第十三話 村の暮らし
刺激は多い方が良い。
その方が脳が活性化して幻覚から醒める効果が高そうだ。
剣や槍を振って戦ったり。
宝を漁ったり。
女を抱いたり。
博打をしたり。
海の彼方へ渡ったり。
そうしたいのだが、当面はこの村での借りを返す為にひたすら地味ーーーな生活を続けている。
此の村、長老の小ちゃな藁葺き小屋だけに板張りがしてあって、あとの家は大きさこそ長老の小屋より大きくとも、どれも土間しかない竪穴住居だった。
いつも煙の臭いがつんと鼻を刺す。
道具は石器や土器、骨角器がほとんどで、青銅器が僅かに貴重な道具として存在する程度。
荷車も全部木製だった。
ただ植生は豊かで、水田や畑の収量も多い。
土が肥沃で水も豊富だ。
そこを家畜に牽かせた大鹿の立派な角を犂として使い、土を充分に切り裂き、木具で掘り返し、畝を作って、間隔を開けて種苗を育ててる。
蛭に吸い付かれては、常に煙が立ち上ってる焚き火の燃えさしを近づけて、じゅっと蛭を焦がして、落ちた奴を殺している。
足許は草鞋。
閑さえあれば、稲藁で縄を綯い、草鞋を編み、余裕があれば蓑や腰袋、背負い袋、その他身に沿う柔らかな道具を編み、硬い艶やかな麦わらで帽子を編み、竹の薄く削いだ皮で笠を編み。
閑さえあれば、岩の平らな面で石器や骨角器や木器を研ぎあげ。
閑さえあれば、石庖丁で細い木や枝切れを傷つけてへし折り、木器で皮を剥ぎ取って丸太にして、日蔭に積みあげ。
閑さえあれば、特定の木の樹皮を縦長に剥いで、裏の繊維を削いで、その繊維を丸め束ねて紐にする。
閑さえあれば、蔓をうまく手繰って巻き、それを切れないように裂いて、割いて、紐として枝同士を結わえて棚を作る。
閑さえあれば、溝に溜まる土砂や朽ちた枯葉や枝、屍骸などを木器で取り除く。
閑さえあれば、害虫を潰す。
閑さえあれば、煙で燻す。
他にもやる事は幾らでもある。
或る意味で刺激に満ちているが、変化は少ない。
その所為か、いっかな幻覚から醒めずに居る。
村人の話では、そろそろ収税吏が来る頃という話だ。
そんな時に、それは起った。




