4,5、改め出逢いの時
まだリーセルトが5歳の時、リーセルトにメイドがついた。
そのメイドを連れてきたのはお父様・・では無くお父様の直下にいる武芸に秀でた側近だった。
「挨拶しろ、これからあんたの世話をしてくれるやつだ」
本当に心から嫌そうな顔を見せていた側近は後ろに控えていたメイドを射殺すような顔で顎でクイッと前に出させるとメイドはビクビクとリーセルトの前に立つが堂々とした挨拶をする
「初めまして、あなた様のお世話をさせていただくネセリーともうします!
歳も近いので仲良くして頂ければ嬉しいです!」
「はい、わかりました」
淡々と返したリーセルトにメイドは聞かされていた通り無愛想だなという印象だった、しかしそれ以上にこの子の|存在感があまり感じられない《・・・・・・・・・・・・・》ことに疑問をもつ。 挨拶も終わり側近は役割が終え側近は帰っていく、帰っていった。
すると、リーセルトは人が変わったようにニコッと人懐っこい笑顔を見せて話し出す
「リーセルト!リーセッてよんで♪ これからよろしくね♪
ネセリーでいい? ネセリーはどうしてきたの?」
これには間違った人をあてがられたのかと動揺してしまうが平静を保つ
「お名前を呼ぶわけにはいきませんのでお嬢様と呼ばせていただきます、よろしくお願い致します
私が来た理由は先程紹介された通り、お嬢様の身の回りのお世話を・・・」
「うん♪ありがとう♪
ちょっとこっち来て?」
リーセルトはネセリーをベッドに腰掛けさせようとするがそれを断って立っているネセリーにグイグイと引っ張って無理矢理座らせる
「(結構、力が強い!?)」
引っ張られる程ではなかったが少し抵抗しないと流されるくらいの力だったと5歳の子にしては強いと感じた。
「わたしねちいさなときからよくねつがでたの」
ネセリーはそうなんですねといきなり何の話しをし出すのかと思考を切り替える
「いまはもうねできるの♪」
「!!?」
「あはは♪ネセリーもかんじれる?」
「え! ・・・・・。」
急にリーセルトの存在感がとても大きなものに感じられて思わずに立ち上がってしまうと、リーセルトは可笑しそうにカラカラ笑っていた
「まりょくだよ♪」
「・・・そうですね…、私には感じとれませんが存在として分かります」
「へぇ、それおもしろいね♪」
無邪気に目を輝かせている子供。ネセリーは見た目も相応で子供らしい喋り方の目の前の子に大人を相手しているようだと感じてしまう。
「ネセリーはともだちになってほしいからおはなしをするね♪」
「は・・い」
それから語り出したのは5歳とは思えない内容だった。子供というより赤ん坊の時からのお話しで至る場面で「いらない(存在)」「邪魔(な子)」等と耳を塞ぎたくなる言葉が紡がれた、しかしリーセルトはなんてことはないように当たり前の事象として話していた
「それでネセリーはどうしてきたの?
ネセリーはあんしんできるの♪」
一方的に話し終わった後の言葉だった、徐々に弱らせる計画である毒の話しも聞いていたからネセリーを見る笑顔に偽りが無いことが信用されてると嫌でも気付かされて涙が出てきた
「だいじょーぶ?」
「はい…、はい!」
ネセリーは覚悟を決めて歳が近いなら油断するし、仲良くなれば(弱らせるのも)成功しやすいと自分が選ばれた事を話した。
するとリーセルトは静かに精一杯とネセリーを抱き付くとネセリーの心が溶けていくようだった。
・・・。
落ち着くと昔から友達だったように色々お喋りをして親睦が深まる、もうネセリーにはリーセルトを裏切るような気持ちは皆無で齢10にして生涯の忠誠を誓うような友達を得たのだ。
「だれかまほうをおしえてくれないかなぁ」
リーセルトの呟きにネセリーは考えた、話しを聞く限り周りには誰一人と味方がいない、それで一人で身に宿った分相応だった膨大な魔力を制御しきったのだ。リーセルトには魔法の素質はあるので信頼出来るやり方を教えてくれる人が必要だった。
ネセリーは自分にその才が無いことを心底残念に思った。しかしその時頭に浮かんだのが魔法師である姉の存在である、しかし…とリーセルトを見るとニパッと待っていて可愛くて悶えてしまう、頭を振って再び素早く思考を巡らせるとリーセルトの芯の強さからきっと大丈夫だと判断してリーセルトに話した。
ネセリーは急いで簡潔に手紙を書いて気配を探りつつ廊下の何の変哲もない置物の陰に手紙を擦ってから置いて消えるのを確認するとお部屋に戻りリーセルトに伝えた。
翌日、日も昇っていない早朝、ネセリーは少女の声で起きる
『来たぞ☆』
「静かにして下さい、他の方が起きます」
ここは住み込みでメイドをしている人たちの部屋なので数人共同の部屋だ。
ネセリーはすぐに身支度を整えて仕事着を着用するとリーセルトのお部屋へと足を向けた。こんな時間でももちろん見回りをしている人はいるので脇にズレてお辞儀をしてから通り過ぎていった、お部屋の前で待機する
『可愛いいなぁ、わたしもそれ着たい』
「ダメです、着るなら買ってでも作ってでもして下さい」
『同じの売ってない…』
見られていたらネセリーの独り言である、姉なる存在は居るのだが姿は魔法で見えなくなっている、ネセリーにも全く見えておらず気配だけで特定していた。
少し経つと中から声がした、まだまだ暗い時間だ
「・・・ネセリー、はいって」
「!、・・・失礼致します」
『おぉ?』
姉なる者が関心をもったような不思議な声を出してネセリーと共に入室するとベッドの上でペタンと座っていた可愛らしい少女の姿を捉えて近くにいくと少女はボーっとしながらもジッとそちらを見ていた
「・・? だれかいる・・?」
『!?』
分かっていないようだが視線に追われ、気付かれたのか!?っと後ろに跳んで逃げる姉なる者
「ふふ♪おはよう御座います、お嬢様。お早いですね?」
「おはよう♪ なにかあるっておきちゃった♪」
にへらと笑う姿がポーズと合わさってこれまた可愛らしいと抱き付きたくなる、そんな妹に姉なる者は頬を膨らませていた
「そうでしたか♪ 昨日お話しした魔法師の方が早速に来てくれました」
ネセリーが視線を姉なる者に移すとそこにはおらず少し上にリーセルトはスイっとすでに向いていた、そこには偉そうにふんぞり返ったポーズの小さな少女が居た。
少女がゆっくりと降りてくると決めポーズ
「可愛いでしょ☆」
「うん♪」
「わたしはネリルだ♪ 魔法師であんたに教えにきた!」
「リーセルト!リーセね♪ どくのなおしかたおしえて♪」
「はーはっは! いいぞ☆」
こうしてリーセルトは魔法の講師を得たのだった。
・・・。
師となった可愛い少女ネリルは規格外の魔法使いだったようで空間魔法という「空間」を創ったり操ったりする魔法が大の得意で普段は隠していた。
空間魔法は操るのがとても繊細で大量の魔力を使うとても難しい魔法で過去にも数人しか使える者はいなかった魔法だ。
「ここでうるさいのはダメらしいから外に行くぞ☆」
「がいしゅつもいけないんだ…」
「はっはっは、それならわたしに任せとけ☆」
ネセリーに静かに!と怒られるが気にしないようだ、ネリルが何か言葉を紡ぎ出す
「・・・彼の地と繋げし真なる道よ!今我らを移ろいせし染め上げい!エスパス!」
「おー!」
魔力が急激に動いて3人を包み込む脅威とも取れる光景に視えているリーセルトは感動した。
次の瞬間にはただ何も無い無地の世界が目の前にはあった。
「ここは♪ここはなに!」
「ここは今創った場所だ☆」
「おー!」
「私は初めて巻き込まれた時は恐怖を感じましたよ、説明くらいして欲しいですよね」
「いらないみたいだぞ?」
リーセルトは狭い空間を隅から隅へと確かめるように走っていた
「あぁ!可愛らしいです♪」
「わたしよりもか?」
「はい!」
「むー…」
ネセリーは姉も可愛いですと宥めながら自分は食事の準備もあるから部屋にいないといけないと戻してもらっていた。
「ではおしえてください!」
「わたしは可愛いが大人だからな、これからは師匠と呼べ!」
「はい!ししょー!」
「いいね♪師匠頑張るよ!」
「はい!ししょーがんばってください!」
「うん☆
毒の治し方だったね!回復魔法はわたしも使えないんだ、毒は体の何処に危害を及ぼす?」
ついつい大人に話すように指導しようとしてしまったが相手はまだ小さな子供だと思い出して簡単な言葉に言い直そうと思ったのだが
「どくはばしょじゃないです!ぜんぶをわるくしていきます!」
しっかり理解していたことに驚いてこれならとこのままいくことに決めた。
「そうだよ、血に紛れてまわりをどんどん悪化させるんだ
だから魔力の扱いをまず覚えよう!」
「はい!まりょくはつかえます!」
「え?」
見せるが速いとリーセルトはネセリーに見せたように自分の魔力を汲み上げて放出した。
ゾワリと多量の気にあてられネリルは驚いてしまう、自分が扱いを覚えたのはたしかにリーセルトより少し上の時だ、しかし、どうやるかも分からないし魔力という存在すらも教えてもらわなければ知りもしなかった。 何ににも触れなかったという少女が使える物でないのだが、緻密に扱い放っている目の前の少女に関心を抱いてしまった
「ししょー?」
リーセルトはネリルは魔力に長けている人だから大丈夫だと思っていたがボウッとしていたから驚いたのかと勘違いする
「あ・・すごいよ!それで何日もと思ってたんだ、出来るなら次いくよ☆
血は分かるね?」
「はい!」
「血に魔力を溶かすの、それで毒は効果を失う
だけど血は流れていて魔力がそれを止める可能性があるから危ない」
ネリルもあまりに専門的なことは分からないので危険な要所を伝えていくと左腕をリーセルトに差し出す
「わたしはすぐに戻せるから練習してみよう☆」
「はい!」
リーセルトは魔力をネリルの腕に放出するが上手く入らないので首を傾げる
「他人にやる時は相手の魔力を感じて薄く重ねるようにやるんだ」
「おぉ!」
逆にネリルがリーセルトにお手本を見せると感覚を覚えたようではやくやる!と意気込む
リーセルトはネリルの腕に触れると魔力の流れに沿わせるように薄く薄く重ねていくと合間から体内に流れて血管に届いていく
「そう!リーセすごいね!
そのまま血を感じて溶き流し入れるようにするの」
流し入れられている方としてはほんのりと温かい程度で感じられない人には分からない、だから、失敗ありきのすごく危険な練習である。ネリルも五感を引き上げ注視していたのだが・・
「ふぅ…これでいいの…?」
不安そうなリーセルトだが、血に魔力が注がれ逆流もせき止めも起こらない、同調も保っていたので拒否反応も無し、全身に巡っていったのも感じられた、完璧だった。
「本当に初めて?」
「うん」
「大成功だよ!」
「やったぁ♪」
「回復魔法の方は自分で覚えてね☆
わたし勉強苦手だから覚えてないことは分からなーい☆」
「ありがとうございます、ししょー♪」
何ヵ月もかけて覚えることがたった数十分で終わってしまった、あんまり魔力を使い続けても危険なので(この時はそう思っていた)、お部屋に戻ると朝食が運ばれていた
「私はこれに毒を入れました」
「毒って!?」
「静かにして下さい」
「はい…」
説明してないのだろう、ネリルは妹がそんなことをするわけないと思うと同時に最初の魔法なのに「どくのなおしかたおしえて♪」と言った意味を考えた。
「もうおぼえたよ♪」
「さすがですね♪」
「うん♪」
ネセリーは何かあった時のためにネリルへお願いした、しかし、それは杞憂に終わる。
リーセルトはそれをパクリとなんの躊躇いもなく食べるとさっきの特訓を思い出しながら自分の血に魔力を注ぎ流していく、同調作業が無いだけとても簡単そうにやっていた。
食事も無事に終わるとネリルはホッとして説明を求めるのだった。
・・・。
事情を知ったネリルは納得したように自分を雇っていた最高権威者がそんなやつだったのかと怒りを覚える
「ししょー、ひつようないものをひろったらすてるよね?
そのままだとあぶないものはこわしたり分解するよね?
そういうことだよ♪」
「そうだよね、うん、そうなんだ」
「私はお嬢様を拾いたいです!拾われたいです!」
「ありがとー♪」
難しいことだが2人はすぐに理解して納得してくれる。
ネリルもこれからずっと協力してくれることになって、リーセルトは色々と教わっていった
この時に、ネリルはリーセ貯金といずれくるであろうリーセルトのために使うお金を貯め始めたのである。
また大人らしさを捨てて子供らしさこそ可愛い道を追求し始めるのだった。