2、解除士を仲間にしたい
街に入るためには簡単な検問を受ける、王都に近い街だけあってそれなりには順番を待っている人がいるようだけど数分で回ってくるだろう程度である。
・・・とリーセルトは思っていたのだが馬車はゆっくりと前まで行ってしまい鎧を着た兵士の人の前で止まると確認を受ける
「割り込みはイケナイことよ?」
「後で説明するから、今はカードを出しておけ」
冒険者の証明である冒険者カードを出すと兵士の人は驚いたようにしながらも丁寧にカードを返して通してくれたのだった。
入って脇に寄せて止まるとそこで降りると馬車は行ってしまい見送った
「フィー大丈夫?」
『だいじょーぶ♪』
王都に比べたらまばらの人通りでネフィもスイスイと飛び回れハシャイでいた
「声は抑えてくれ」
「『はーい♪』」
メルヘはもう無駄かなと思い始めた注意をして先ずはギルドを目指すのであった。
道すがらに貴族馬車の優遇されると検問のことを聞いて何日か前に見た建物とは少し小さなギルドに入ると仲間募集の掲示板を見に行くがリーセルトは迷うことなく辺りを見回して向かった
「リーセはギルドに登録したばかりと聞いた・・というかしていたけど、その時も説明聞いているような時間もなかったし詳しいのか?」
「ちゃんと事前に調べてきたからね♪」
『リーセは賢いの♪』
「おぉ!賢い賢い!」
「・・・子ども扱いしてる?」
「おじさんからみたら子どもだよ」
「そうだね♪」『メルヘ、若い!』
「フィーは優しいな」
メルヘが初めて冗談を言ってくれたから更に上機嫌になった
仲間募集板に目を通すが自分のところへ勧誘は多いが自分を売り込みは意外と少ない、そして解除士限定となると1枚あるだけだった
「トック、この人だけか会ってみるか?中々優秀そうだが」
「ううん、いいや」
何も感じなかった、と思っていたら後ろから声が掛かる
「解除士をお探しかな?あまり必要とされないが珍しい」
白髪、白髭のお爺さん、茶色の帽子に長いコートと妖しさ満点だった
「見たところ、盾使いでそちらも珍しいが?」
盾を必要とする者も殆どいない、護れる範囲を考えれば攻撃しつつ防いでいた方が良く他の役目に任せた方がいいからだ、盾使いの数も今は殆どいない
「俺に出来る選択肢がこれだけだったので」
「お二人の関係は?」
メルヘはズケズケと質問してくるお爺さんを警戒し始める、好奇心から興味だと思っていたが何やら違うと感じた
「数日前に私の仲間に勧誘して仲間になりました!
お爺さんは何でしょうか?」
「ふむ、良い判断だ
ペラペラと喋っていると危険だよ、お嬢さんみたいにするか、切るかした方がいい」
知り合いでも無くまだ出逢ったばかりと言ったリーセルト、誰が見てもそこまで繋がりがあるとは思えないだろう
するとお爺さんは一瞬でお兄さんになっていた
「僕はトック、解除士さ!
どうかな?仲間に入れてくれない?」
「え?え?」
「素晴らしい魔法をお使いになられますね♪
しかし、お断りします、〝直感〟に触れなかったので」
「そっか、残念、面白そうだったのに」
トックは大袈裟に肩を竦めて去っていった
「幻覚が使えるのはすごいねー、それも私たちだけに向けてたみたい」
メルヘには何がすごいのか分からない、それよりも騙されていたのか?優秀なのだから断らない方がよかったのではないか?自分は何をしていたんだ?と混乱していた
「メルヘ、私は人脈は〝直感〟しか信じないからね」
「わ、わかった。・・・ありがとう」
『リーセを信じなさい!』
「・・私を信じなさい!」
「・・・そうだな、信じるからここに居るんだ」
解除士は一旦諦めて依頼を受けることにする、とりあえず解除士募集はしておいた
依頼には幾つか種類がある、その中で一番多いのは魔物討伐に関する依頼だ、目的の迷宮でも探索するのにも必要なことなので動きを確かめるためにもこれを受けた
「2人とも最低ランクだから大したものは受けられないね」
「・・・正直、俺はこれでも厳しい」
「えぇ!?」
「リーセは大丈夫なのか?」
「もちろん初めてだから分からないよ
今まで対人戦でしか経験ないから」
「心配だ…」
ツッコミが無いくらいにメルヘは不安になっていると感じた
・・・
街から少し離れたところ
「ウィフラビットはどっこかな♪
メルヘに任せるよ、泊まりがけでも道具は全部揃っているから安心してね♪」
ウィフラビットは水色の毛皮のウサギで警戒心も少なく見れば襲う的な目立つし遭遇すれば向こうからやってくるし、とても探しやすい魔物である
「馬車の移動からの野宿はさすがに…、っと文句を言える立場ではないな、頑張らないと!」
メルヘはリーセルトに野宿をさせないためにも歩き回り探している、・・・が運がないのか今日はこの辺りにいないのか中々出くわさない。大分息があがってきていてリーセルトが休憩をすすめた
「はいこれ」
「・・・ありがとう」
「うーんと?メルヘわざとやってたりしないよね?」
「何がだ?」
リーセルトとネフィは静かにお喋りしていたが途中途中で何度か行く先にウィフラビットがいると分かっていた、しかしメルヘはそういう場所に向かうと決まって急に逸れて違う方へ行ってしまっていたのだ。
そのことを伝えるとがっくりと項垂れた、(分かっていたが)どうやらわざとでは無かったようだ
「すごい才能かも!」
『メルヘが先に行けば安全?』
「・・・こうなる前に教えて欲しかった…」
「ごめんね?メルヘ張り切っていたから
それにね訓練してあげるね♪」
「・・・盾使えるのか?」
「使えないけど知識はあるよ、でも最初は基礎訓練!厳しいから覚悟決めといて、明日からでもいいよ」
「教われるならお願いします!」
「『すなおー♪』」
独学で知識も碌に学べなかったメルヘには本当に渡りに船だった、本気で拾ってくれたことといいリーセルトには頭が上がらない
・・・。
今、目の前には2体のウィフラビットがいる。
いや、正確には約100メートル先で草を食んでいた。
「いるでしょ?」
「よく見える」
「言った通りだから頑張って♪」
「分かった!」
リーセルトを信じてメルヘは盾を構えてゆっくり近付いていく、半分行かないくらいの位置でウィフラビットが気付いたのかピクリと耳を動かすと素早く駆けてきていた
メルヘは盾を合わせる、先に蹴りに来た1体に盾を合わせ足を引きぶつかると同時に振り払う、それにもう1体が勢いよく頭から脇腹へと突っ込んで弾き返されていた
『相手は軽いのだから最初のを押し返しながら体の向きを変えて後のと同時に抑えるよ、上手く揃うことがあったら一気に押し返すのがいいと思うよ、仲間の援護もあることを想定して』
メルヘは再びやってきているウィフラビットの動きをよく見て盾を合わせている、たまに失敗して蹴りを受けているが今は1人として十分な動きである
『相手によって引いて吸収することや地面に刺す感じで斜めに力を入れることで耐えることも必要だからね』
最終的には大きな盾を自在に操るようにするのが目的だから、今はちゃんとした感覚を覚えて欲しい。
少し遊ばせていた後にリーセルトはネフィに魔法を使うとビュンっと風が吹いてウィフラビットだけをお空に巻き上げていた
「あ、えぇ…」
唖然としていたメルヘの前にリーセルトが現れる
「思っていた何倍も動きがよかった!すごいね♪」
『メルヘ、目いい!』
戦闘中に強化していたのは耐久力だけ、とにかくウィフラビットの攻撃は恐れるなと言ってあったが、メルヘの動体視力はすごかった
リーセルトがウィフラビットを気にもせずに回収するとメルヘはネフィが使ったすごい魔法について聞いてきた、リーセルトはニヤリと笑う
「フィー、さっきのメルヘに使ってあげて♪」
『わかった♪』
「え!?ま、まて!?」
もう遅いとそよそよと風が吹いてメルヘの下から風が舞い上がり?優しい風が通り抜けた
メルヘは目をパチクリして、本気のわけがないと思い直し慌てたことを恥じた
『どう♪どう♪』
「気持ちいいな」
「それ、ウィフラビットが受けたのと同じだよ」
「わかってる、今のを普通に使って下から風で飛ばしたんだろう?」
「そうじゃなくてさっき使ったのも今のだよ♪ ね、フィー?」
『そうだよ♪』
「え?」
「フィーはまだ生まれたばかりだから上手く使えないんだよ♪ 大事なことだから覚えておいてね♪」
精霊だからすぐに熟練するだろうけどと付け足される。さっきのを目の前で見ていた身としては言われた意味が分からずに悩む、また教えてはくれないだろうし1人考えるのだった
その後、数体倒してからギルドへ提出して報酬を受け取るとそのままメルヘに渡した
「基本は等分だ、それに俺であの数は倒せない…」
「私が見る限りにウィフラビットなら余裕でいけるよ・・・・ん?」
リーセルトは何か感じてそちらを見たが何も無い
「どうした?」
「んーん、メルヘもいざというときのためにしっかり持っていなさい♪」
『いなさい♪』
「う…わ、わかった…ありがとう」
今回の報酬も安い宿屋1泊分くらいしかない、最低ランク魔物の報酬は食事を取るか寝る場所を取るかくらいの報酬しか稼げない
ランクは一番高いのがSで次にアルファベット順で高い順にA~Gとなっている、メルヘはFランクで今日のでリーセルトもFランクになったのだ。昇格はCランクまでは自分が受けると申請すれば課題を出されて達成すれば昇格する、仲間で行動している人たちは基本団体で昇格を行え合わせられている。
Gランクは登録したの証で魔物を倒せるか依頼を5個達成すると上がる冒険者になりましたよのお飾りランクである。
「今日は外で寝る?宿屋に泊まる?」
「外では危け・・・できれば宿屋に入ろう、リーセは女の子なんだから」
「女の子、なんか新鮮!ふふ♪」
『リィッセはかっわいいおんなっのこ~♪』
メルヘは自分がからかわれたのかと思ったが違ったとリーセルトを見つめた
「・・・はは、宿屋だけどお金はどれくらいあるのか?稼ぐ目標にしないといけないから聞いておきたい」
「ならご飯食べよう!さっき良さそうな店を見たから」
お金の確認で贅沢にお金を使う、貴族馬車を使っていて今更だがやるせない気持ちになった。
・・・。
リーセルトが向かったのは街の入り口に近い路地に入った所に見えた店なのか?て思えるボロボロの廃き・・建物である、たしかに看板には「いっぷう」とかすれた文字で書いてある
誰に止める間も無くリーセルトとネフィは入っていくのに慌ててメルヘは触れるだけで開いて閉まらない扉をくぐったのである
中も想像通りのボロボロ、机なんて穴ばかりだし椅子は座ったら壊れそう。
しかし、心配を吹き飛ばすような少女の明るい声が響く
「いらっしゃい♪」
まだ自分と同じくらいだろうかとリーセルトは考えて少女を眺めた
「どうも~、何がありますか?」
「おすすめはこれだね!てかそれしかないです!」
「そうなんだ!」「そうなんです」
「「『あははは♪』」」
何だこれ?とメルヘは思った、とりあえず椅子に座るとバキッと割れてひっくり返ってしまう
「痛っ!?」
「メルヘ、大丈夫?弁償しないとね」
「大丈夫ですか!?
今すぐ作ってきますから他に座って待っていてください!」
「・・・・椅子を?」
さすがに机は使いずらかったので簡易机を出して待っていた
「お待たせしました♪ってあれ?」
「穴だらけだったから自分の出したの」
気にした様子もなくスミマセンねと簡易机に同じものを二つ並べるとさっき壊れた椅子の片付けをしようと周りを見て無い?とキョロキョロしている
「椅子なら片付けたよ♪出す?」
「いえ、壊れた椅子なんて要らないんで♪」
「・・・」
少女の性格がメルヘには理解できなかった。
料理は可も無く不可も無くなんとも平凡でお金を出してまで来る場所じゃないという感じだった
「お金だったね? あの馬車に数回乗っても余裕あるくらいはあるよ。それに・・・こういうのもあるから」
リーセルトがごちゃごちゃと装飾品の類を出す、儀式などで着飾れと付けられて返そうにも「お前が使った物なんて廃棄だ!」と頂けちゃった物だ
「わかったから出さないでいい!」
「大丈夫だよ、危なかったらビビっとくるから
あ、1つあげる、売ってもいいから」
「ありがとうございます♪」
「・・・受け取るのか…」
宿屋は場所を選ばなければたくさんあるので近くにあったところに入って一晩過ごした。
・・・。
「せーの、『おっはよぉ♪』」
「ん・・・おはよう」
慌てふためいて起きることを期待していた2人はつまんなそうにするのに寝起きながらに罪悪感を感じとりあえず謝った。
軽く準備をして誰か募集に来ていないかウキウキしながら宿屋を出るとリーセルトはまたしても何かを感じそちらを見る
「んー? カシェ」
「どう…!?」
メルヘの口を両手で塞ぐと周囲を確認した、何も変化は無い。
ふむ?と考えて周囲に向かって広範囲に魔力を薄くとばし散らした、声は出さないがこれにはネフィが喜び回る
「お!逃げた?すごいなぁ!
もういいよ♪」
「ん、何があったんだ?」
誰か見ていて探ったがどっか行ってしまっていたことを伝える
「昨日も一瞬感じたんだよね?」
「怖いなぁ…、俺たちに構う理由なんて無いと思うが
それにしてもリーセに出来ないことってなんだ!解除士の役目だろう?」
「誰がその人にしか出来ないって決めたんだろうね? 同じ人だよ、才能はあるかもだけど努力は出来るよ?
まぁね、私も魔法では攻撃系も回復系等もからっきしだったけどね♪」
当たり前のことだがみんな自分に一番向いていたからそれを極めようとしているだけ、ちょっとは出来るかもだけど他に本腰を入れる人はいない・・いるかもしれないがまず見ない、役目がそれなら他の人もよっぽどでない限り求めたりしないだろう
「・・・リーセといるとよく考えさせられる
いざ用に回復魔法でも出来るか練習してみるか!」
「あ、メルヘには無理、魔力がちょっぴりしか感じられないし、身体を巡るより留まっている感じだから行使出来ないと思うよ」
「・・・教えてくれてありがとう…」
本気で出来るとは思っていなかったがちょっと悲しかった…
・・・。
解除士の募集には誰も来ていなかったし新しい人のも無い、というわけでリーセルトが今日の予定はメルヘの訓練にすることを告げた、資金が尽きることもないし異論はなかった。
街の外に出る、するとリーセルトが突然芝居がかかったように話し出した
「ふふ♪私ってね、昔っからあまりお家から出れなかったのよぉ」
「身体が弱かったとかか?」
「ふふ♪分かっていらっしゃるみたいですけど?
そういうことで外に出られても目立つことは出来なかったのですわ、悲しいわね…」
「・・そうだろうな」
「でも私は支援魔法使いですのよ? 才能だけでは使えるようにならないの、でも特訓出来る場所がなかった! どうしようかしら?」
「とりあえず胡散臭いから止めてくれ」
「ひどーい♪」
ネフィもケラケラ笑っていて賑やかだ
「・・そうだな、家の中は場所があっても無理だろうし…、外・・庭・・、リーセみたいに防げる者がいれば部屋でも」
「メルヘいい線いってる! 部屋くらいしかなかったんだ! 協力者がいたよ」
それでも外れなら一体何があるんだと頭を悩ませていたら「エスパス」と聞こえ、ぐるりと脳が揺れる感覚になって次の時には正解が目の前に広がっていた
今、3人の前には一面畑のような地面の光景が広がっている、メルヘがわけがわからずリーセルトを見ると座り込んでいて少し荒い息をしている
「大丈夫か!!」
「…うん、休めば…大丈夫だから
師匠はこの…後すぐに…使っていたんだけどな…」
5分ほど休んだところで、少しなら魔法を使えるくらいにはなった
『あとはまかせて♪』
「…ありがと あれ…よりは…優しく…ね」
『わかった!』
そう言ってネフィへと魔法を使うと椅子を出して眠りに入った
「大丈夫なのか?」
リーセルトを心配するメルヘをヨソにネフィは魔法を行使して一面の土を変形させていった、突然の出来事にメルヘはそちらをただ驚き見ている
形成し終わるとフラフラとリーセルトの胸元に飛んでいって一緒に眠りについた
どうしていいかわからないメルヘは暫くは暇をもてあましているのだった。
・・・。
およそ1時間後
「ごめんね、説明してから来れば…もまずいね、フィーに説明させることを言ってから眠ればよかったよ」
少しは回復して楽になったリーセルトは起き上がり適当に座っていたメルヘに謝った
「もう大丈夫なのか?」
「うん、これくらいの空間を創るだけでかなり消費するんだ、私でギリギリくらい」
リーセルトの魔力が一般より遥かに高いくらいはメルヘにも分かる、それでなお倒れてしまうのだからどれほどの事を成したのか想像が出来なかった。
それに、魔法を上手く使えないと聞いていたネフィが目の前の光景を作った事も信じられないからリーセルトが補助したのだろうと思う。
暫く観察していたらこれはみちなのだと気付いた
「中々いい出来だね!
キツくも無く優しくも無くだね、フィーさっすが♪」
そこで遂にこれについて説明した「真ん中の線を絶対踏まずに跨いだ状態で走る」と簡単な説明だったなぁと大がかりな割に単純なものだったことに感嘆してしまった
「早速やってみてよ♪」
「わかった!」
コースは長方形のトラック、中心にはドーナッツのように何も無い所があってその縁には土壁が立っている
メルヘは軽く体を動かすと始めの位置から走り出した。 始めの一辺は見えていたがでこぼこの道だ地面は補強されて固いから足が沈むことはない、楽勝と思っていた
「うっ」
線での左右の違いが絶妙だ、形が一緒でも高さが僅かに違ったり、お互い外側と内側に力が入るような傾斜になっていたりと見極めが必要だった
「ゆっくりになってるよ~♪ 走ってくださいね~♪」
「わかっ…てる!、??、って後ろ?」
「こんにちは♪」
後ろで、普通に駆けるようにやってきたリーセルト
「魔法は使ってないよ? 先行くね♪
うん、ほどほどのいいつくりだね♪」
「・・・。」
さっきまで倒れていたとは思えなかった、あれは全力で駆けていると分かる速さで追い抜いていきすぐに角を曲がって姿は見えなくなった。
このつくりはまだ優しいと気付かされる、一瞬年のせいだと言い訳したくなるくらいの差だが、関係なくリーセルトはこれまで努力してきたのだろう。
再び気合を入れてなんとか角を曲がり次のところへ着くと地面が少し高くなっていて左右違った場所に穴がたくさんあった
「一歩一歩跳んでも進めるけど時間が無いと思って走ろうね♪」
「リーセ!?」
「こんにちは♪」
2周目のリーセルトがもうそこにいた
「いやしい位置だよ…さすがフィー、数は少ないけど師匠のを見ているだけあるよ
コツはね勢いが無くなる場所でも跳ぶ高さをよく考えることかな?
足も体力も感覚もかなり鍛えられるよ頑張って♪」
お手本のような綺麗に先に進んでいくリーセルトを見送ってそれをしっかりイメージして参考にする
正直、もう体力がかなり消耗していたが頑張らないとと思えるから不思議だ
スタートするが足場のズレによりよろけてどちらかに付いてしまう、極端に近いところも更に次を見ると二つ分は距離があって目の前の足場に着地せざるを得ない場所もあり速さを保っての通過はとてもじゃないが不可能と感じてしまった
「リーセの見てると簡単そうだったが…」
そこで足に限界が来て残りは一時断念する
「始めはそうだよ、一つ一つ往復して慣れていくだけでも次に繋がるよ」
『…ネリル、こわい! かわいい!』
メルヘだって一朝一夕に身に付くとは思っていないが走るくらいだけなら出来ると思ってたからちょっとショックだった
「怖い?可愛い?ネリル・・・さん?」
「あー…、私の師匠なんだけど鍛えるために同じようにつくってくれたんだ、でもね、とんでもなく厳しくって何度も死ぬかと思った…
とりあえず守りが出来なければ怪我する…
メルヘなら盾を持ちながらさっきの道を全速力で周りを警戒しながら走り抜ける」
「え…」
無理だろうと、リーセルトの師匠がどんな人なのか気になると共に、これまでにリーセルトがどんな訓練をしてきたんだと想像出来ないと恐れ戦くのだった。
朝食と昼食を兼ねたリーセルトのおいしいご飯を休憩を挟んで午後も反復訓練、始めの直線をひたすら行ったり来たり・・・といっても1往復するだけでバテてしまうが
その合間にリーセルトが少し実演とネフィと共に気になっている訓練をメルヘにみせる
先にネフィはメルヘに見えないので、ネフィは闇を纏うようにして不気味な存在としては見えるようにした。
ネフィが魔物役になって、リーセルトがこの道を逃げ切るシチュエーションだ、もちろん線はそのまま。
リーセルトが全速力一歩手前の速さで駆け出すと同時に横から土塊がリーセルトの次に踏む足辺りに正確に飛んでくる、リーセルトはその場で踏ん張り姿勢を低く飛び躱すと頭上に土塊が通り過ぎる、着地と同時にバネが伸びたように最高速に!すると絶妙な速さで迫るネフィがさっきまでいた場所に引っ掻く真似をしている
一定の場所まで逃げ切れ、その場所のちょっと手前で「ここは足場悪し!」と叫んで2歩進んだ所で転ぶ、その隙に後ろから迫るネフィが土塊を放つ、それを立ち上がりながら手を後ろに向け盾で防いで一気に走り抜ける、ヤレヤレとガッカリしてネフィは来た道を戻って実演は終わったのであった。
『「どーだった♪」』
「凄まじいな…、よく走れる、一歩間違ったら死ぬぞ」
「どこから襲撃があるかわからない!どこで不測の事態が起きるかわからない!怪我で済むならいいじゃない!
師匠は色んな設定を組み込んでたからね…、初めからこれよりは優しいとはいえ怪我ばかりしてたよ」
メルヘは息をのんでリーセルトが大変な努力してきて今があるのだと知って、付いていけるよう頑張ろうと心に誓うのだった。
・・・。
次の日、なんと募集に動きがあった!
今日はメルヘはとある諸事情で宿屋のお部屋にいるので2人で行動していた
ギルドの募集板を見て2枚綴りになっていたので確認すると「本日のお昼にあなた様方の泊まっている宿にてお会いしましょう☆」と書かれていた
「ずいぶんとこっちのことを知っている人だね?」
『そーだね? リーセ、だいじょーぶ?』
「なんか待っていないと!って思えるよ」
「『誰だろーね?』」
なんか素敵な出会いの予感を感じてワクワクしながら宿屋に戻りメルヘに紙を見せた
「怪しい!…痛っ…
見られていたって人かもしれないな」
「揉んであげようか?」
「筋肉痛は揉んでも治らないから止めてくれ…」
冗談はさておきリーセルトの感じたことを話すと信じてくれる
「メルヘはどうする?」
「・・・一緒に行く」
・・・。
約束の時間前、宿屋の前に希望者を待とうと外に出ると待ってましたとばかりに目の前に空より舞い降りた
「はーはっは!わたし参上☆」
金髪でとても可愛い幼子が目の前でセリフを言いながらウィンクしてポーズを決めた、フリフリの服を着ていて似合っている
リーセルトとネフィは拍手して迎えたのに対してメルヘは軽く口を開けて何なのか考えていた
「どうだった?どうだった?可愛かった?」
「はい♪とても可愛かったしイタかったです!」
『ネリル、久しぶり♪』
「イタかったとはなんだ!?」
「周りを見て下さい?」
こんな場所でやれば当然注目される、それに応えるように大きく手を振った
「恥ずかしいよ、隠れます
メルヘ、部屋に行くよ」
姿を消すと周りがざわめくがみんなで部屋に戻るのだった。
「このとっても可愛い女の子は昨日お話ししたネリル・師匠です、、、22歳なんです!」
「年は言わないでぇぇ!」
紹介で年をばらされて泣きながらリーセルトに縋る少女は少しだけ背のある10歳くらいの子にしか見えない
『かわいいお姫さま♪』
「ネフィ様も相変わらずわたしには敵わないが可愛いぞ」
「本当に敬っているかわからないね」
全く入れないがどういう人かは分かったメルヘ、でもなかなか入れないで困っていたらネリルがにぱっと笑い「キミは?」と振ってくれたので自己紹介をした
「まぁ、知っているけど、ね☆」
「・・・」
静かにお茶で一息つくと本題に入る
「師匠が仲間に入るの?」
「もう師匠じゃないよ、ネリーって呼んで☆」
『ネフィもフィーって呼んで♪』
「そうだね、ネフィ様☆」
『ネリーやだー!』
呼んであげるんだと思いながらネフィを受け止めて続きを促した。 ネリルはリーセルトたちがこの街に着くちょっと前の所で追いついたようでずっと観察していたらしい、ギルドで解除士を募集した時に派手に登場と思ったが先客がいたのでタイミングを逃して様子を見てたということだった
「まさか気付かれるなんて、だから行動したんだよ☆ いじらしくて可愛いでしょ?」
「し・・ネリーは可愛いよ、お姉ちゃん♪」
「い、妹でお願いします!」
『ネリーちゃん?』
「それでお願いします!
メーくんもね?」
「メーくん…、わかりました、ネリー・・ちゃん」
「『メーくん』」
「え?」
みんなメルヘのことをメーくんと呼ぶこととなりました。
・・・。
結局、解除士で無い人が仲間になってしまったがネリルはそれも熟しているので問題なかった
「メーくんはこれで大丈夫?」
メルヘが頷くと仲間が決まったと申請しに行くことにする。・・と、それは今は出来なかった、・・が、明日には出来る
「まずは登録するよ☆」
そう、ネリルはたまに妹に会いにお城に遊びに来ていた放浪人である。 今回のリーセルトの行動を知っていたのは妹からの情報でありお願いであったからである。
ネフィは宿屋に残り2人でギルドに行って登録し適当に依頼を受ける
「リー姉は突然いなくて気が付いたの遅れたぞ、ずっと(お城の)近くにいたのに(出たのを)気付かなかった」
「リー姉かぁ、父様・・じゃない、国王様に罰を言い渡されてすぐに逃げ出しましたからね
可愛い♪ネリーちゃん」
「そーだろ♪」
まったり話しているが戦闘中である、最低ランクの依頼なんて文字通り目を瞑っても一瞬で達成出来る。可愛い=万能言葉である
「うん、ネセリー《親友》大丈夫かな?」
「強い妹だからな」
これで条件を満たしたのだった。