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あなたもドクターペッパーをどうぞ

作者: 隴前 糖愉

「ああ、うめぇ、うめぇ」


俺はドクターペッパーを何本も飲んでいく。

 なんて幸せなんだろうか。

ドクターペッパーが無料だなんて嬉しすぎる。


こいつやばい人という視線を浴びても飲み続ける。

だって無料なんだから。


 学校を休み、公園の自動販売機が近くにあるベンチで飲む。

 最近になってからこの世界に異変がおき、強さがスコアで表せるようになったらしい。

 政府はなにを思ったのかスコアがとても酷い人のためドクターペッパーを無償にしたのだ。

別にスコアがとても悪くなくても飲んではいけないということではないのだ。

だから元々俺はドクターペッパーが好きなのだから次々とペットボトルの蓋を開け飲んでいく。

 するととある声が聞こえてきた。


「なにしてるんですか?!」


 その声の人物を見てみると女子で制服を着ており、自分と同じ高校であることがわかった。

美少女に入るぐらい綺麗だ。

 でもあの声は俺への物ではないと思い、ドクターペッパーを飲んでいく。


「あなたですよ!あなた!」


 どうやら俺だったようだ。

怒っている様子で近づいてくる。


「怒ってるんですか?」


 俺は疑問だったため聞いてみることにした。

その間にもペットボトルの蓋を開けて口へ持っていく。


「ああ!うまい!うまい!」


 と言う。

するとそれを聞いたのか顔をプルプルとさせ言ってくる。


「当たり前ですよ!だってノースコアと同じ飲み物を飲むと学校の評価が下がるじゃないですか!」


 ノースコア、スコアがひどく悪い人につけられる呼び名。でもまぁ、ノースコアの方が苦労するから少しかわいそうな気もするけどな。


「じゃあ、制服を着てない状態だったらいいんでね?」


すぐに反論する。

そもそも俺が制服着て飲んでいるのは仕方ないことだ。


「まぁ…そうですけど…」


 そう小声で言うものだから鈍感ぽくしてみるか。


「なんて?」


「そうですよ!」


 よし、なら帰って着替えてまた来るか。

俺はベンチを立ち、帰路の方向へ向くと、


「なにしてるんですか?!」


「え?」


 急に呼び止められる。

なにかしたか?

心当たりがない。


「なんで帰ろうとしてるんですか?早く学校に来てください!私はわざわざこんな授業中にあなたのところに来てるんですよ!」


「そうか、担任のことだ、そういうことをしてくるよな、しゃあない、行くか」


 俺は自動販売機からドクターペッパーを数本買い、カバンの中に入れ、学校に向かうことにした。


「で、あんたの名前は?」


 そういえば聞いていなかったな。


「私は篠辺麗美しのべれみです、あなたは?」


「俺は伯方鑑干はかたかんひ、なんてちょっと珍しい名前だ」


 そうして俺は遅刻?して学校に向かい、授業を受けることとなった。

なんで公園にいたのは簡単で今日は体育があったからだ。

遅刻したおかげしなかったけど。


 学校の授業を受けるとあっと言う間に日が暮れていた。

太陽のせいでオレンジ色に見える視界の中で屋上を目指すことにした。

屋上は学校内でドクターペッパーを飲める唯一の場所だから。


「あれ?」


屋上の戸が開いてる?

普段なら俺しか来ないのだが、それかもしくは辛くなった人が来るぐらいなのに。


それでも屋上に出ると見知った人物がフェンスの間から見下ろしていた。


「篠辺?」


 俺は篠辺の方へと近づく、すると篠辺はこっちの方へと向く。

ひどい顔だ。

朝見た時よりも悪化している。


「ドクターペッパーでも飲むか?」


俺はカバンを屋上の戸の近くに置き、ドクターペッパーを取り出す。


「ほしい」


「あいよ」


俺はカバンから篠辺の分も取り出して手渡しをする。

ドクターペッパーを投げて渡しては蓋を開ける時液体が出てしまう。


「ありがとう」


 篠辺もペットボトルの蓋を開け、グッと四分の一ほど一気に飲む。

一方俺はちびちびと飲んでいく。


篠辺が半分ほど飲むと俺は聞いてみることにした。


「その容姿のせいでいじめられているのだろう?」


 篠辺はビックリとさせ、飲むとやめ、蓋を閉める。

そもそもなぜ授業中に俺のとこに来たのか?なぜ室長とかではないか?つまりは篠辺にやらせたのだ。


「どうして…それを…」


「いやだって俺、能力持ってるし」


「能力者だったの?!」


「ああ」


 この世界にはスコア以外にも何千万人に一人に能力が与えられた。

俺もその内一人なのだ。


篠辺はなにか納得したような顔をしてもう一度フェンスの方へと向く。


「伯方にはわからないけど私には深刻なのよ、だって…だって…」


 篠辺はフェンスに力を入れているようで変形している。

でも少しだけ否定するか。


「俺だってわかるさ、なんども死にたいと思ったことか」


 篠辺は少し意外そうな顔をしてこっちにまた向きを変える。


「だから俺はどうにかしようと考えた時、なにかに依存することにした、だから俺ドクターペッパーばかり飲んでいるんだ、だからさぁ、あんたも依存するものを探しな、それまで近くにいといてやるよ、死なねぇように監視しといてやる」


 これはあくまで俺の勝手、だから篠辺がのる必要はない。でもこれしか言うことがないんだ。


「フフ、ありがとう、それなら私は今すぐでも依存さるものを探さないといけないから着いて来てくれる?」


「もちろん、だがその前にドクターペッパーを飲み干してからにしようぜ」


「それもそうね」


篠辺は少し苦笑いをした。

なら俺も苦笑いをした。


ドクターペッパーみたいに好き嫌いが分かれる飲み物ぽく、好きに時に嫌いになって篠辺についていくしかな。

俺は内心笑顔だった。


















それから年が経っていた。


「麗美、ここ覚えているか?」


「ええ、もちろん、私たちにとって重要だから覚えているに決まっているでしょ」


「確かにな」


 俺たちは高校の時の屋上に来ていた。

二人手を繋ぎながら。

あれから麗美のいじめや俺の能力のことや色々と忙しかったな。

 でもこうしていられるのはドクターペッパーのおかげだからな。


「これからも依存させてよね、鑑干」


「俺からも依存させてくれ、でも俺はすでに一つに依存しているな」


「フフ、そうね、ドクターペッパーに依存しているのは今でも変わらないものね、でも」


 麗美を俺の顔をしっかり見て、


「ドクターペッパー以上に依存する存在になるから」


「ああ」


 まぁ、もうすでにドクターペッパー以上に依存しているけど。


それには俺がドクターペッパーを飲んでいないことに気づいてほしいけど。


そうして夜の学校を背景にしたお互い顔を近づけた。




あなたもドクターペッパーをどうぞ。








 



あなたにドクターペッパーを。

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