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夢想の創造 〜幻想世界に生きる〜  作者: 龍の使い
第二章 鋼の内、瞑想から幻想へ
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クウのおせっかい

 

『俺を謀ったな?』


 一面黒の空間に戻ってきたカイが発した一言目がそれであった。


 その表情には多少の不満と怒りが見え隠れしている。


 そして、それを予期していたクウの回答は淡々としたものだった。


『謀ったなんて大袈裟な。僕は知って欲しかったんだ。上には上がいると。今までの君は少し慢心してたいただろう?』


『………ちっ』


 クウの質問に対してその自覚のあったカイは舌打ちをする。


 確かにクウの言う通りカイは慢心していた自覚はあったが、それは実力に裏付けされたものだと思っていたのだ。


『カイ、君は天則という最強格の力を得た。だが、それによって君は慢心という毒を体の中に飼ってしまった……いや、違うね。君はその慢心、独りよがりなその想いからあの悲劇を生み出したのだろう?』


『………ああ』


 カイは忘れていた。


 その慢心こそがかつて自身を絶望へと陥れたことを…いや、意識しないようにしていたのだ。


 自身がその想いによって暴走しないようにするために。自身が暴走したら、もう止める手立てはないのだから。


 だがカイは天則という力を得たことで刻の慢心()が知らず知らずのうちに増幅していることに気がついていなかった。


 それがまるで遅効性の毒のように真綿で首を締めていることに気づいていなかった。


『刻は君という存在を作り出すことで悲劇を種を一切合切忘却させた。だがカイ、君自身はどうだ。慢心を忘れるどころか天則を得たことでさらにその慢心()を強くさせた。君は刻の方の体の耐性を上げることで慢心()をどうにかするつもりだったが、僕としては君の慢心()の方も解消すべきだと思った』


 だからこそ、それに気づいていたクウはカイに剣翁と接触するように進言した。


 あの時のカイなら必ず剣翁に対して攻撃を仕掛けると思っていたから。


 そして、剣翁の力の一端を知っているクウはカイが負けると踏んでいたから。


 そのことをきっかけにカイにも成長してほしいとクウは思っていた。


 カイの存在で少しおざなりになっていたが、彼らを正しい方向へ導くことがクウの使命なのだがら。


『ああ、お前のいう通りだ。確かに俺は慢心していた。それが俺たちの強みであり、弱みだと言うことはあの時の嫌というほど体験した。だが…自尊心、それは俺たちの力の根幹だ。意識しないようにしていたことは認めるが、それを忘れたことは一度もない。それを失うなんてことは絶対にありえねぇ。だから俺は刻の耐性の方を上げようとしたんだ』


 ただ一つ誤算があるとすれば、カイが陣の夢幻ヴィジョンを使えるようになっていたことと素直に自身の弱さを認めていたことだった。


 刻の方に注力していただけで天則を使いこなす努力をカイもしていた。


 自身の想いの根幹が自尊心であり、その想いがあらゆる強さによって成り立っていることをカイは知っているし、そのために自身の弱さをを認めるべきだということをちゃんと理解していた。


 そのことに覚醒前の刻のことを知っているクウとしては知らず知らずのうちにカイも変わっていることへの驚きと共に彼もまた成長していることに対する嬉しさで笑みを浮かべる。


『そこまでのことは言っていない。毒も使い方を誤らなければ薬になるしドーピングにもなる。君はそれを所構わず振り撒きすぎているからその使い方をもっと考えようということが僕が言いたかったことさ』


『ああ、分かったよ。もうちょっと自分の感情の振り方を考える。もう毒に耐性のある怪物に噛みつかれたくないからな』


『君がいつか戦う相手も君と同じ力を使う。僕が欲しているのは天則を使う君じゃなくて、使いこなす君だ。……期待してるよ。僕は君が勝つことを応援しているんだから』


 応援している


 クウの計画を知らないカイにとってその言葉に少し違和感を感じながらも、いまは答えてくれることはないだろうし、天則を教えてくれたことやこれまで手助けしてくれたことを考えるとクウが自分が不利益なことをする可能性は低いだろうと思い、それを飲み込んだ。


 それと同時にカイは気になっていることをクウにぶつけた。


『…なんだあれは』


 それは剣翁の力のことだ。


 クウはカイと戦って勝つと言っていたことから彼の力を知っているのではないかと考えてのことであり、自身の力の向上に役立つのではないかと思っての問いであったが、クウの回答はカイの想定している物ではなかった。


『分からない。夢幻極致プライマルアーツ異則付与リーフェンどころか天則でもない。というかあれを夢幻ヴィジョンと呼んでいいのかすら分からない』


 あの時の対峙したカイは剣翁は彼の力がなんなのかまるで見当もついていなかった。


 どうやってカイの夢幻ヴィジョンを斬ったのか全く分からないし、彼からは想力オドは感じられるのだが、それを夢幻ヴィジョンに形成しているところを一切知覚することができなかったのだ。


 だからこそ自分よりも夢幻ヴィジョンの知識を持っており彼のことを以前から知っていたクウに聞いたのだが、彼もまたカイと似たような意見だったようだ。


『じゃあなんで俺が負けると判断したんだ?』


『……なんで彼があの寓話獣の跋扈している場所に家を構えているか知ってるか?』


『強いからだろ?』


『それも正解だが、正確に言うと彼はあの地域の王である《カムイ》とある盟約を交わしている』


『盟約?』


『簡単に言えば相互不可侵の盟約だな。お互いがお互いを攻撃しないと言うものだ。これを滅亡しかけた《カムイ》が彼に持ちかけたものだといったら信じるか?』


『……まじか』


『本当だよ。僕が初めて彼を見た時は純獣ピュアの《カムイ》数体を無傷でいなしていたからね』


『………そりゃあれだけ強いわけだ』


 クウの言葉にカイは驚くと同時に納得もしていた。


 純獣ピュアの強さがかなりのものだとカイも知っている。


 そして、そいつらが盟約を結んでまで戦いを避けたということは実質負けを認めたと言うこと。


寓話獣にとって負けるということは屈辱的なことであり、それも死ぬことなく認めたということはかなりのもの。


つまり、そうしてでも彼との戦いを避けたかったということ。


 そんなこと今のカイもやろうと思えばできるがそれは天則を使ってであり、天則を使えない彼がそれを成したというのははっきり言って異常なことである。


 その事実こそが彼の強さを証明していた。




『それはそうとクウ』


『なんだ?』


『ミーミルでの戦いのとき思ったがあの技名はなんだ。使いずらい。次からは別のやつにする』


『……え?かっこいいだろ』


『戦いにかっこよさなどいらん。というか長い』


『うそだろ。あんなに時間をかけて考えたのに…』


『暇だったんだな……』



 〜〜〜〜〜



「えーーと」


 どうすればいいのか分からない


 それが目の前の光景を見た刻の感想だ。


「ああああああああああああーーーーーー!!!!忘れろ!今すぐに忘れろーーーーー!!!」


「ほれほれわしはここじゃよ。かわいいかわいいコシンプちゃん」


「喋るな!もう何も喋るな!!」


「そんなこと言わずに。さっきみたいに抱きついてきてもいいんじゃぞ?」


「あ"あ"あ"あ"あ"ーーーー!とりあえず一発殴らせろ!!」


 突然部屋の外から聞こえてきた大音量の叫び声で飛び起きた刻は何か緊急事態が起きたのではないかと急いでその声のところに向かってみると寝室だろう部屋でコシンプが剣翁に襲いかかろうと暴れ、剣翁はそれをひらりひらりと躱しているところが目に入ってきた。


 刻は初めてコシンプが剣翁に襲いかかっているのだと思い助太刀しようとしたが、良く見てみると剣翁は楽しそうにコシンプのことを揶揄い、彼を襲ってるコシンプの顔は真っ赤に染まっており、どう見ても彼を殺そうと襲いかかっているようには見えなかったため傍観することにした。


 その後も暴れ回った二人はいつまで経っても剣翁を捕まえられなかったからか、少しの沈黙を経たあとコシンプは彼に対してギャーギャー騒いだのちズンズンと擬音がつきそうな歩きで部屋を出ていった。


「よし、それじゃあ朝食でも作るかの。刻よ、すまんがこの部屋を掃除しといてくれんか?」


「あ、はい」


 その後剣翁は何事もなかったかのように刻へとこと部屋の掃除を頼み、自分は朝食を作るために部屋を出ていった。


 剣翁に頼まれた通り部屋中に散らばった破片などを一箇所に集めて軽く掃除をした刻は剣翁の朝食ができたという言葉に昨日案内された囲炉裏のある部屋へと向かうと、そこには一足先に部屋に入ってきたのかコシンプが座っていた。


 どう見ても不貞腐れた表情の彼女に近づけるような雰囲気じゃなかったので少し離れたところに座る刻。


 だが、刻が座った瞬間コシンプが彼の方へと顔を向けた。


「おい」


「は、はい!」


「さっきのことは忘れろ。いいな」


「…は…はい」


 忘れなければ殺すと言わんばかりの表情に刻は頷くしかなかった。



 〜〜〜〜〜



「それじゃあ、修行を始めるとしようかの」


「はい師匠」


 朝食を食べ終わったあと、刻は修行を行うということで剣翁に連れられてひらけた庭へと来ていた。


「まずは今の刻の実力を測るかのう」


 剣翁は刻へと振り返りながらそう言った。


「どこからでもかかってきなさい」


 剣翁は刀に触れることなくその場でだらりと両手を下げ脱力したまま状態のまま立っている。


「《純鉄の刀》」


 刻は手には夢幻ヴィジョンで形成した念の為刃引きされた鉄の刀を持って構えた。


 刻と剣翁の距離は数歩程度しか離れておらず、そのまま刻が刀を振れば当たるほどの近さであった。


「…行きます」


 そう言うと刻は剣翁に向かって右から袈裟斬りを仕掛ける。


 剣翁はそれを重心を後ろへ傾けることで躱そうとしたが、その動きを見た刻は左足を背後にずらして半身になる袈裟斬りの体勢から突きの体勢へとスムーズに移行し、そのまま流れるように突きを放った。


 剣翁は体の重心が後ろに傾いている今避けることはできない。


 当たる、そう確信した刻であったが次の瞬間、剣翁は左手の甲を刀の刀身にあて、そのまま刀の軌道を右に逸らし、その勢いで刻は体が右前に引っ張られ、対して剣翁は逆の左側へと体をずらした。


 両者共にその場から数歩動く結果となったが、意図して動いた剣翁と意図せず動いてしまった刻とではその後の対応に大きな差があった。


 刻が気がつくと刻の首元には手刀が添えられていた。


「まずは一本」

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