られて体勢を崩し、いずれの場合もその後首元に手を添えられて一本取られる。


 剣翁は刀すら抜いていない。


 刻が攻撃を打ち込む隙もある。


 なのに周りの気配を探ろうとしても何故か先ほどまであった剣翁の気配が探れなくなり、体勢を崩さないように意識しても体全体が押されているかのように崩れてしまう。


 まるで刻は剣翁の掌の上で踊っているようにすら感じられた。


「はぁはぁはぁ………」


「一旦休憩するとしようかの」


 剣翁が刻を対処し手を添えることが二十回を超えた頃、体力が限界に達した刻は息を荒らげながらその場にしゃがみ込んでいた。


 対して剣翁は一切息を乱すことなく家から飲み物を取りに行き、刻へと渡している。


 力の差は歴然であった。


 刻は初めの頃は剣翁を傷つけることに躊躇して刃引きした剣を使ったり、多少手を抜いたりしていたが、途中からそんなこと考えることなく本気で剣翁にぶつかっていった。


 それでも彼は腰にある刀を抜くそぶりすら見せることなく先に刻の体力が限界に来てしまった。



「さて、一先ず戦ってみた感じ…夢幻ヴィジョンよりも先に剣術を鍛えた方が良いかの」


 刻の休憩が終わったあと、訓練を再開して剣翁の一言目の言葉がそれだ。


「どうやら近接特化の夢創者ナレアであるようじゃし夢幻ヴィジョンの練度もよい。わしの隙を的確に狙いつづけていたし剣の筋も意外と良いが……いかんせん素直すぎるの。刻、対人の経験は?」


「……夢幻ヴィジョンの撃ち合いは何度か…でも、さっきみたいに近接戦闘はほとんどないです」


「…そうか」


 その言葉に剣翁は髭を撫でながら少し思案していた。


 このまま剣術の型…技術を教えていくか、それともひたすらに自分、もしくは寓話獣と戦わせることで戦い方を身に付けさせるか。


 そんな時


「おーおーやってんなー」


 朝食のあと出掛けていたコシンプが刻たちの元へと歩いてきていた。


 それを剣翁は不思議そうな表情で見ていた。


「なんじゃコシンプ。今日は随分と帰ってくるのが早いのう」


「ああ?今日はなんか森の雰囲気がおかしくてな。至る所から視線を感じて背筋がゾワゾワしたから早めに帰ってきた。多分、あれが原因だ」


 そう言いながらコシンプは軽く、一瞬だが刻へと目線を向ける。


 本人はそれに気づくことはなかったが、剣翁は何に目線を向けたのか理解する。


(昨日コシンプが言っていたあれか。寓話獣に襲われやすいって言ってたな……それなら今の刻を外に出して戦わせるのは危険。家で技術を先に教えるとしようかのう。夢幻ヴィジョンに関しては基礎を鍛えるだけだし、わしの夢幻ヴィジョンの適性を考えても教えられることはほとんどない。戦いの中で身につけてもらうとしようかのう)


 そんな事を剣翁が考えている時、視線の端からコシンプが前へと出てきたのが分かった。


「私にも戦わせろ」


 そう言いながら彼女は両手をバキバキを鳴らし、獰猛な笑みを浮かべる。


 それを見た剣翁は刻へとコシンプの提案の是非のため視線を向け、その視線に気づいた刻は先程の戦いの疲れも多少癒えていたこともあり、了承の意を込めて頷いた。


「……怪我をさせるでないぞ」


「わぁーてるよ」


 刻とコシンプは数メートル離れた場所で向き合い、その中央には剣翁が審判役として立つ。


「この石が地面に落ちたらスタートじゃ。それまでに戦いの準備はしてもらって構わんぞ」


 剣翁は手に持っていた石を軽く上に投げ飛ばす。


 上に投げられた石は重力に従ってやがてその速度を落としていき、地面へと加速していき…


「ああそれと…刻。そんななりしてるがこやつはわしと互角の強さじゃ。殺す気でいかんと……大変な目に遭うぞ?」


 石が地面に激突する。


 同時に刻の目の前に拳を構えたコシンプがいた。


「……っ!!」


「いくぞぉ!」


 回避が間に合わないと思った刻は慌てて開始前に形成していた刀を持っていた手とは反対側の手に盾を形成しようとする。


「《軟鉄のた……」


「そんな悠長に技名言う暇あるのかぁ!?」


 だがそこにコシンプが拳を差し込んだことで、刻が想像した盾の形が拳の存在が障害となり、形成されていた盾は霧散した。


「……な!?」


「なんだぁ!?形成不全パージされたのは初めてか!?」


 形成不全パージ


 それは夢幻ヴィジョンを形成する際、想像力が足りなかったり、形成しようとした場所に突然障害が生まれた結果、想像したものが現実に形成することができなくなり夢幻ヴィジョンの形成に失敗すること。


 想力オドを消費したにも関わらず夢幻ヴィジョンが形成できず想力オドを無駄に消費させるだけでなく、一度形成不全(パージ)が起きると現実と想像の間にギャップが生まれてしまい、しばらくの間まともに夢幻ヴィジョンが使えなくなるか、使えたとしても夢幻ヴィジョンの存在力が著しく下がってしまう。


 形成不全(パージ)は基本的に少し時間が経てば自然と解消されるが、恐怖などによりこの現実と想像のギャップがいつまでも解消されないことがある。


 こうなってしまうと形成不全(パージ)によって夢幻ヴィジョンがいつまでも使うことができなくなり、これを解消するためには形成不全(パージ)の原因となった感情を上回るほどの感情が必要となる。


 以前紡志が夢幻ヴィジョンを使えなくなっていたのも、〈ゴブリン〉を殺したことで夢幻の杜として目指すべき場所―願っている想像(未来)と今の自分の心情―現実()とのギャップによって起こっていたことであり、彼の場合は夢想アーツを会得したことでそれを解消していた。


 夢幻ヴィジョンが形成できなかったという初めての経験に刻は戸惑ってしまい、その影響で形成していた刀も消えてしまっていた。


 だが、そんなことを考えていてもコシンプの動きが止まる訳ではない。


「チンタラしてる暇ねぇぞ!」


「くっ…」


 コシンプが刻の腹めがけて殴りかかってくる。


 その拳には刻にもはっきりも分かるほどの存在力があった。


(この攻撃を無防備に喰らうのはまずい)


 そのように感じた刻は必死に考えを巡らせる。


(間に盾でも差し込むか?…いや間に合わない。それにさっきみたいな事されて夢幻ヴィジョンの形成を妨害されたら無駄に想力オドを消費するだけだ。………なら一か八か)


 コシンプの拳が刻の腹へと激突し、甲高い音が周囲に鳴る。


「ん?」


 意外な音が鳴ったことに不思議に思ったコシンプは刻の体を見てみると、服に隠されたその下―皮膚の部分が鼠色に変色していた。


 考えに考えて刻が最終的に出した結論、それはお腹の部分を鉄に変質させること―かつて寓話獣〈インヴィジブル〉との戦闘でカイの助言、補助によって行った体の鉄への変質。


 刻はいつか出来るようになりたいと思っていたが、夢幻の杜に入り夢幻ヴィジョンについて、そして獣創者ビースについて知っていくごとに、夢幻ヴィジョンによって体を変えることへの危険性を理解し、使用することに慎重になっていた。


 そのため今回も全身を変えるのではなく、お腹だけを変質させるだけに留まっている。


「グッ…ゴホッ!…ゴホッ!」


 それでもコシンプの拳の力を完全に耐えることはできず、思わずその場にうずくまってしまう刻。


 そんな刻をコシンプは追撃することもなく、嬉しそうな意味を浮かべて彼を見ていた。


「変身か…形成不全パージ直後にやるとは…随分危険なことしたなお前……だがいいぞ!ギリギリの状況になっても諦めずにどうにかしようとする意志!それは夢創者クレアにとって重要なことだからな!」


 そう言うとコシンプは振り向いて刻から離れていく。


 今の一連の攻防で満足したようだ。


 そんなコシンプに剣翁は話しかける。


「刻のこと気に入ったようじゃの」


「不屈の精神…私は好きだぜ」


 そう言いながらコシンプは剣翁の横を通り過ぎて家の中へと戻ろうとした時


「ああそうだ。なんであの時透夢幻(ステルスヴィジョン)は使わなかったんだ?」


 あの時とは刻がお腹を鉄に変質させてコシンプの拳を防いだ時のことだ。


 コシンプのこの問いに刻は頭を傾げる。


「…透夢幻ステルスヴィジョン?なんですかそれは」


「ん?いや分かるだろ?」


「………いえ」


「おいジジイ」


 刻の表情からそれがハッタリではないと気づいたコシンプはどういうことか問い詰めるため剣翁へと視線を向ける。


 対して剣翁もまた刻の応答に頭を傾げていた。


「刻よ。おぬしの夢幻ヴィジョンにロスがほとんどないのは何故じゃ?」


「それは初めからなので、何故かと言われても」


「わしとの戦いの時、死角からのわしの攻撃を認識していたのは?」


「…なんか…気配で」


「わしの動きや隙を見逃すことなく攻撃を仕掛けてきたのは?」


「師匠の動きを見てなんとなく攻撃が入るところが分かって…」


 刻とのやりとりの後、剣翁は指で眉間を押さえ、コシンプは呆れていた。


「…透夢幻ステルスヴィジョンが使えるのにその対応があたりにもおざなりだと思った原因はそれか」


「あんなにロスのない夢幻ヴィジョンを形成しておいて透夢幻ステルスヴィジョンを知らねぇって…ジジイ並みに破天荒だな」


「…そうじゃの。それじゃあまずはその透夢幻ステルスヴィジョンから教えていくかの」


 剣翁は近くにあった石を二つ拾ってから刻へと近づいていった。


「まずは見てもらったほうが早い。わしが手に持っているなんの変哲もない二つの石。まずはそのうちの一つをあの岩へと投げるぞ」


 そう言い、剣翁の投げた石は軽く放物線を描きながら数十メートル先の大きな岩にコツンッと音を立ててぶつかり、その後コロコロと地面に落ちていった。


「あれが普通の石…そして、今から投げる石はわしが透夢幻ステルスヴィジョンを込めたものじゃ」


 そして、投げた二つ目の石は先ほど同様軽く放物線を描きながら岩へとぶつかると大きな岩にめり込み、そして大きな音を立てながらその岩は壊れていった。


投稿頻度遅いくせに今年いっぱいさらに投稿頻度落ちるかもです。

申し訳ないです。

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