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異世界転生ですって?馬鹿馬鹿しいですわ!  作者: 細蟹かなめ
ヴォルフガング王家はどーろどろ?編
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28.王妃教育スタート!



「――ようこそ、アリア・クイン嬢。あなたには、今日からわたくしの下で、王妃教育を受けてもらいます」



「本日よりお世話になります、クァルテット王太子殿下が婚約者、アリア・クイン・オブ=ナイトにございます。せいいっぱい努めさせていただきますので、ご指導よろしくお願いいたします」


 マナー教師仕込みの礼を披露しながら、わたくし内心、ぽかーんです。

 この方はどなた?

 わたくしの疑問を読んだのでもないでしょうが、お父様がご紹介くださいます。


「アリア。くれぐれも、失礼のないようにな。こちらは、側室第一位、セレナータ・ノットゥルナ妃殿下だ」


 ……話が違いますわ!


 今日から王妃教育スタート!という訳で、王宮に参上したのですけれど。

 これに先立って行われた面談にて、わたくしの家庭教師は、三名とも合格をいただいたそうです。

 ええ。王妃教育と言っても、一から十まで仕込まれる訳ではありませんの。我が家での教育の、補完的なものになりますわ。

 他国の姫君の場合、我が国でのマナーが主となるのですけれど。

 わたくし、この国のマナーで生活しております。教師の水準も、充分と認められました。

 なので、貴族令嬢には必須でなく、うちの教師の範疇外の分野……政治面の勉強に加え、他国語、他国のマナーなど、外交に必要な知識を叩き込まれるそうで。

 それは、王宮お抱えの教師陣に任される事となっております。

 無論、王宮でのしきたりや、公務について等も教わる必要があるのですけれど……そちらは、王太子妃として、王家に入ってからでよろしいようです。

 ですから当面、正妃殿下にご挨拶したら、普通に王宮の教師の授業を受けるだけだそうで。

 正直、我が家で家庭教師を増やせば済む話では?と思いましたが。

 わざわざ王宮に通い、正妃殿下にお目通り願うのは、おかしな主義思想を吹き込まれていないかの確認と、何より、“正妃殿下から訓戒を受けている”という形式が必要な為らしいのです。

 だからこそ、こうして、教師の元に赴く前に、正妃殿下にご挨拶に来たというのに……。


 側室って、どういう事ですの!?

 バックレ!?

 正妃殿下、バックレでして!?

 確かにこの前お会いした時、やる気ゼロでしたけれども!!


 できるならお父様を問い質したいところですが、相手は、側室とはいえ王妃は王妃。「正妃殿下はいかがされました?」とか尋ねるだけでも無礼でしょう。

 そもそも、お父様が何もお訊きになりせんものね。


 黙ってきちりと臣下の礼を取っておりますと、扇子の陰で、ふっと笑う気配を感じました。


「……なるほど。不測の事態への対応はまあまあですね」


 はい?


「公爵、ご苦労でした。後は、わたくしが」

「はい。失礼いたします」


 お父様がきびきびと退室すると、楽にして座るよう、促されまして。

 かっちりめのソファに掛けて、改めてご対面!ですわ。


「驚かせましたね。正妃殿下は、近頃体調が優れない為、わたくしが代わって、主たる公務を引き受けています。此度の事も、王命を受けての事です。安心なさい」

「はい……」


 あの。わたくしそれより、妃殿下のお顔に見覚えあり過ぎて、動揺しまくりなのですが。

 いえ、扇子で口元隠されている時から、なんとなくそんな気はしていましたのよ?

 でも、こうしてあからさまになりますと……。


 あなたも見覚えありますわよね?

 ――そうよ。“星花”のスチルで!!


 大分お年は召しているけれど、この御方。チャラ男の婚約者な、王太子の姉姫にそっくりですわ!

 まさかの異母姉弟!?姉姫って側室腹!!?


 ――え?そう言えばこっちも“王妃”としてスチルに出てた?

 何ですって。作画ミスかと思った?でも、『実は側室がいる説』あったわそう言えば??

 ちょっと!!情報が遅いですわよ!!


 大人しい体裁で妃殿下の訓戒を聞き流しつつ、庶民女の胸倉を掴んで揺さぶりまくる妄想に耽っていると。

 不意に、外から騒ぎが伝わってきました。

 重厚な扉に阻まれてはおりますが、すぐ向こうで、何やら争っている様子です。

 妃殿下もお言葉を切って、眉を上げられました。


「――何事ですか」


 すぐに中に立つ衛兵が扉を細く開け、外を窺いますが、外に立つ方が、「それが……」と言い淀むのが聞こえたと思う間もなく。


「どけ!!」


 ……押し入ってきたのは、王太子でした。


 ま・た・か!!!


 今度はなんですのぉ~!!


 頭を抱えるのを、必死で堪えるわたくしを余所に、ずかずかと踏み込んできた王太子は、何故か、わたくしを妃殿下から庇うかの如く、背中に隠します。


 ???


「貴様、何のつもりだ!!でしゃばるのもいい加減にしろ!!」

「……これは王太子殿下、ご機嫌うるわしゅう。して、それは一体、何のお話でございましょう?」


 意味不明ですが怒り心頭の王太子に対して、妃殿下は、貫禄の冷ややか儀礼です。


「とぼけるな!!!これはわたしの妃だ!王妃教育は、母上に受ける!側室などに用はない!!」


 ――あら、かっち~ん☆

 側室候補のわたくしの前で、“側室()()” ですってぇ??

 しかも、“これ”とかおっしゃいましたわね。わたくしを、“これ”って。


 ……うふふ。許しませんわぁ。


 静かに燃えるわたくしですが、侮辱を受けた妃殿下は、氷点下のお声です。


「――王太子殿下?此度の采配は、国王陛下の命にございます。わたくしにおっしゃる事ではございませんね」


 きゃ~っ☆かっこいいですわぁ!

 妃殿下、バッサリです!!


 わたくしが心中快哉を叫んでいると、また次のお客様です。


「妃殿下、第一王女殿下がおいでです」


「失礼いたします」


 誰かさんと違って、きっちり礼を尽くして入っていらしたのは、あの姉姫です。

 今は、十六?十七?

 とにかく、学園の二年生のはずですが、今日はお休みですの?


「――クァルテット、戻りましょう。わたくしの母を困らせないでください」


 ……あらぁ。

 休日に弟のお守りに駆り出されるとか、お気の毒ですわ。


「さわるな!」

「聞いたのでしょう?母が、陛下の御命令に背けると思いますか?あなたがここにいても、何にもなりません」

「うるさい!!わたしが父上に言う!!アリア・クインはわたしの正妃だ!だから、母上の教育を受けるんだ!!」

「ならば、陛下の許しを受けてから来なさい。それから――あなたの母君の承諾も」


 ……何ですの、これ?


 余所でやってくださらないかしら。わたくし、どうしたらいいの?

 ――え?王太子のキャラが違う?

 そう言えば、正義感あふれて、男爵令嬢なヒロインにも手を差し伸べる、身分を笠に着るのとか嫌う方でしたっけ?

 それが、側室腹の姉と壮絶に不仲で、側室を見下す発言繰り返して……??


 まあでも、ゲームでは、側室と異母兄弟の存在、全部ない事にしている訳ですし?

 やっぱり、王族の兄弟って、潜在的に敵対関係なのですわねぇ。


 などとぼんやりしていましたら。


「おい、行くぞ!」


 ……逃げそびれました。


 独り寂しく臣下の礼を取ったままのわたくしを、放置していた癖に。急に腕を掴んできた王太子に、思わず顔を上げてしまいます。


「よしなさい、クァルテット!」

「うるさい!!」


 そこには、“星花”で見た美しいかんばせを強張らせた姉姫殿下と、見た事もないくらい、真っ赤になって怒り狂っている王太子。

 ……何、このカオス。


「いい加減になさい!!あの“姫君”が、“貴族風情”の教育など引き受けるものですか!」

「クインテット!!」


 ついに爆発した姉姫に、妃殿下が、鋭い叱責の声を上げられて――。


 痛い痛い痛い!!

 ちょっと王太子ぃ!!?


 そのままだった腕を握り締められ、振り返ったわたくし。

 俯いて唇を噛んだ王太子が、もう片方の手を上げるのを見てしまいました。

 ……ちょっと、嘘でしょう!?



「きゃあっ!」



 なんという事でしょう。

 発生した突風に押されて、姉姫がよろめきます。


 この、ロクデナシ王太子!風魔法を使って姉姫を突き飛ばしましたわ!?


 そして、部屋にいた全員の意識がそちらに向いた、その隙をついて逃げ出したのです。


 ……わたくしの腕を掴んだまま。


 ええ。当然ながら引き摺られて、一緒に走るしかありません。

 わたくし何もしていないんですけど!?



 ――わたくしを巻き込むんじゃありませんわぁあああああああああ!!!

王太子、大暴走。

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