第十四話 村の騒ぎ
俺は裏山に上って薪取りをしていた。
頭上で小鳥がひよひよひよひよ、と啼く。
それに対してのものか、それとも全く関係ないのか、別の処でほーいーほーいー、と囀りが聞える。
実に平和だ。
幻覚だとしても、今はこの平和を味わうことにしている。
里山の長閑さを愉しみつつ、また一つ薪を拾って、土埃を払って、左腕に抱える。
まとまった数になったし、そろそろ結わえておくか。
そろそろ腰が痛くなってきたぞ。
少し前に見かけた倒木の所迄戻り、腰掛けて一休み。
あ、よっこいしょ。
背負子を下して、提げていた薪の縄を解き、背負子に既に積みあがっている薪の束に加えて、縛り直す。
風が気持ちよい。
甘く色々な香りの溶け込んだ清涼感のある空気の中に、たまにつんとする煙の臭いが混じる。
俺自身は垢まみれなうえに土埃で汚れていて、そこに虫除けの草汁をたっぷりなすりこんでるから、変な臭いを放っているが。
働き続けて少し痛む腰をさすり、やわやわと揉んで、と、なにやら村の方が騒がしい。
人の声がする。
かなりの大声で叫んでないと、此処迄は聞えない筈だ。
何事だ?
木々の間から遠間に村の様子を窺うと、村人同士で争っている。
え?
目を疑った。
なんと長物を振り回している奴が居る!
倒れて起き上がってこない者の姿がある。大変だ!
重たい薪の束を載せた背負子はその場に置き去りにして、山歩き用の杖を引っつかむと、俺は急いで村に戻るべく斜面を慎重に降り出した。
小道近くまで降りてくると、走り出す。
あー、また一人のされた!
何が、一体何がどうなってんだ!?
訳が分らぬ儘、俺は無我夢中で村へ走って行く。
どこか遠くで犬の遠吠えが哀しげに響く。
鼻を衝く煙が次第に濃くなってくる。
草鞋がぱったぱったと泥をはね散らかした。




