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第十話 喰わず衰弱

しかし、此処へ来て、排便に問題が生じた。

人家である。

適当にそこいらで済ませればよかった野原ではない。

一応、幻覚の中では幻覚のルールに従おうかと思ってる。

もちろん夢の中の排尿でおねしょするのと同じで、本当は排尿寸前で幻覚から醒めてほしいのだが、醒めないのだから、次善の策というものである。


小屋の外に出てやれということで、仕方なく、長老様という幻影の言葉に従って、外で用を足した。

あー、やれやれ……リアルでどうなってるのか、気になるが、どうしようもないものは仕方ない。

此の幻覚の中では、村の便所では、特定の草の葉を使うらしい。

なかなかバイオでエコで、使い心地も宜しかった。

リアルでの惨状さえ考えなければな。



暫くは只管、坐るか寝るか排便するか、或は話しかけられれば已む無く幻と問答するか、していた。

幻覚の中で物を食うような真似をすれば、リアルでは窒息する惧れもあるかもしれぬと、村に運び入れられてもまだ一切喰わずにいたら、解脱しそうな感じがしてきた。

これが良い事なのか悪いことなのか、俺には不分明ふぶんみょうなので、ただ寝るだけになった。

そのうちに、愈々幻覚の中でも起き上がれないほど衰弱してきた。

リアルでも幻覚から醒めないので愈々俺の肉体が衰弱してきた、その反映なのかもしれない。或は、最初からここまでリアルでは僅かな時間であって、俺が脳性の発作を起して、脳の重要な部位が酸欠で死に掛かっているのを感じて、こんな幻覚を観るのかもしれない。


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