第六話 坐る
いかん、興奮してる。
夢の中で興奮して現実で覚醒することもあるから、幻覚の中で興奮することが悪いとも限らないが、ここは落ち着こうか。
きっと、声をかけてきた連中の幻覚、あれはリアルで家族が心配して声をかけてきたのだろう。
去ったのは、救急車を呼ぶ為に電話をかけに行ったのだろう。
うまくすれば、俺が寝たのは、麻酔をかけられたのかもしれない。
日が暮れたのは……現実に外界の光量が減ったのかも。カーテンのかかった病室に運び込まれているとか、さ。
つまり、俺はじっとして、もう一度意識が途切れれば、今度こそ幻覚から醒めるかもしれない。
そうだ、おちついて、のんびり待ってやればいい。
待とう。
最初と状況は変わってないんだ。
幻覚内容なんかで不安になるんじゃあない。幻覚なんかに囚われるな。リアルを想え。
俺は、ふと思いついて、身を起こそうとする。
ずっと動かずに居る身体は固まってしまったかのようで、無理に動かそうとすると痛み、力を入れたくない。
少しずつ、動かして、やっと起した。
これが幻覚なのか、本当に。
リアルの俺は、今どうなっているのだろう。全く動いていないのなら良いが。
少しだけならいいかと思い、草の上から土の上へ、ずりずりと移動し、胡坐をかいた。
そして半跏趺坐を組む。
幻でなら結跏趺坐だってできるんじゃないかと思ったのだが、残念ながら股関節はいつも通り硬いままだった。
頭はバルーンが浮ぶが如く、手を中品の印に組み、息を次第に細くして、息の数を数えだす。
すぅぅぅぅぅぅ~~……~~~…………。
暫し、坐る。
坐り続ける。
さあ皆さんも御一緒に (゜∀゜)